表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

308/612

42-2(2)話:ソフィアとミリア


 エリクのサロンで、昼飯を食べ終わると。エリクの侍女兼護衛の1人、亜麻色の髪のイーシャが紅茶を入れてくれる。

 イーシャは170cmと女子にしては高身長で、スレンダーな体型。スーツが似合いそうな真面目な感じの美人だ。


「アリウス。実はもう1つ話があるんだ。来月の最初の週末に、王家の別荘まで旅行に行くつもりなんだけど。アリウスも予定を空けておいて欲しいんだ。

 他にもジークとバーン殿下にマルス卿。あとはソフィアとサーシャ嬢にミリアさんにも声を掛けるつもりだよ」


 ダンジョン実習のときと同じメンバーだな。


「エリク。またみんなをエサにして、ヨルダン公爵を誘い出すつもりなのか? だけど今回は状況が違うし。ミリアとバーンは完全に部外者だろう」


 ダンジョン実習のときも、エリクは俺たちを同じグループにして、掃除人(スイーパー)の襲撃を誘ったけど。あのときは一緒にいた方が守りやすいとか、人質に取られないためとか。みんなの安全を守るためでもあった。

 だけど今回は、エサにするためだけに連れて行くようなモノだろう。


「アリウスが言いたいことは解るけど。最大の目的は、ヨルダン公爵を誘い出すことだけど。僕は普通にみんなと旅行も楽しもうと思っているからね。

 勿論、みんなの安全は僕が保証するし。正直に事情を話した上で、参加するかどうか、自分で決めて貰うつもりだよ」


 エリクは本気で言っている。エリクはこの機会に、ロナウディア王国の反国王派の貴族を一掃するつもりだ。そのために綿密な計画を立てて、何重にも施策を施している。

 みんなをエサにするのも、その方が成功する確率が高くなるからで。みんなが行かなくても、少し計画を修正するだけの話だ。


「キース先輩の件も含めて、色々と仕掛けているからね。僕たちが旅行に行く頃には、何れにしてもヨルダン公爵は動かざるを得ない状況(・・・・・・・・・・)になっている筈だ。

 ダンジョン実施のときに、みんなを巻き込んでしまったからね。僕はみんなにも今回の件の結末を見届ける権利があると思うんだよ」


 エリクじゃなかったら、無茶苦茶なことを言っていると思うけど。エリクならヨルダン公爵の戦力を丸裸にして、計略を全部見抜いて。みんなの安全を確保するだろう。


「そのためにもアリウスには一緒に来て欲しいんだ。君がいれば完璧だからね」


 俺が行かない可能性も考えて、エリクは計画を立てている筈だ。その上でエリクは俺を誘う。アリウスはどうしたいんだと、問い掛けるように。

 エリクは良い奴だけど、只の良い奴じゃないからな。俺がエリクの隣に立つ人間かどうか、見定めようとしているんだろう。


「解った。旅行には俺も一緒に行くよ」


 エリクは、いつもと違う(したた)かな笑みを浮かべた。


※ ※ ※ ※


 エリクが用意してくれた昼飯は全部平らげたけど。上品な料理はイマイチ食べた気がしないからな。俺はエリクと別れた後、学食に向かう。


 普通にランチの定食を頼んで、適当に空いている席に座る。まだこれくらい余裕で食べられるからな。

 相変わらず女子の熱い視線と、男子の嫉妬の視線を感じるけど。


「アリウス様、今からお昼ご飯ですか?」


「私たちとご一緒しませんか?」


 最難関ダンジョンを攻略するために、授業をサボる交換条件として。社交界に顔を出すようになった影響からか。特に最近は、話し掛けて来る女子が増えた。


「悪いな。今から食べるから、時間がないんだよ」


 ほとんどが上級生や、爵位の高い貴族の女子なのは、女子同士でけん制し合っているからだ。おかけで相手にする人数が減って助かるけど。


「最近、アリウスは本当にモテるわね」


「私たちがいれば十分とか、言っていた癖に。ちょっと思うところがあるわよ」


 他の女子たちと喋っていたソフィアとミリアがやって来る。

 一番奥の広いテーブル席には、相変わらずソフィアの派閥の貴族女子たちが座っているけど。平民の女子も普通に混じっているな。


「「「「ソフィア様!」」」」


 ソフィアが来ると、俺に話し掛ける女子たちが場所を空ける。

 ソフィアはロナウディア王国三大公爵家の1つ、ビクトリノ公爵家の令嬢だからな。ソフィアよりも爵位が高い家の女子は、今の学院(・・・・)にはいない。

 だから女子たちはソフィアに遠慮している。ソフィア自身は、そんなことはしなくて良いと言っているけど。


「他の女子たちを放っておいて良いのか?」


「あら。もう十分話したから、構わないわよ」


「そんなことを言って。アリウスは私たちが邪魔とか、思っているんじゃないの?」


 ソフィアとミリアが悪戯っぽく笑う。この2人は本当に仲が良いよな。


「いや、俺も2人と一緒にいる方が楽しいけど。今はメシを食べるのに忙しいから、そんなに喋れないからな」


「一緒にいて楽しいとか……アリウスは、またそんなことを……」


「アリウスがどういうつもりで言ったのか、解っているけど……」


 ソフィアとミリアが顔を赤くする。


 ミリアはともかく、ソフィアはエリクの婚約者だからな。俺と喋っていて、こんな顔をすると、変な噂になりそうなものだけど。

 エリクが、俺とソフィアは友だちだから気にしないと公言したから。俺とソフィアのことで、恋愛脳な噂話する奴は減ったんだよ。


 ソフィアとミリアがお喋りして、俺はメシを食べながら耳を傾ける感じだ。

 2人が話していることは他愛のないもので。授業のことや、放課後一緒に遊んでいることとか。最近はサーシャも一緒に行動することが増えたらしい。


「ホント、最近のアリウスは良く授業をサボるし。放課後になると直ぐに帰るって、エリク殿下から聞いているわよ。せっかく学院に通っているんだから、少しは友だちと遊びに行こうとか思わないの?」


「そうよね。アリウスも、たまには私たちと遊びに行かない?」


 今、俺は最難関(トップクラス)ダンジョン『太古の神々の砦』を、ソロで攻略することに集中している。授業をサボるのも、そのためで。放課後もダンジョンに直行して、寮の門限ギリギリまで攻略している。

 だから遊びに行く時間なんてないって、普段なら断るところだけど。


「じゃあ、次の水曜日の放課後。3人で遊びに行くか」


 ソフィアとミリアは、俺が断ると思っているのが見え見えだったし。次の日が休みじゃない平日の放課後なら、サボっても攻略にそこまで影響しないからな。


「え……」


「アリウス、冗談じゃないの?」


 ソフィアとミリアが驚いている。俺は意地悪く笑うと。


「なんだよ。冗談でも、俺は構わないど」


「そ、そんなことはないわ! アリウス、一緒に遊びに行くわよ」


「そうよ、アリウス。約束だからね!」


 という訳で。俺はソフィアとミリアと遊びに行くことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ