197話:ソフィアとの関係
エリザベート、ナイジェルスタット、ニルヴァナ、シャンピエール。魔界に4人の魔神がいる上に、天界にも同じように4人、この世界の神がいる。
だから少なくとも、俺よりも遥かに強い奴が8人はいて。『RPGの神』がそいつらを唆して、俺を殺そうとしている。
だけどこの世界で絶対的な力を持つ魔神や神が、『RPGの神』の思惑通りに動くとは限らないし。エリザベートやナイジェルスタット、ニルヴァナは、確かにそんな感じだけど。シャンピエールって奴は怪しいって、エリザベートとニルヴァナが言っていたからな。
まあ、俺は魔神や神に対抗できる力を手に入れるために、強くなるしかないんだけど。
いや、そんな理由なんて関係なしに。俺はどこまでも強くなりたいんだよ。
魔神ニルヴァナの宣戦布告から1ヶ月経って。魔神ニルヴァナと魔神エリザベートは、本当に戦争を始めた。
悪魔の軍勢が魔界の魔物を率いて、軍勢同士が激突する。
魔神ニルヴァナは、魔神エリザベートとの戦いを『暇潰しのじゃれ合いのようなモノ』だと言っていたけど。確かにそんな感じで、血生臭い戦いは魔界では日常茶飯事らしい。
悪魔は死んでも魂が消滅しないから、長い年月を掛ければ復活する。だから悪魔たちにとって殺し合いの感覚は、俺たちとは違うんだろう。
戦いが始まってから、さらに3ヶ月が経って。戦況は一進一退って感じだ。
正直から力で押す魔神エリザベートに対して、魔神ニルヴァナは奇襲や罠を張ることで対抗している。2人の魔神自身が戦場に立つことはないから、まだ本気じゃないってことだろう。
それでも戦いの度に、互いの配下の悪魔や魔物が殺されるから。戦力が徐々に消耗している筈だけど。エリザベートは特に気にしていないみたいだ。
※ ※ ※ ※
俺たちが魔界に行くようになってから半年以上過ぎて、今は11月だ。
俺は今年の夏で19歳になって、エリスは20歳になった。
俺たちが付き合ってから3ヶ月で、俺とエリスは正式に婚約した。そろそろ結婚のこととか、周りから言われそうなタイミングだ。
だけど俺の父親のダリウスと母親のレイアは、俺たちのしたいようにして構わないと言っているし。王家や他の貴族たちの方は、エリスがシャットアウトしてくれているみたいで。俺の耳に、結婚を急かす話は入って来ない。
「アリウス、夕食の準備ができました」
今日は俺の家に、ソフィアが遊びに来ている。エリスと2人で夕飯を作ってくれた。
テーブルを囲んで、俺の向かいにエリスとソフィアが座る。エリスと2人のときは、隣り合って座るけど。こういうところが、エリスらしいな。
「世界迷宮の攻略は順調に進んでいるみたいですね。アリウスの顔を見れば解りますよ」
ソフィアが優しく微笑む。確かに攻略は順調に進んでいる。
魔神エリザベートと魔神ニルヴァナが、魔神シャンピエールに警戒しろって言っていたけど。まだ特に何も動きはない。
ニルヴァナと会って以来、俺たちはシンたちのところに行っていないから。仕掛けるタイミングがないってのもあるだろう。
まあ、シンたちを巻き込みたくないし。ガルドの暴走には懲りたからな。
3人で夕飯を食べた後。魔道具で沸かした熱い風呂に入って、リビングでゆっくり飲み物を飲む。
今日、ソフィアは泊まることになっている。勿論、風呂は俺1人で入ったからな。
「アリウス、エリス様。2人は婚約者なんですから。私のことは気にしないで、イチャイチャしてくれて構いませんよ」
ソフィアが気遣わしげに言う。
「あら、ソフィアに気なんて遣っていないわ。私とアリウスは、いつもこんな感じよ」
エリスが視線を向けて来るので、俺は頷く。
まあ、その通りなんだよな。俺はエリスと一緒にいるだけで、エリスを傍に感じられるだけで良い。
勿論、2人のときは、互いの肩が触れ合う距離にいて。気持ちをキチンと言葉にしているけど。前世のバカップルみたいに、四六時中イチャイチャしている訳じゃない。
「でしたら、良いですけど。私は2人の邪魔をするつもりはありませんから」
エリスがみんなに、これまで通りの関係を続けて欲しいと言ったけど。ソフィアは特に何かして来る訳じゃない。
俺と一緒にいるときも、エリスに気を遣って、一定の距離を保っている。
ゲームの『恋学』だと悪役令嬢だったソフィアだけど、本当に良い奴なんだよな。
「ねえ、ソフィア。貴方はそれで良いの? 私は貴方がもっとアピールしても構わないわよ。アリウスを独り占めするつもりはないから」
エリスが包み込むような笑みを浮かべて、ソフィアを見る。
「エリス様。私は今の関係が大切なんです。エリス様の隣にアリウスがいて。私は2人の傍にいる。私はそれで十分なんです」
人の想いはそれぞれだし。恋愛経験が少ない俺には、ソフィアがどこまで本心で言っているのか解らないけど。
俺はソフィアのことも大切だからな。どんなことがあっても、守りたいと思う。
ソフィアに他に誰か好きな奴ができて。幸せになるなら、それが1番だと思う。
だけど俺の方から、他の奴を選べと言うのは違うと思う。ソフィアの気持ちを無視することになるからな。
俺もソフィアと一緒にいたいのは事実だし。ソフィアが、俺たちの今の関係が嫌じゃないなら。
ソフィアが別の選択をしない限り、俺はソフィアの傍にいようと思う。
このとき。半径5kmを超える効果範囲の俺の『索敵』に、反応があった。
俺たちの方に、真っ直ぐに向かって来る魔力。大して強い魔力じゃないけど。
俺はエリスとソフィアの周りに『絶対防壁』を展開する。
「アリウス。何かあったの?」
エリスとソフィアが心配そうな顔をする。
「いや、大したことじゃないけど。念のためだ。ちょっと行ってくるよ」
俺は『短距離転移で自宅から出ると。近づいてくる魔力に向かって加速する。
夜の闇の中。こっちに向かって来るのは、山羊のような角と蝙蝠のような翼を持つ、典型的な姿の悪魔だった。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 19歳
レベル:17,353 (+1,780)
HP:184,052 (+18,892)
MP:280,710 (+28,819)