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224話:見せてやるよ


「俺の実力がアリウスさんの足許にも及ばないことは、初めから解っていたんだよ。まさか全く動きが見えないとは、思っていなかったがな。

 結局、俺が自惚れていたってことは、俺が一番解っている。アリウスさんと戦ったのは、俺だからな!」


 ヒュウガの仲間たちはイマイチ納得していなかったけど。ヒュウガにここまで言われたら、黙って従うしかなかった。


 冒険者ギルドの1階に戻って。シリウスとアリシアは、グレイスとパーティーを組むための打ち合わせを続けている。

 他のヒュウガの仲間たちは退散して、あとは俺とヒュウガが残った。


「アリウスさんが手合わせしてくれたってのに。ロギンが馬鹿なこと言って、本当に済まなかった。この通りだ」


 ヒュウガが深々と頭を下げる。


「よせよ、ヒュウガ。おまえのせいじゃないだろう。それに俺がもう少し解りやすい方法で勝てば、おまえの仲間たちも納得したかも知れないからな」


「いや、俺の実力が足りないだけだ。アリウスさんが実力の一端を見せてくれたことに、俺は感謝しているんだ。俺ももっと精進しないとな」


 ヒュウガは真剣な顔で、真っ直ぐに俺を見る。


「ヒュウガ、俺の考えを押しつけるつもりはないけど。ヒュウガが本気で強くなりたいなら。ロギンたちの面倒を見る時間を、自分を鍛えるために使った方が良いと思うし。もっと実力が近い奴らとパーティーを組んだ方が良いだろう」


「アリウスさん、確かにその通りなんだが。俺は馬鹿な奴らを放っておけないんだよ」


 ヒュウガは苦笑する。


「まあ、それがヒュウガが選んだ道なら構わないだろう。おまえはおまえのやり方で強くなれよ」


 俺はヒュウガのような奴が嫌いじゃない。こいつが良い奴だってことは、良く解ったからな。

 夜にはグレイとセレナが、冒険者ギルドに来ることになっているけど。まだ時間があるな。


「なあ、ヒュウガ。もう少し俺に付き合わないか。おまえは俺の実力が知りたいんだよな?」


「アリウスさん……その通りだけど。どういうことだよ?」


 ヒュウガが訝しそうな顔をする。


「俺の手の内を晒すつもりはないけど。さっきの手合わせだけじゃ、何も解らなかっただろう。だから俺が戦っているところを、おまえに見せようと思ってね」


 力を見せつけるような真似は好きじゃないけど。真っ向勝負で挑んで来たヒュウガに、少しくらい見せても良いだろう。


「マジかよ……アリウスさん、是非見せてれ!」


「じゃあ、少し待っていろよ」


 ジェシカに『伝言(メッセージ)』を送ると、直ぐに返事が来た。


「これからジェシカたちと合流するぞ」


「『白銀の翼』と共闘するってことか? イマイチ状況が解らないが、アリウスさんに任せるよ」


「ねえ、アリウスお兄ちゃん。私も一緒に行っても良い?」


「アリウス兄さん、僕も一緒に行きたいよ」


 アリシアとシリウスは、俺たちの話に聞き耳を立てていたんだろう。


「アリシア、シリウス、悪いな。おまえたちを連れて行く訳にいかないんだ。グレイスとパーティーの打ち合わせをしていてくれよ」


「アリウスお兄ちゃんなら、そう言うと思ったわ。残念だけど」


「僕たちが強くなったら、連れて行ってよ。アリウス兄さん、約束だからね」


 アリシアとシリウスは聞き分けが良い。本当に良くできた妹と弟だな。


「じゃあ、行って来るよ」


 俺は『転移魔法(テレポート)』を発動する。


 ヒュウガを連れて向かった先は、高難易度(ハイクラス)ダンジョン『竜の王宮』の下層部。


「アリウス、早かったわね。ヒュウガが一緒なのは聞いたけど、どういうことよ?」


 今日もジェシカたち『白銀の翼』は『竜の王宮』を攻略中で。ダンジョンの回廊で俺たちを待っていた。


 ジェシカに送った『伝言』は『ヒュウガに俺が戦うところを見せることになったから。おまえたちも見たいなら、一緒に連れて行くけど?』という内容だ。


「成り行きで、俺が真面に戦うところをヒュウガに見せることになって。ジェシカたちにも見せたことがないから、ヒュウガだけ連れて行くのは不公平だと思ったんだよ」


「アリウス君が真面に戦うところね……そんなところを見せたら、ジェシカはアリウス君に惚れ直しちゃうよね」


「マ、マルシア、余計なことは言わないよ! そ、それに私はとっくにアリウスにベタ惚れだから……今さらだわ!」


 途中で声が小さくなったけど、ジェシカは真っ赤になりながら言い切った。

 いや、ジェシカの気持ちは嬉しいけど。こんなところで宣言する必要はないだろう?

 ヒュウガがどういう反応をすれば良いか、困っているし。


「アリウスさんが真面に戦うってことは、『竜の王宮』のラスボスをソロで倒すところを見せてくれるんですか?」


 アランが食いついて来る。


「いや、ラスボスの赤竜王(レッドドラゴンロード)くらい、おまえたちもそのうち倒せるようになるだろう。ヒュウガは俺の力を知りたいみたいだからな」


 全員を包み込むように『絶対防壁アブソリュートシールド』を展開する。


「良いか、見せるだけだからな。絶対に『絶対防壁』から出るなよ」


 俺が『絶対防壁』ごと再び転移した先は――


 一切壁のない広大な空間。天井からの魔法の光に照らし出されているのに果てが見えないのは、それだけ広いからだ。


 彼方から迫って来るのは、フルプレートを纏う巨大な天使という姿の魔物(モンスター)の群れ。


 『至高の(シュープリーム)天使(エンジェル)』は『竜の王宮』のラスボス赤竜王(レッドドラゴンロード)を凌ぐ強さだ。

 それが1,000体以上、同時に襲い掛かって来る。


「アリウス、ここって……」


 『索敵(サーチ)』を使えば、相手の魔力の大きさが解るし。ジェシカたちもヒュウガも全員SS級冒険者だから、すでに気づいているようだな。


「ああ。最難関(トップクラス)ダンジョンの中だよ。まあ、最初の最難関ダンジョン『太古の神々の砦』で。しかも1階層だけどな」


「凄え……何なんだよ、あの魔物たちの巨大な魔力は……」


「アリウス君、冗談が過ぎるよ。全然勝てる気がしないんだけど」


 言葉の割にマルシアは余裕だ。アランとヒュウガは『至高の天使』の群れを、食い入るように見ている。


「アリウス、無茶はしないでよ」


 ジェシカは心配そうな顔をする。これから俺が何をするか、解っているんだろう。


「ジェシカ、今の俺なら全く問題ないからな。みんな、もう一度言うけど。絶対に『絶対防壁』から出るなよ」


 今の俺の『絶対防壁』は、『至高の天使』じゃ絶対に破壊できない。それでも念のために、多重展開しておく。

 俺は自分だけ『絶対防壁』から出ると、一気に限界まで加速した。


 『索敵』で天井から俯瞰するように、全ての魔物の位置と動きをリアルタイムで把握しながら。俺が群れの中の隙間を、超高速で駆け抜る。

 今の俺なら強引に突破できるけど。躱せる攻撃を躱さないのは、俺の主義に反するからな。


 群れの中を駆け抜けた後。通り道にいた『至高の天使』たちが、次々とエフェクトと共に消滅して、魔石だけが残る。

 ジェシカたちとヒュウガには、俺の動きが見えないからな。『至高の天使』たちが勝手に消滅しているように見えるだろう。


 『至高の天使』たちは向こうから包囲するように近づいて来るから。1,000体以上を全滅させるまでに、10分も掛からなかった。


「ヒュウガ。こんな感じだけど」


 戻って来た俺に、いきなりジェシカが抱きつく。


「アリウスが強いのは解っているけど。無事で良かったわ」


「ジェシカ、心配させて悪かったな」

 

「これが……アリウスさんの本当の実力なのか……」


 ヒュウガは唖然としながら、何故か嬉しそうに笑う。


「凄いことは凄いけど。アリウス君の実力は、こんなモノじゃないと思うよ。自分から実力をさらけ出すほど、アリウス君は甘くないからね」


 アルシアが何故か自慢げで余裕なのは、ちょっとムカつくけど。


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