表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

362/612

番外編:ミリアの想い

ヨルダン公爵との決戦前に向かう前のワンシーンです。


ヨルダン公爵との決戦前に向かう前のワンシーンです。

――――――――――――――――――――


「ねえ、ソフィア……」


「どうしたの、ミリア?」


「……ううん、何でもないわ」


 今日もソフィアは奇麗で可愛いけど、いつもとどこか違う。


 だけど私に隠そうとしているのが解るから訊かない。隠し事をされるのは寂しいけど、ソフィアが隠すのは私のためだもの。ソフィアはそう言う人だから。


 いつもと違うのはソフィアだけじゃなかった。教室で会ったジーク殿下は思い詰めた顔で、心あらずって感じ。ジーク殿下はソフィアと違って解り易いわね。ジーク殿下とソフィアの共通点を考えれば、答えは直ぐに解る。


「ねえ、ジーク殿下。エリク殿下から何を言われたんですか?」


「俺は何も……」


「私はソフィアのことが心配なんです! ソフィアもジーク殿下の心配事に絡んでいますよね?」


「それは……」


 私が問い詰めるとジーク殿下は教えてくれた。ジーク殿下が良い人なことを利用したみたいで申し訳ないけど。


 そして昼休みに、学食でアリウスに会うと。


「アリウス、ちょっと話したいことがあるの」


 アリウスと二人で中庭に向かう。学院の生徒はお弁当を中庭で食べる習慣がないから、他に人はない。


「ねえ、アリウスはエリク殿下と一緒に別荘に行くのよね? ヨルダン公爵を誘い出すために」


 これがジーク殿下から聞き出したことで、ジーク殿下とソフィアも同行する。


「ミリアが何でそれを知っているんだよ?」


 アリウスは責める感じじゃなくて、普通に疑問に思っているみたい。


「ジーク殿下から聞いたのよ。だけどジーク殿下を責めないでね。私が無理矢理聞き出したんだから」


「ああ、そういうことか」


 アリウスも納得したようね。本当は良い人のジーク殿下が私に詰め寄られたら、嘘をつけないことをアリウスも解っているみたいね。


「ねえ、アリウス。ソフィアも一緒に行くんでしょう? 私たちに言わないってことは、凄く危険なのよね。たぶん人を殺すことになるとか、そういうことでしょう?」


「ミリアの洞察力は鋭いな。大よそのことは、ミリアが考えている通りだよ」


 嘘をつくのは簡単な筈なのに、アリウスは正直に教えてくれる。


「ねえ、アリウス。こんなことを頼むのは、私の我がままだって解っているけど、私も一緒に連れて行ってくれないかな? この世界に転生して、私はみんなに出会って。みんなと一緒にいたいから、私はみんなの力になりたいの」


「ミリアが強くなりたいのは、それが理由なんだな。ミリアの気持ちは解らなくはないけど、俺としては、できればミリアを殺し合いの現場に連れて行きたくないな」


 アリウスは優しいから、そう言ってくれるけど。


「アリウスが心配してくれるのは嬉しいわ。だけど私は自分だけ安全な場所にいたいとは思わないわ」


 我がままを言って、アリウス困らせていることは解っている。だけどこれが私の正直な気持ちよ。


「解ったよ、ミリア。俺がミリアを守るから一緒に来いよ」


「え……本当に良いの?」


 自分で言った癖に、戸惑っている私に。


「ああ。ソフィアのことも俺が守るからな」


 アリウスは何でもないことのように言うけど。


「ア、アリウス……ありがとう……」


 こんなことを言われて、何も想わない(・・・・・・)筈がないじゃない。

 だけどアリウスが私を只の友だちと思っていることは解っているから、私の想い(・・・・)を伝える訳にはいかない。


「戦いが始まったら、俺の傍から離れるなよ。」


「うん。アリウス、ありがとう。頼りにしているわ」


 今は感謝の気持ちを伝えるだけ。アリウスに甘えていることは解っている。だけどアリウスなら、どうにかしてくれる。そう思ってしまう……アリウス、ごめん。私も頑張って強くなるから、今は頼らせて貰うわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ