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20話:悪役令嬢になんて絶対にさせない


「「「「「エリク殿下……」」」」」


 ソフィアと貴族女子たちの声が重なる。まあ、エリクはこのイベントのキーマンだからな。ゲームと展開が全然違うけど。


「エリク殿下にお詫びしなければなりません。派閥の者たちが人として恥ずべき行為をしたことは、殿下の顔にも泥を塗ることになります。私をどのように処罰して頂いても構いません」


 覚悟を決めたソフィアに迷いはない。彼女が言った処罰にはエリクとの婚約解消も含まれるだろう。

 それに対してイザベラとローラ、そして他の貴族女子たちには何の覚悟もない。まあ、こいつらのことはどうでも良いけどな。


「なあ、エリク。俺が口を挟むことじゃないけど一言だけ良いか」


 今回俺の出番はないと思っていた。余計なお世話だってことも解っている。だけどソフィアをけしかけたのは俺だからな。最悪な状況になることを防ぐ責任がある。


「「「「アリウス様……」」」」


 エリクとは別の意味で、俺の登場に貴族女子たちが慌てる。こいつらのことを食堂で掻き回したからな。だけどそんなものは完全に無視だ。


「今回の件はソフィアの知らないところで、こいつらが勝手にやったことだ。こいつらがそこの女子を中庭に連れて行くところを俺が見掛けて、ソフィアに教えたら慌てて止めに来たんだよ。事の次第は俺も全部見てた。ソフィアは何も悪くないからな」


「ああ、その通りだ。エリク殿下、ソフィア嬢に一切非がないことは俺も保証するぜ」


「「「「バーン殿下!」」」」


 3人目の攻略対象の登場に貴族女子たちが三度慌てる。今度の反応は、まんま何でバーンまでいるのかって感じだな。まあ、俺が保険のために連れてきたんだけど。

 エリクは良い奴だけど、何を考えているか解らないところがあるんだよな。ゲームではこのイベントでソフィアの悪役令嬢が確定するから、証人は多い方が良い。


「バーン殿下については意外だけど、2人ともソフィアを擁護してくれてるんだね。ありがとう。だけど僕だってソフィアのことを疑ってはいないよ」


 エリクは相変わらずの爽やかな笑顔で応じる。


「あとは彼女を傷つけた君たちのことも、全てソフィアに任せるつもりだから。僕が王子の立場で処分するとか、そんなことは一切しないつもりだよ」


 エリクの言葉に貴族女子たちがほっと胸を撫で下ろす。だけどおまえたちは許された訳じゃないからな。


「だったら良いんだけど。じゃあ、バーン。俺たちは退散するか」


 俺たちがいるとソフィアと貴族女子たちの話が進まないからな。


「だけどその前に。おまえ、ミリアって言ったよな。ちょっと待っていろよ」


 俺はミリアに近づくと『浄化(ピュリファイ)』と念のために『治癒(ヒール)』を発動する。これでミリアの身体と服は何事もなかったかのように綺麗になった。

 無詠唱で魔法を発動したことに驚かれるのはいつものことだけど、一番驚いていたのはミリアだった。まあ、こいつは初めて見るからな。


「え……なんで、アリウスが『治癒』を使えるのよ……」


 声が小さ過ぎて良く聞こえないけど、何かブツブツ言ってる。ミリアってこんなキャラじゃないよな。やっぱり違和感がある。まあ、ゲームとイメージが違うのはエリクもソフィアも同じだけどな。


 特にミリアは『恋学(コイガク)』の主人公でプレイヤーキャラだから、自分がプレイしたときとイメージが違っても仕方ないか。

 まあ、用も済んだし。今度こそ本当に退散するか。


「アリウス様、ちょっと待ってください!」


 ソフィアに呼び止められる。


「だから様付けは止めろって言っただろう。それで、何だよ?」


「私を擁護してくれて、ありがとうございます。ですが……貴方が私に良くしてくれる理由が解りません。それに……こんなことを言っては何ですが、私には派閥の者たちが行なったことの責任を取る義務があります。私だけ罰せられないのは道理に叶いません」


 ソフィアは睨むように真っ直ぐ俺を見る。これが本当のソフィアなんだな。


「まず、おまえが礼を言う必要なんてない。俺が勝手にやったことだし、事実を述べただけだからな。それに派閥の奴らがやったことの責任を取るのは組織としては当然なんだろうけど、俺はそういうの興味ないし」


「ア……貴方だって貴族なんですから、派閥に興味がないでは済まされないでしょう?」


 今、アリウスと言おうとして途中で止めたな。


「いや、別に構わないだろう。俺の親も派閥なんて作ってないし。そもそも俺が爵位を継ぐ可能性は低いからな」


「え……貴方はジルベルト侯爵家の嫡男ですよね?」


「まあ、そうだけど。俺には弟と妹がいるし、親も俺の好きにして構わないと言われてるからな」


 俺が冒険者になってから双子の弟と妹が生まれた。今年9歳になるシリウスとアリシアだ。

 まあ、初めて会ったのが学院に入学する直前で、1度しか会ってないから兄弟の実感はないけどな。


「爵位を継ぐ可能性が低いって? アリウス、それは僕も初耳だな」


 エリクが爽やかな笑顔で口を挟む。


「君が宰相になって貰わないと僕が困るんだよ。僕が国王になったときに面倒事を全部1人でやるのは大変だからね」


「エリクなら余裕だろう。万が一手が足りなくても、他の奴を宰相にすれば良いだけの話だしな」


「君の弟と妹には悪いけど。僕はアリウス以外の宰相なんて考えてないよ」


 いや、シリウスとアリシアを推したつもりはないけどな。そんなことを言われても俺は宰相なんて興味ないし。


「話が反れたな。ソフィア、聞きたいことがそれだけなら俺は行くけど」


「ええ……引き留めて申し訳ありませんでした」


 何故かまた睨まれてるけど、ソフィアから見れば俺が自由過ぎるからか。

 だけど家や派閥に縛られるなんて、俺は御免だからな。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 15歳

レベル:????

HP:?????

MP:?????


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