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338話:思惑


 みんなと合流した後。俺たちは酒場の奥のテーブル席を確保して貰って、食事を始める。


 俺とジェシカに、ミリア。エリス、ソフィア、ノエルの6人の様子が、周りの狩人(ハンター)たちは気になるみたいだけど。俺たちは気にしないで、いつものように(・・・・・・)食事をする。


「アリウス。このお肉、美味しいわよ。はい……あーん」


「このスープもなかなかだよね。はい、アリウス君」


「アリウス、私のも食べてよ。ほら……」


 こんな風に、みんなが俺に食べさせる傍らで。


「アリウスさんは、このギルモア大陸で魔物狩りをしているんだろう。魔物狩りって面白いのか?」


「ああ。俺も最近まで、ずっとダンジョンを攻略していたからな。荒野で巨大な魔物を狩るのも、如何にも冒険って感じで面白いよ」


 アランは普通に話し掛けて来る。俺たちと『白銀の翼』のメンバーたちは、一緒にメシを食べることも多いから。アランも、すっかり慣れたモノなんだろう。


「魔物肉の料理も美味しいね……あ、その料理はあたしが注文したから! あと追加で、これこれこれこれと……お酒も足りないな。ねえ、高い順にジャンジャン持って来てよ!」


 マルシアは相変わらずで。大量の料理を注文して、全部平らげている。


「ねえ、シャインも、あたしたちの仲間になったんだから。アリウス君たちのことにも慣れないとね」


「私は……その……まだ全然慣れませんよ……」


 『白銀の翼』の新メンバーのシャインがマルシアの隣で、顔を真っ赤にしながら。チラチラとこっちを見ている。


「なんか、凄いことになっているな。普段の君たちはいつもこうなのか?」


 ケイナが咥え煙草で苦笑する。


「ところで、アリウス。『殲滅の牙城』の連中のことは、このまま放置しておいて構わないのか?」


 ケイナが面白がるように笑う。


「アリウスも背後にブリリアント子爵がいると疑っているみたいだが。アリウスと関わりがある相手で、3大クランを動かせるのはブリリアントくらいだ。ブリリアントが動いたなら、これで諦めるとは思わないけど」


「アリウス。ねえ、何の話?」


 ミリアたちが来る前に、ダリルと『殲滅の牙城』の連中はいなくなったから。みんなに今日起きたことと。背後にいる可能性があるブリリアントのことを説明する。


「なるほどね。だけどアリウスは別に心配していないんでしょう? だったら何も問題ないわね」


 当然という感じのエリスに、みんなが頷く。


「君たちはアリウスを、本当に信頼しているみたいだね。確かにアリウスが強いことは、僕も良く解ったけど。この国の貴族は結構な権力を持っているから。敵に回すと、面倒なことになると思うよ。だから僕は心配しているんだ」


「ふーん……ケイナ。貴方はアリウスのことを心配しているんじゃなくて。この状況を面白がっているわよね?」


 エリスが見透かしたように笑う。


「僕が面白がっている? ああ、その通りだよ。アリウスなら何かやってくれると、僕は期待しているんだ」


 ケイナがこういう奴だってことは、解っているからな。


「ケイナ。私は貴方みたいな人が嫌いだわ」


 ミリアがケイナを睨む。他のみんなも、じっとケイナを見ると。


「貴方がアリウスを利用しようとするなら。私たちが許さないわよ」


 みんなは本気で敵意を向ける。アランとヨハンもケイナを睨む。


「なあ、みんなが俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど。俺はケイナがこう言う奴だって、解った上で付き合っているから。別に構わないよ」


 ケイナ、シンディー、ギジェットの3人とは、仲間って感じじゃなくて。こいつらが面白い奴だから、付き合ってあるんだからな。


「ケイナ。てめえの負けだな。てめえは、いつもスカした顔をして。人を転がそうとするとけどよ。相手を見て仕掛けねえと、命が幾つあっても足りねえぜ」


 シンディーがグラスの酒を飲み干して。ケイナの肩を叩く。


「ジェシカの姉御たちだって、アリウスが何者か解った上で嫁になったんだぜ。一筋縄じゃいかねえ連中ばかりだろう」


「シンディーも、ようやく解って来たみたいね。そのお酒をボトルで奢るわよ」


「ああ、ジェシカの姉御。ありがたく、飲ませて貰うぜ」


 ケイナは肩をすくめて、それ以上何も言わなかったけど。目を見ると、全然懲りていないようだな。


「という訳で。ブリリアントも『殲滅の牙城』の連中も、全部放置で構わないけど。みんなも、せっかくギルモア大陸に来たんだから。明日、みんなで一緒に魔物狩りに行かないか?」


 俺だけが冒険を楽しんでいるのも、みんなに悪いからな。



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