番外編:武術大会 ソフィアの試合
ソフィアが武術大会に参加するバージョンです。
「エリク殿下の婚約者の貴方が、武術大会なんかに出て良いんですか? 私は相手が誰だろうとを手を抜きませんよ」
ソフィアの相手は二年生のセシル・クロミア。中立派のクロミア伯爵家の令嬢で、ポニーテールの勝気な感じの女子だ。
装備はスケイルアーマーにサーベル。 『鑑定』下から解るけど、スキル構成は物理系アタッカーで。使える魔法も支援魔法ばかりだ。
「ええ、セシル先輩。私は先輩の胸を借りるつもりですので、是非全力で戦って下さい」
ソフィアの装備は布鎧に、スモールソードとマンゴーシュ。ソフィアの戦い方は魔法主体だから、武器は身を守るために使う。
「良い心掛けですね。じゃあ、遠慮なく戦わせて貰いますよ」
試合開始と同時に、セシルが支援魔法を発動して突っ込んで来る。姿勢を低くして、魔法を撃たれて直ぐに反応できるように構えながら。
「『影の棘』!」
『影の棘』は闇属性第二界層魔法だ。地面から伸びた影がセシルを拘束しようとするけど、セシルは横に大きく跳んで躱した。セシルの反応速度と身体能力は侮れないな。
「『闇の弾丸』『闇の槍』!」
ソフィアが攻撃魔法を連発する。セシルは反応するけど、躱し切れずに『特殊結界』にダメージがポイントとして表示される。ダメージは少ないけど、闇属性魔法の追加効果でセシルの動きが鈍る。
「『影の棘』!」
そこにソフィアは再び『影の棘』で畳み掛けて、セシルを拘束した。
「チッ……『魔法切断』!」
『魔法切断』は片手剣用の中位スキルだ。その名の通りに魔法を切るスキルで、ソフィアを拘束する『影の棘』の影が断ち切られる。
「『闇の弾丸』『闇の弾丸』!」
ソフィアが再び攻撃魔法を連発するけど。
「『能力回復!』」
セシルはデバフを打ち消す魔法で身体能力を取り戻すと、ソフィアの魔法を躱して。躱し切れないモノは『魔法切断』を発動したサーベルで切り落とす。
高速で飛んでくる魔法を切るのは難しいけど、セシルの身体能力と読みが可能にした。
セシルはすでにソフィアの近くに迫っていて、このまま接近戦になればソフィアが不利なのは明白だな。
「『闇結界』!」
ソフィアは防御魔法を発動する。
「悪足掻きをしても無駄ですよ!」
セシルは。『魔法切断』で『闇結界』を断ち切る。だけど防御魔法を放つことで稼いだわずかな時間に意味があった。
「『闇の焔』!」
闇属性第三界層魔法『闇の焔』はソフィアが使える唯一の範囲攻撃魔法だ。至近距離からの範囲攻撃魔法なら外すことはない。
黒い焔がセシルに襲い掛かり、セシルのダメージポイントが蓄積される。闇属性魔法の追加効果でセシルのステータスも低下する。だけど、ここまでだった。
「『月光剣』!」
物理系アタッカーのセシルの近接戦闘能力は、ステータスが低下してもソフィアを明らかに上回る。
ソフィアのダメージポイントは瞬く間に蓄積されて、『特殊結界』が音を立てて消滅する。
「ソフィア、残念だったわね」
控え席に戻って来たソフィアをミリアが迎える。
「私は全力で戦ったから満足だわ。今の私の実力も解ったから」
ソフィアは笑みを浮かべるけど、どこかいつもと違う。
「ソフィア、無理して笑わなくて良いって言ったのはおまえだろう。悔しいときは悔しいって言えよ」
「アリウス……ええ、悔しいわよ」
ソフィアは奥歯を噛みしめる。
「だけど、これが私の実力だから。負けたことを素直に受け止めないと」
「そうだな。ソフィアが求める強さは俺とは違うと思うけど。ソフィアが強くなりたいなら、俺は協力するからな」
「アリウス、ありがとう。私ももっと頑張らないと」
ソフィアを抱き締めて慰めるとか、そういうのは友だちの俺の役目じゃないけど。ソフィアが頑張るなら、俺はできる限りのことをしたいと思う。




