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47-2話:みんな、良い奴だよな


 ソフィアたちと待ち合わせしているのは、学院の正門前だ。

 だけど学院の敷地は広いからな。寮から正門まで2km以上あるんだよ。


 シリウスとアリシアを両腕に抱えて走っていくと、ミリアとソフィアが先に来ていた。


「ちょっと、アリウス。なんで走って来るのよ? それにその子たちは……」


 ミリアは戸惑っているけど。ソフィアはシリウスとアリシアに見覚えがあるみたいだ。うちの弟と妹は、俺よりも社交界に顔を出してるからな。


「俺の弟と妹のシリウスとアリシアだよ。俺に会うために実家を抜け出して来たみたいで、寮の部屋の前にいたんだ。いきなりで悪いけど、これから遊びに行くのに、弟と妹を一緒に連れて行って構わないかな?」


 自分たちが場違いだ思ったのか。アリシアとシリウスが申し訳なさそうな顔をする。


「全然問題ないわよ。へえ……アリウスの弟と妹か。ホント、良く似てるわね」


 シリウスとアリシアは銀色の髪に氷青色(アイスブルー)で。顔立ちも俺に似ているからな。


「そうですよ。こんにちは、シリウス、アリシア。貴方たちなら大歓迎よ」


 ミリアとソフィアは、当然という感じで承諾する。2人ならそう言うと思ったけど。

 2人の反応に、シリウスとアリシアも安心したみたいだけど。ソフィアは公爵令嬢だから、ちょっと緊張した感じで。


「ソフィア様。ジルベルト侯爵の次男、シリウスです。ソフィア様とは先月クロフォード公爵が開かれた晩餐会でお会いして以来ですね」


「同じくジルベルト侯爵の長女、アリシアです。このような場所でお目に掛かれて光栄です」


 背伸びして挨拶する2人を、ソフィアは微笑ましそうに見る。


「今日、私たちは友だちとして遊びに行くのよ。だから貴方たちも、堅苦しいことは抜きで良いわ」


 ソフィアの優しい笑みに、シリウスとアリシアは子供ながらに見惚れる。ソフィアは完璧美少女だからな。


「……はい、解りました」


「……私も、そうさせて頂きます」


「うーん……まだ堅いわね」


 ここでミリアが割って入る。

 少し腰をかがめて、2人の顔を覗き込むように視線を合わせる。


「ねえ、シリウス、アリシア。私はアリウスの友だちのミリアよ。貴方たちも今から私の友だちだから、お互いもっと気楽に行くわよ」


「え……友だち?」


「そうそう。私とアリシアはもう友だちだから、気なんて遣ったらダメだからね。ほら、シリウスも!」


「はい……じゃなくて、うん?」


「それでよろしい! さあ、せっかく遊びに行くんだから、思いっきり楽しむわよ!」


「「うん、ミリアさん!」」


 ミリアはホント、相手の懐に飛び込むのが上手いよな。シリウスとアリシアが一瞬で懐いている。


「ソフィア、ミリア、ありがとう。俺が勝手に連れて来たのに、弟と妹に優しくしてくれて嬉しいよ」


「ア、アリウスにお礼を言われるようなことじゃないわ」


「そ、そうよ。私は2人と友だちになりたいって思っただけだからね」


 ソフィアとミリアの顔が赤くなる。まあ、素直に礼を言われるのは、照れるからな。


「みんな、待たせたな」


「私が着替えに手間取ってしまったんです。みんな、ごめんなさい」


 遅れて到着したジークとサーシャに、シリウスとアリシアを連れて来た事情を説明する。


「俺もアリウスの弟と妹が一緒で構わないぜ」


「そうですわ。人数が多い方が楽しいですから」


 正直に言うと、俺とジークとサーシャは知り合いという程度で。そこまで深い付き合いじゃないけど。2人は気安く応じてくれた。こいつらも良い奴だよな。


 だけど、さすがに第2王子のジークの前だと、シリウスとアリシアは緊張しているみたいだ。ジークには粗野でクールなイメージもあるし。


「シリウス、アリシア。貴方たち、好き嫌いはないの? 後でみんなで食事に行くから、苦手なものがあったら先に言ってね」


 2人の緊張を解すためか、ミリアが話し掛ける。


「僕は大丈夫。好き嫌いはないよ」


「私は……ピーマンが嫌い。あとシリウスも本当はニンジンが嫌いよ」


「アリシアは正直でよろしい! シリウスは無理しちゃ駄目だからね」


「はい……ミリアさん。嘘をついて、ごめんなさい」


「シリウスは嘘をついても頑張るつもりだったのよね? だったら褒めてあげるわ。

 ちなみにジーク殿下は、トマトが苦手なのよね。いつも難しい顔をしながら、頑張って食べてるけど」


「おい、ミリア。なんで俺の話を……まあ、事実だけどな」


 素直に認めるジークに、シリウスとアリシアが驚いている。

 俺たちにとってはいつものことだけど、普段のジークは悪ぶっているキャラだからな。


 ジークにも苦手な食べ物があると知って、親近感が沸いたんだろう。シリウスとアリシアは、もう緊張していない。

 こういうところが、如何にもミリアって感じだな。


「じゃあ、そろそろ出発しましょうか」


 ソフィアがみんなを促す。


「今日は市場を散策してから、みんなで軽く食事をして。その後、劇場に行く予定よ。シリウスとアリシアも、それで構わないかしら?」


「うん。私、凄く楽しみだわ!」


「僕も! ソフィアさ……ん、よろしくお願いします!」


「シリウス。こちらこそ、よろしくお願いするわね」


 ソフィアが優しい笑みを浮かべる。シリウスが『様』と言おうとして、言い直したことに、気づいたんだな。


 ちなみに俺は今日どこに行くのか、聞いていなかった。俺は遊び慣れていないから、みんなに任せるつもりだったんだよ。


 だけど食事の後、劇場に行くってことは、結構遅くなるな。俺はジルベルトの家侍女長マイアに、その旨を『伝言(メッセージ)』で伝える。


「シリウスもアリシアも、みんなと一緒なんだから。勝手にどこかに行くなよ」


「アリウス兄様、解っているわよ」


「そうだよ。僕たちはもう子供じゃないんだから」


 2人は文句を言うけど、まだ9歳の子供だからな。

 まあ、俺の『索敵(サーチ)』なら2人を見失うことはないけど。


「へー……アリウス、ちゃんとお兄さんしているじゃない」


「そうね。新鮮な感じがするわ」


 ミリアとソフィアが悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 いや、俺も一応長男だから。全然長男らしいことをしてないけど。


 今日はみんなのおかげで、弟と妹と一緒に遊びに行くことになったから。少しは兄らしいことをするか。


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