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321話:アーク村


 ヨハンと一緒に半日ほど魔物を狩りながら、ジャングル中を進んでいると。 俺の『索敵(サーチ)』に、人が集まっている場所の反応があった。


 距離は現在地点から5kmほど離れているけど。一定の範囲に100人単位の人が点在している。規模から言えば、集落ってところか。

 俺とヨハンは巨大な魔物たちを殲滅しながら、集落に向かう。


 そこは集落と言っても、10m以上の高さがある木の塀で囲まれていて。ちょっとした砦って感じだ。

 巨大な魔物が徘徊する場所だからな。防備を固めるのは当然だろう。


 木の塀は厚みもあって。塀の上に見張りが2人いる。


 『認識阻害(アンチパーセプション)』と『透明化(インビジブル)』を発動して、潜入するのは簡単だけど。完全に敵対行為になるから、俺たちは普通に近づいていく。


「おい、そこで止まれ。アーク村に何の用だ?」


 見張りが弓を構える。弓の素材は木でも金属でもない。魔物の素材から造った弓だろう。鎧も革鎧だけど、見たことのない革でできている。


「俺たちは狩りをしている途中でね。できれば、村に入れて欲しいんだけど」


「お前たちはどこから来た?」


「他の大陸から、海を越えて渡って来たんだ」


 適当なことを言っても、この辺りの人間じゃないことはバレるからな。今回は『転移魔法(テレポート)』を使ったけど。一度、海を越えたことは嘘じゃない


「他の大陸からだと? 何を適当なことを!」


「いや。この辺り住んでる奴の格好じゃないぞ。もしかしたら……」


 見張りの1人が残って。もう1人が人を呼びに行ったらしく。10分ほど待っていると、門が開いた。

 出て来たのは見張りとは違う30代半ばの男。身長は180cmくらいで。良く日に焼けた身体は、鋼のように鍛え上げられている。


「おまえの言うことを信用した訳じゃないが。魔物が徘徊する場所で、村に入れることを拒むのは人の道に外れる行為だからな」


「そう言って貰えると助かるよ。俺はアリウス。こいつはヨハン。2人とも冒険者だ」


「俺はウルガ・バークライト。アーク村の狩人(ハンター)長だ」


 狩人って言っているけど。『鑑定(アプレイズ)』したから解るけど、ウルガはS級冒険者クラスのレベルだ。

 見張りの2人もA級冒険者クラスだったし。巨大な魔物がいる場所に住んでいるんだから。強くならないと生き残れないんだろう。


 ウルガに案内されて、村の中を歩く。


「泊まる場所と食料は提供できるが。おまえたちは金を持っているのか?」


 俺たちが持っている金は、交流のないギルモア大陸では通用しないだろう。(きん)としての価値はあると思うけど。


(かね)の代わりに、魔物の素材でも構わないか?」


 俺は『収納庫(ストレージ)』から最初に倒したカメレオンの死体を取り出す。


「『見えない殺戮者(インビジブルマーダー)』だと……おまえたち2人で仕留めたのか?」


 ウルガが訝しそうな顔をする。『見えない殺戮者』とか、物騒な名前だけど。巨大カメレオンは、そう呼ばれているのか。


「いいえ。仕留めたのはアリウスさん1人ですよ」


 ここまで黙っていたヨハンが口を挟む。こいつは余計なことを言いそうだから、黙っていて貰ったんだよ。


「私が仕留めたのはこいつですよ」


 ヨハンが『収納庫(ストレージ)』から巨大な猪の死体を取り出すと。ウルガが唖然とする。


「今度は食らい尽くす(ヒュージバキューム)巨猪(イーター)だと……」


 また大袈裟な名前が出て来たな。突然出現した2体の巨大な魔物の死体に、他の奴らも集まって来る。


「強い奴は歓迎するぞ。改めて。俺たちのアーク村に、ようこそ!」


 ウルガが厳つい笑顔で右手を差し出す。

 とりあえず。ギルモア大陸の奴らとのファーストコンタクトは、成功したようだな。


 狩人(ハンター)長のウルガの言葉通りに。俺たちはアーク村で歓迎された。


 俺たちのために宴を開いてくれるらしく。流石に断る訳にもいかないから。エリスたちみんなには『伝言(メッセージ)』で少し遅くなると伝える。


 アーク村では魔物の肉を普通に食べるらしく。特にヨハンが仕留めた巨大猪の肉は喜ばれた。

 酒は村で自作しているらしいけど。街に行って買うこともあるらしい。


「アリウスとヨハンは本当に本当に別の大陸から来たのか? 確かに、この辺りのことについて詳しくないようだが。てっきり『聖域(サンクチュアリ)』から来たかと思っていたが」


 『聖域(サンクチュアリ)』とは、ギルモア大陸で唯一魔物が生息していない場所のことで。巨大な結界に守られていて、ギルモア大陸の農作物は、全てそこで作られているらしい。


※ ※ ※ ※


 翌日。俺とヨハンは、ウルガたちアーク村の狩人(ハンター)の狩りに同行することになった。


「おい、バルト班。先行し過ぎだ! エリン班は逆に遅れているぞ!」


 アーク村の狩人(ハンター)たちは、レイド規模の数十人で獲物を狩る。狩人は大半がA級冒険者クラス以下だけど。この人数なら500レベルを超えるギルモア大陸の巨大な魔物を、狩ることができるだろう。


 まあ、500レベル超えと言っても。ギルモア大陸の魔物は巨体のせいか、そこまで動きが素早くないってのもあるんだろうけど。


  狩人の武器は剣に槍に弓と、それぞれバラバラだけど。骨でできていて、鎧は革鎧。全部魔物の素材から造ったモノらしい。

 連携の仕方も悪くない。ターゲットを取る囮役が、魔物の注意を引きつけているうちに。他の奴らが一斉に攻撃を仕掛ける。


「なるほど、この人数で魔物を仕留めているなら。一人で魔物を倒したことに、驚かれても仕方ないですね」


 昨日。俺とヨハンが、それぞれ自分が倒した魔物を宿代わりに渡したら驚かれたけど。アーク村には1人で巨大な魔物を倒せる奴はいないらしい。


 ウルガに訊いた話だと。ギルモア大陸の狩りは、どこでも大体こんな感じで。一部の特級と呼ばれる狩人以外は、一人で巨大な魔物に挑む奴はいないらしい。


「だがな、狩人を侮るなよ。特級狩人の実力は、別格だからな」


 ウルガは自分のことのように胸を張っていた。特級狩人のことを尊敬しているんだな。

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