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289話:冒険者の戦い方


 次の日。シリウスとアリシアのパーティーと一緒に、ダンジョンに行くことになって。俺は午前中で世界迷宮(ワールドダンジョン)の攻略を切り上げて、高難易度(ハイクラス)ダンジョン『ギュネイの大迷宮』に向かった。


 シリウスとアリシアに『伝言(メッセージ)』でこれから行くと伝えると、直ぐに返事が帰って来た。

 『伝言』にシリウスたちの居場所が書いてあったから。『転移魔法(テレポート)』とダンジョン内の転移ポイントを併用すれば、合流するのは簡単だった。


「アリウスお兄ちゃん、本当に来てくれたのね」


「アリウス兄さん。今日は僕たちに付き合ってくれて、ありがとう」


 シリウスとアリシアは嬉しそうに俺を迎えるけど。


「アリウスさん……もう来たんですか?」


 シリウスとアリシアから返事が来てから、5分も経っていないからな。ミーシャが驚くのは仕方ないだろう。だけど『ギュネイの大迷宮』には何度も来ているし。俺の移動速度なら、階層内は一瞬で移動できるからな。


「じゃあ、早速だけど。おまえたちが戦うところを見せてくれよ。とりあえず、俺は一切手を出さないからな」


 シリウスのアリシアのパーティーが攻略しているのは55階層で、120レベル超の魔物が出現する。

 シリウスたちにとって、一応適正レベルの階層だけど。4人のレベルと4人パーティーであることを考えると、安全マージンが少し足りないんじゃないか?


 まあ、レベルと人数だけで戦力が測れる訳じゃないし。シリウスとアリシアは無茶をするような性格じゃないからな。実際に戦いぶりを見てから判断するか。


 最初に遭遇した魔物は、グレーターリッチ3体とアンデッドドラゴン2体。グレーターリッチは魔法特化型の魔物で、アンデッドドラゴンは物理攻撃と毒のブレスを放つ。


「シリウスは私とアンデッドドラゴンの相手を。アリシアとグレイスは、グレーターリッチを先に仕留めてください」


 ミーシャの指示で4人が一斉に動く。


 グレイスは無詠唱で『魔力防壁(マジックシールド)』をパーティー全員に掛けてから、第7界層魔法『爆焔槍(エクスプロードランス)』をグレーターリッチに放つ。


 シリウスとミーシャは前衛のアンデッドドラゴンの相手だ。

 シリウスは長剣(ロングソード)短剣(ショートソード)の二刀流で。短剣でアンデットドラゴンの攻撃を防ぎながら、長剣でダメージを与える。


 避けタンクのミーシャは、アンデッドドラゴンにダメージを与えることとよりも、攻撃を引き付けるように動く。


「ブレスが来ます!」


 アンデッドドラゴンがいきなり毒のブレスを放っても。ミーシャは仲間に注意を促しながら、自分がアンデッドドラゴンのターゲットになって。毒のブレスをギリギリの距離で躱す。


 そしてアリシアはスピードを活かして、シリウスとミーシャが相手にしている2体のアンデットドラゴンの脇を擦り抜けて。グレイスが『爆焔槍』でHPを削った3体のグレーターリッチに、2本のレイピアで次々と止めを刺していく。


「グレイス!」


「あと5秒、待ってくれ…………よし、良いぞ。みんな、避けろ!」


 シリウス、アリシア、ミーシャの3人が素早く後退したところに。グレイスが第10階層魔法『流星雨(メテオレイン)』を放って、アンデッドドラゴンに止めを刺す。


 結局、シリウスたちは、ほとんどノーダメージでグレーターリッチとアンデッドドラゴンを全滅させた。


「ねえ、アリウスお兄ちゃん。私たちの戦い方はどう?」


 アリシアが褒めて欲しそうな期待するような目で俺を見る。


「パーティーとして上手く連携できていてるな。ミーシャの指示は的確で、みんなの能力をきちんと把握しているようだし。4人ともお互いの動きを良く見て。今、自分が何をすべきか考えて行動している。

 褒めると慢心に繋がるからな。普段、俺はあまり人を褒めないんだけど。正直、おまえたちの動きは、俺の予想以上だよ」


「アリウス兄さん(お兄ちゃん)、ありがとう!」


 シリウスとアリシアが嬉しそうに、満面の笑みを浮かべる。


「アリウスさん、ありがとうございます。勿論、私は慢心なんかしませんので。そこは安心てください」


「褒められるのは、照れ臭いが。俺も少しはパーティーの役に立てるようになったみたいだな」


 ミーシャとグレイスも嬉しそうだ。まあ、4人ともアグレッシブに見えて、実は慎重派だし。俺も慢心するとは思っていないけど。


 それからしばらく、俺はシリウスたちが魔物と戦うところを見た。

 4人は連携が上手いだけじゃなくて、彼我の力の見極めもできていて。魔物が強いと判断したら、迷いなく速攻で引く。

 これなら安全マージンは、十分に確保できるだろう。


「今のペースを守って慎重に行動を続ければ、おまえたちのパーティーは問題ないだろう。強くなりたい気持ちは解るけど、死んだらそれまでだからな」


 この4人には蛇足だと思うけど、最後に念を押しておく。


「うん、アリウスお兄ちゃん。私もアリウス兄ちゃんみたいに強くなりたいけど、自分ができることを一歩一歩進めるわ」


「僕もアリウス兄さんのようになりたいけど。僕とアリウス兄さんが違うことは、解っているからね」


 シリウスとアリシアは俺みたいな戦闘狂じゃないし。俺の真似して、無茶をすることはないだろう。


「ねえ、アリウスお兄ちゃん。今度はお兄ちゃんが戦うところを見せてよ」


「僕もアリウス兄さんが戦うところが見たいな」


 まあ、そう言うとは思ったけどな。ミーシャとグレイスも、興味津々な顔をしている。


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