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241話:誘い


 ※フレッド視点※


 中難易度(ミドルクラス)ダンジョン『ランクスタの監獄』に。アリウス・ジルベルトは、忽然と姿を現した。


「アリウス様じゃないですか! どうして、こんなところに?」


 真っ先に反応したのはノアだ。何故か顔が赤いが。


「ノア、ゼスタ、久しぶりだな。おまえたちが新たな勇者(・・・・・)の教育係ってのは驚いたけど。アレックスの奴はどうしているんだ?」


「私たちもアレックス様も、ブリスデン聖王国の聖騎士になったんですよ。アレックス様はオースティン聖騎士公の御子息と言っても次男ですから。家督は兄君のオリオン様が継がれることになっています」


「おい、ノア……『魔王の代理人』閣下、お久しぶりです。それともジルベルト陛下と呼ぶべきですか?」


 ゼスタはアリウスを警戒している。


「ゼスタ、俺のことは呼び捨てにしろよ。まあ、強制はしないけどな。それで……そいつが(・・・・)新たな勇者(・・・・・)って奴か」


 アリウスは俺と初対面を装っている。つまりここに来たのは、他に目的があるってことか?


「アリウス陛下に誤魔化しは効かないと思いますので、諦めますが。新たな勇者の正体と居場所は、ブリスデン聖王国の国家機密です。

 アリウス陛下はどうして、彼が勇者だということと、勇者がここにいることを知っているんですか?

 それとアリウス陛下がここに来た目的を教えてください」


「少し調べれば、新たな勇者がフレッド・アーチェリーって奴なのは直ぐに解ったよ。

 こいつが聖騎士に連行されるところを、目撃した奴はいるだろう。だけどフレッドが罪人として裁かれた記録はない。

 ブリスデン聖王国は脇が甘いんじゃないか?。

 それに勇者レベルの魔力がある奴の居場所を探すなんて、俺には簡単だからな」


「そういうことですか。さすがはアリウス陛下ですね。それでアリウス陛下は、フレッド様をどうするつもりですか?」


 ゼスタの警戒心が高まる。緊張した顔で、アリウスの動きを絶対に見逃さないという感じだ。


「ゼスタ、そんなに警戒するなよ。俺がこいつをどうこうするつもりなら、おまえたちに声なんて掛けないって。

 新たな勇者については、今のところは観察対象ってところだな。ブリスデン聖王国が喧嘩を売って来ない限り、俺の方から手出しするつもりはないよ」


 ゼスタはアリウスをしばらく見据えていたが。不意に緊張を解く。


「とりあえず、安心しましたよ。俺だってアリウス陛下に殺されたくありませんから」


 いや、そんなに簡単に信用するのか? 2人はアリウスと知り合いのようだけど。


「なあ。ノア、ゼスタ。おまえたち、俺の国に来る気はないか?


「え……どういう意味ですか?」


「そのままの意味だ。俺はおまえたちのことを買っているんだよ。家族を含めて『自由の国(フリーランド)』に移住して、俺と一緒に働かないか? 勿論、相応の条件を用意する。具体的に知りたいなら、今直ぐ提示しても良いけど。

 アレックスの奴も誘うつもりだけど。あいつはオースティン聖騎士公家の人間だから、家を捨てる覚悟があるかどうかだな」


「俺たちに……ブリスデン聖王国を裏切れと言うんですか?」


「だから俺はブリスデン聖王国と喧嘩をするつもりはないって言っているだろう。

 おまえたちも貴族だから、領民のこともあるし。国を捨てる時点で裏切り行為かも知れないけどな。

 おまえたちの領民次第だけど、俺は領民ごと受け入れるつもりだし。地位と土地を捨てれば、ブリスデン聖王国も文句はないだろう」


 なんか凄いことをサラッと言っているな。領民ごと全部受け入れるって?


「アリウス様、それって私を口説いて……」


「いや、そういう意味じゃないからな。ノアだって、本当は解っているんだろう?」


「勿論、冗談ですよ。アリウス様が盛大に結婚式を挙げたことは知っていますし、今さら私が入る余地なんてないですよね。

 ですが、アリウス様は本気で私たちを誘ってくれているんですよね。真面目な話、家族に相談させて貰っても良いですか?」


「おい、ノア……いや、だがな……ブリスデン聖王国を捨てることになるんだぞ……」


 ノアだけじゃなくて、ゼスタも心を動かされているようだな。

 ブリスデン聖王国の聖騎士が、簡単に国を裏切ろうとするなんて。アリウスってホント、何者なんだ?


「おまえたちが来るなら、責任は全部俺が取るよ。なあ。ノア、ゼスタ。おまえたちには直接関係ないけど、勇者の力がどういうモノか知っているか?

 勇者のスキルは人を狂人化させて、死ぬまで戦わせる効果がある。勇者の力ってそういう(・・・・)モノなんだよ。

 俺はそんな力を使って好き勝手にやろうとする奴を、許すつもりはないからな」


 アリウスはノアでもゼスタでもなく、俺を真っ直ぐに見る。ノアとゼスタにしたら、アリウスが俺に忠告しているように見えるだろう。


 だけど、まさかそんなことが……だがアリウスが嘘をつく理由がない。俺がスキルを発動させれば、直ぐに解ることだからな。


「なあ、勇者。ここで見聞きしたことを公言しても構わないけど。俺と会ったことを言ったら、おまえも疑われることになるからな」


「アリウス様。お気遣い、ありがとうございます。ですがフレッド様も、そこまで馬鹿じゃありませんよ」


 ノアがニッコリ笑いながら、じっと俺を見る。


 今日アリウスがここに来た目的は、ノアとゼスタを簡単に裏切らせる力があると、俺に見せつけるためか。それとも2人を取り込むことで、俺に首輪をつけるためなのか。

 両方が目的という可能性もあるが。何れにしても、完全にアリウスの掌の上で踊らされた感じだな。


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