表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/612

192話:女子会の筈が


 そして週末の土曜日。グレイとセレナには事情を話してあるから、世界迷宮(ワールドダンジョン)の攻略を早めに切り上げると。

 俺は『転移魔法(テレポート)』で地上に戻って、マリアーノ公爵領にあるエリスの居城にやって来た。


「アリウス、お帰りなさい」


 エリスがいつものように出迎えてくれる。だけど今日はエリスだけじゃない。


「アリウス、お邪魔しています」


 ミルクベージュの長い髪と碧色の瞳のソフィアが、優しく微笑む。


「ダンジョンを攻略しているって言うから、もっと遅くなると思ったけど。意外と早かったじゃない」


 純白の髪と紫紺の瞳のミリアが悪戯っぽく笑う。


「ア、アリウス君。ちょっと、久しぶりだね」


 眼鏡を外して三つ編みも解いたノエルが、少し恥ずかしいそうだ。


「アリウスは世界迷宮を攻略しているのよね。あとで、どんな魔物と戦っているのか教えてよ」


 アッシュグレイの髪のジェシカが、嬉しそうに話す。いつも冒険者らしい格好をしているジェシカが、スカートを穿いているのは新鮮だな。


「ソフィア、ミリア、ノエル、ジェシカ。みんなに会えて嬉しいよ。だけど今日は女子会なんだろう? 俺のことは気にしないで楽しんでくれよ」


 ちなみにジェシカは『転移魔法』を使って直接自分で来たけど。他のみんなはエリスが飛空艇(・・・)で迎えに行った。

 エリスの飛空艇はマリアーノ公爵になったときに、王家が所有する飛空艇の1つを譲り受けた物だ。


 王都は防衛の観点から、飛空艇が乗り入れることを禁止しているから。みんなは飛空艇の発着場がある王国第2の都市シルベスタまで馬車で移動して。そこから時速100km程度の飛空艇で移動したから、それなりに時間が掛かった筈だ。


 だから俺が『転移魔法』でみんなを迎えに行くって言ったんだけど。『アリウスには他にやることがあるし。移動中もお喋りをしているから楽しいのよ』と断られた。


「アリウスは、何を言っているんですか? 私たちはエリス様のところに遊びに来ましたけど。アリウスに会うことも目的ですから」


ソフィアの言葉に、みんなが頷く。


「アリウスが帰って来たから、みんなで食事にするわよ」


 みんなは俺と一緒に夕飯を食べるために、待っていてくれた。それにテーブルに並ぶのは、エリスのお手製の料理だけじゃなくて――


「今日は私とノエルも手伝ったんだからね」


「そ、そうだよ。アリウス君……」


「そのチキンは、私が作ったんですが……どうでしょうか?」


「私も……一応、ジャガイモにニンジンは切ったわよ」


 みんなが作ってくれたんだな。


「ああ、どの料理も美味いよ。みんな、ありがとう」


 俺がエリスを選んだことで、他のみんなとの関係は変わると思ったけど。


『私はできれば、みんなと一緒にアリウスの傍にいたいのよ』


 エリスがこう言ってくれたおかげで。みんなはこれまでと変わらない態度でいてくれる。

 だけど完全に同じって訳にはいかなくて。ときどき、ぎこちなさを感じてしまうのは仕方ないだろう。


「ねえ、アリウス……エリス様は優しいから、勘違いしちゃいけないことは解っているわよ」


 夕飯を食べながらワインを飲んで。ミリアはめずらしく酔っている。


「私は2人の時間を邪魔するつもりはないわ。だから邪魔なら正直に言ってよね」


 ミリアの言葉に、ソフィア、ノエル、ジェシカが真剣な顔で俺を見る。


「いや、そんなことはないからな。俺が好きなのはエリスだけど。みんなのことが大切なのは変わらないし――」


 俺1人で決めて良いことじゃないからな。エリスを見ると、エリスが全部解っているからって感じで頷く。


「俺の方こそ、みんなが嫌じゃないなら。これまで通りにして欲しいと思っているよ」


 俺はどこかのラノベ主人公みたいに、ハーレムを作るなんて考えてないし。

 エリス以外のみんなが、それでも俺を好きでいてくれるとか。そんな都合の良いことは考えていない。

 だけど俺はみんなが大切だから。嫌われたとか関係なしに、みんなのことを守りたいんだよ。


「みんなのことを邪魔だと思うなら、わざわざ呼ぶ筈がないわよね。それはみんなも解っているでしょう?

 何度でも言うわよ。みんなが本気でアリウスを好きなことは解っているから、私はアリウスを独り占めするつもりはないわ」


 エリスの本気が他のみんなにも伝わったみたいだけど。


「つまり、それって……私はこれからもアリウスにアピールして良いってことよね?」


 ジェシカが思いきり俺の腕に抱きつく。


「ええ、勿論よ。だけど私もアリウスの1番を譲るつもりはないわ」


 エリスは反対側の腕に抱きついて、優しい笑みを浮かべる。 


「エリス様、ありがとうございます。ですが……後で後悔しても知りませんよ」


 ソフィアは真っ直ぐにエリスを見つめる。


「そうよね。エリス様がそこまで言うなら……アリウス、覚悟しておきなさいよ」


「そ、そうだよ、アリウス君……私もアリウス君のことを諦めないから……」


 ミリアとノエルが詰め寄る。いや、俺はそういう(・・・・)つもりじゃないんだけど。


「みんな、その通りよ(・・・・・)。諦める必要なんかないわ」


 エリスの宣言に、みんなが納得しているけど。


「いや、そういう話じゃないだろう。俺が好きなのは、あくまでもエリスだからな」


「アリウスが納得していないことは解っていますよ。だけどこれは私たち(・・・)の問題ですから」


「そうね。アリウスがどう思おうと関係ないわ」


「そうよ、アリウス。私たちが自分で決めることだから」


「ア、アリウス君が困ることじゃないよ」


 俺が何を言っても無駄みたいだな。

 まあ、俺がみんなの気持ちに流されなければ良いだけの話だし。

 エリスとみんながこれまで通りに仲良くやれるなら、構わないか。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 18歳

レベル:14,606(+46)

HP:154,890(+492)

MP:236,225(+748)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
良い加減だれてきたな… 書籍版も1巻までが楽しかったです。
アリウスが困ることじゃないとか言ってるアホが居るが、普通に困る話だよね?恋人が居るのにアプローチしてくる女なんて普通なら困るし迷惑な話(;・∀・) 1人を選んで他は友達として付き合うと言ってるのに(;…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ