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33話:罠


 引率の教師と一緒にダンジョンの奥に向かう。俺たちの班を担当する教師の名前はオスカー・ブライアン。

 いや、本当は学院の教師じゃなくて。エリクが用意した護衛だけどな。


 他にも各グループに割当てられた本物の教師以外の7人が、さりげなく距離を空けて俺たちの周りを固めている。完全に俺たちを餌にして、反国王派を誘っているよな。


「何だよ、またオークか! 楽勝過ぎて詰まらないぜ」


「1階層だからな。仕方がないだろう」


 バーンとジークが率先して魔物(モンスター)を倒していく。こいつらのステータスなら余裕なのも当然だな。


「だったら私にもやらせて下さい。女だから守ってやるって考えは古いですよ」


 ミリアは魔法の才能があるけど剣術は素人だ。それでも剣術の授業を真面目に受けているし自主練もしているのか、剣の構えが少しは様になってきた。


「いや、ミリア。おまえの腕じゃ危ないだろう」


「ジーク殿下、でしたら私がフォローします。ミリア、2人で一緒に戦いましょう」


「うん。ソフィア、ありがとう」


「ソフィア様は……その子と仲が良いんですね」


 ソフィアが闇属性魔法でフォローして、ミリアがオークを仕留める。

 その様子を羨ましそうに見ているのは、ジークの婚約者のサーシャだ。


「サーシャさんも一緒にどうですか? 魔物を倒すとスカっとしますよ」


「え……私も一緒に良いんですか?」


「勿論ですよ。ねえ、ソフィア」


「そうですよ。サーシャ、遠慮なんてしないで」


 ミリアはサーシャとも直ぐに仲良くなった。こいつはコミュ力高いって言うか物怖じしないからな。相手が平民という偏見を持たなければ打ち解けるのは一瞬だ。


 俺たちは2時間ほど順調にダンジョンの攻略を進めた。主役は女子3人で、ジークは悪ぶっている癖にさりげなく彼女たちをフォローするように立ち回っている。

 それに気づいたサーシャが頬を染める。こいつらだけ『恋学』しているよな。


「なあ、アリウス。さすがに暇だな。だけど相手がゴブリンやオークじゃ物足りねえし、俺と模擬戦でもやらねえか?」


「いや、バーン殿下。さすがにそれはどうかと思うよ。ダンジョン攻略の授業だから、ボクたちもフォローできるように準備をしておかないと」


 雑談をしながら、ダンジョンを進んでいると。突然空中に光輝く魔法陣が出現した。

 感知発動式の召喚魔法陣か。面白い仕掛けをするじゃないか。

 出現したのは5体の翼のある銀色の悪魔シルヴァンデーモンだ。こいつは第4界層の範囲攻撃魔法を使うし、堅い鱗は防御力が高くて魔法耐性まで持っている。とても1階層で出現するレベルの魔物じゃないな。


「非常事態だ。生徒は下がってくれ!」


 エリクが用意した護衛のオスカーが即座に剣を抜いて、シルヴァンデーモンを瞬殺する。他の護衛の5人も集まって来た。まあ、こいつらは全員100レベル超えだから反応が早いのは当然だな。


「何だよ、デーモンぐらい俺だって余裕だぜ」


「いや、そう言う問題じゃないだろう。デーモンが1階層に出現するなんて、何者かが意図的に召喚したってことだ」


 バーンとジークが女子たちを庇う位置に移動する。こいつらの動きも悪くはないな。確かにバーンの実力ならシルヴァンデーモンでも互角に戦える。相手が1体ならね。

 続けざまに召喚魔法陣が発動して、20体以上のシルヴァンデーモンが出現した。


「ここは私たちに任せてくれ。ターナ、ジール、ジェリド、ガイアは殿下たちを避難させるんだ。オルガは他のグループの生徒たちを誘導しろ」


「了解。さあ、皆さん。こっちです!」


 3人が残って魔物に対処しているうちに、4人が俺たちを逃がして、もう1人が他のグループが近づかないように指示する。まあ、俺たちが狙われているのは明らかだからな。悪くない対応だけど、逃げ道に誘い込まれているな。


 護衛の1人が先頭で駆け抜けた直後に、巨大な魔法陣が出現する。纏めて嵌めるためのディレイ式トラップ。しかも今度は召喚魔法陣じゃない。


「テレポートトラップだと! 身体を張って殿下たちを守るぞ!」


 テレポートで飛ばした場所に敵が待ち構えているパターンだけど、何故かテレポートは発動しなかった。


「不発だと……どういうことだ?」


 まあ、俺が転移阻害魔法を発動したんだけどな。


「魔法陣を鑑定(・・)したから、どこに飛ばそうとしたのかは解っているよ。なあ、エリク。こっちから仕掛けるなら少し座標をズラして転移魔法(テレポート)を発動するけど?」


「アリウス。お願いするよ。せっかくのチャンスだからね」


 やっぱりエリクは確信犯だな。テレポートトラップがあることが解っていて、敢えて飛び込むつもりだったな。まあ、こっちにも100レベル超えの護衛と今も『認識阻害(アンチパーセプション)』と『透明化(インビジブル)』で隠れている諜報部の連中がいるからな。


「エリク殿下……どういうことですか?」


「ターナ、ジール、ジェリド、ガイア。君たちには最後まで付き合って貰うよ」


 エリクはそう言いながら、誰もいない筈の周囲に視線を向ける。諜報部の連中にもまだ隠れている敵の存在にも当然気づいているってことだな。


「エリク殿下もアリウスも何をゴチャゴチャ話してるのよ。私たちも当事者なんだから、きちんと説明して!」


 ミリアが俺たちを睨む。他のみんなも真剣な顔で頷く。マルスだけは目が泳いでいるけどな。


 マルスも襲撃の情報を掴んでいて、教会と繋がっている教師に護衛を依頼していた。いや、俺はマルスの動きを掴んでいた訳じゃないけど、教師の動きを見ればモロバレなんだよ。

 だけどマルスが依頼した教師たちはエリクの護衛の動きについて行けなくて、完全に空振りしていた。


「まあ、他にも敵が潜んでいるから、俺と一緒にいるのが一番安全だからな。良いか、おまえら。結界の外に絶対に出るなよ」


 デーモンを殲滅しているオスカーにも声を掛けておく。


「なあ、オスカー先生。まだ敵が5人潜伏しているのには気づいているよな。そいつらの対処はあんたたちに(・・・・・・)任せるよ」


 オスカーと諜報部の連中の反応を確認すると。俺は『絶対防壁アブソリュートシールド』を展開してから、転移魔法を発動する。

 派手な魔法の使い方だけど、魔法自体はS級冒険者でも普通に使うモノだから問題ないだろう。

 転移する先はダンジョンの最下層だ。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 15歳

レベル:????

HP:?????

MP:?????


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