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36話:事後処理


 結論から言えば、俺はエリクというよりも諜報部の実力を侮っていた。

 6人の掃除人(スイーパー)はアッサリ口を割って、エリクたちを暗殺しようとした反国王派の貴族たちは拘束された。


 諜報部の連中は掃除人を拷問した訳じゃない。『魅了(チャーム)』『命令(ギアス)』『服従(サブミッション)』など精神支配系魔法のオンパレードで自白させた。


 精神支配系の魔法は俺も一応使えるけど、ほとんど使ったことがないから使い物になるレベルじゃない。だけど諜報部の連中は完璧に使いこなして、掃除人と貴族たちに自白させた。


 魔法は実際に使ってみないことにはレベルが上がらないからな。諜報部の連中は普段から使っているってことだ。


 まあ、犯罪者に対して精神支配系魔法を使うことはロナウディア王国では合法だからな。魔法で喋らせた情報も証拠として有効だ。

 だから掃除人の自白を証拠として貴族を捉えて、奴らにも同じ魔法を行使することができた。


 もっとも反国王派の貴族の中にも用心深い奴がいて、一番の実力者は蜥蜴の尻尾切りで生き延びたけどな。

 誰が本当の黒幕なのかは解っているけど、証拠がないから捕らえることができなかったんだよ。


 それと1つ疑問が残っている。何故このタイミングで仕掛けて来たかってことだ。


 最初のダンジョン攻略の授業は、普通に考えれば学院側も慎重になる筈だから、確実に暗殺したいなら避けるべきだろう。暗殺対象はエリクたち将来の王国を担う人材だからな。そこまで焦って暗殺する理由もない。


 それでも奴らが今回暗殺計画を実行したってことは、他に何か急ぐ理由があったか、警戒されても成功すると踏んでいたからだろう。

 だけど奴らの動きは俺もダリウスもエリクも掴んでいた訳で、結果的には危うげなく阻止することができた。


 ここからは完全に俺の憶測だけど、例えばこっちの警備体制に関する情報が漏れていたとしたら。それも全部じゃなくて姿を隠していた諜報部の連中と俺以外について。


 もしそうだったら、奴らはこっちを上回る戦力を用意して、警備の隙を突けると思ったかも知れない。つまり奴らは初めから踊らされていたってことだ。


 もし俺の憶測が正しかったとしたら、誰が奴らを躍らせたのかという話だけど。ダリウスの性格を考えれば、エリクたちを餌にして危険に晒すような真似はしないだろう。


 諜報部が勝手に動いた可能性もゼロじゃないけど、それを見逃すほどダリウスは間抜けじゃない。

 つまり可能性が高いのはエリクだけど、結局のところ俺の憶測に過ぎないからな。


 俺に解っているのは、エリクには独自の人脈と情報網があるってことだな。

 ダリウスはエリクに暗殺計画に関する必要な情報は伝えたけど、全ての情報を伝えていた訳じゃない。


 だけどエリクは完全に状況を把握していたし、教師として送り込んだ護衛もエリク自身の手勢だ。国王が手を貸した訳じゃないこともダリウスが確認している。


 今回の件がエリクの策略だったとしても、エリクなら策に溺れるような馬鹿なことはしないだろう。

 それにダリウスと諜報部が目を光らせているから、大抵のことなら対処できるしな。


 まあ、エリクの話はこれくらいにして。

 話は変わるけど、俺はこれまで学院の授業は基本全部出席している。

 まあ、座学はほとんど内職しているけどな。それでも授業自体をサボったことはない。


 だけど最難関(トップクラス)ダンジョンに挑むようになって、一番のネックは毎日授業に出ることなんだよ。纏まった時間がないと最難関ダンジョンは攻略できないからな。


 だから卒業のための単位は確実に確保するという条件で、出席率を減らしたいとダリウスに交渉したんだ。


 別に学院の授業をサボることはめずらしいことじゃない。王族には王位を継ぐ前から公務があるし、貴族の子供も家督を継ぐような奴は何かと家に関係した仕事があるからだ。


 だから学院もそこまで出席を重視していない。大抵の授業は試験の成績さえ良ければ単位が取れる。学院の試験なんて俺には余裕だからな。


 そんなことはダリウスも当然解っている訳で、俺が授業をサボりたいと言い出すことは予想していらしい。

 だから答えも当然用意していて、出席率を減らす代わりに、定期的に社交界に顔を出せと言われた。


 俺は授業が終わると毎日ダンジョン直行で、週末もダンジョンに行っているからな。学院に入学してからも社交界には一切顔を出していない。


 貴族たちの情報なら収集しているけど、ダリウスとしては学院に通っているうちに貴族社会の経験を積ませたいらしい。まあ、知識と経験は違うことは理解してるよ。


 正直に言えば面倒臭いけど、本格的に最難関ダンジョンに挑む時間を確保できる方が俺にとっては重要だからな。


 だから俺はダリウスの交換条件を飲むことにした。


※ ※ ※ ※


「アリウスよ、貴殿と会うのは8年ぶりか?」


「はい、陛下。ご無沙汰しておりまして申し訳ありません」


 という訳で、俺は早速王宮で行われたエリク主催の舞踏会に出席している。

 学院に通っている若い貴族ばかりを集めた筈なのに国王がいるのは、俺が社交界に復帰するならせっかくだからと、ダリウスがサプライズで連れて来たからだ。

  

 ロナウディア王国現国王のアルベルト・スタリオンは、さすがはエリクとジークの父親というところか、金髪碧眼のイケオジって感じの外見ハイスペックだ。


 それに普通なら俺の方から挨拶に行くべきとか言われそうだけど、自分からパーティー会場に現れる気さくさは、エリクとよく似ているな。


「では陛下、後は若い者たちに任せましょう」


「ああ、そうだな。エリク、邪魔をしたな。後のことはよろしく頼む」


 国王とダリウスが退室した後、俺は貴族の女子たちに囲まれる。

 授業で見たことのある顔じゃないし、見た目からして大半が上級生だろう。みんな派手なドレスを着ているから、それなりに高い爵位の貴族の娘なんだろう。


「アリウス様の噂はかねがね伺っておりますわ」


「バーン殿下に勝る剣術も、マルス様を打ち負かした魔法の技術も素晴らしいですわね」


「この度迷宮に侵入した不埒者を退ける際に、一番活躍されたのもアリウス様ですわ。アリウス様がいかに勇猛に不埒者たちと戦われたか、是非お話を聞かせてくださいませ」


 いや、俺は事件のとき、他の生徒の前で活躍なんてしてないだろう。転移魔法は使ったけど、俺が戦ったのは最下層に行ってからだ。


 まあ、噂の出所は解っている。エリクが俺の活躍を散々宣伝していたからな。エリクが裏で手を回した話が広まるよりも、生徒が活躍した話の方が都合が良いし。俺が掃除屋を仕留めたのは事実だからな。


「悪いが俺は自慢話をする趣味はないんだよ。噂話なら勝手にしてくれ」


 この話は学院で広まっているから、最近は恋愛脳の女子たちの視線がさらに鬱陶しい。こんな感じで毎回断ってるけど。


「まあ! 活躍されたのに自慢されないなんて、アリウス様は素敵ですわ」


「そうですわ。まさに殿方の鑑ですわね!」


 パーティーの雰囲気が大胆にさせるのか。邪険に扱っても女子たちは俺を解放するどころか、取り囲んだまま勝手に盛り上がっている始末だ。


「みんなアリウスのことが気になるんだよ。君も久しぶりにパーティーに来たんだから、もっと楽しめば良いじゃないかな」


 エリクの登場に、女子たちがさらに盛り上る。

 まあ、楽しむかどうかは別にして。貴族たちと上手く付き合うのも勉強のうちだからな。


「俺は話すのが苦手なんだよ。代わりに1曲踊らないか?」


 今日は舞踏会だからな。王宮が抱える楽団が会話の邪魔にならない適度な音量で曲を奏でている。最初に声を掛けて来た女子に手を差し述べると。


「ええ、喜んで!」


 頬を染める女子をリードしながら、曲に合わせて派手に踊る。

 別にダンスが初めてという訳じゃない。8歳までは一応社交界に顔を出していたからな。

 それに(アリウス)のステータスなら、ダンスくらい余裕なんだよ。


 1曲目が終わると盛大な拍手が沸き上がる。まあ、目立つのは今さらだからな。

 当然次は自分の番だと待ち構えている女子たち。俺は順番に全員の相手をした。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 15歳

レベル:????

HP:?????

MP:?????


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