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182話:グレイの実力


 魔王アラニスが300年ほど前に『RPGの神』と取引して。魔王が勇者と相討ちしたことにする代わりに、『魔界』の場所を聞き出した。

 それから新たな勇者アベルが出現するまで、アラニスは魔界で過ごしていた。


 ドームのような巨大な広間に立ち並ぶ1,000人以上の1,000レベル超えの悪魔たち。

 魔界には1,000レベル超えが普通にいるみたいだな。元々強かったアラニスは魔界に300年近くいたから。強大な力を手に入れたって訳か。


 玉座に座る血のように赤い髪と、金色の瞳の巨大な美女。魔神エリザベート・イルシャダークは『鑑定』してもレベルが解らないけど。圧倒的な魔力の大きさと濃度から、俺よりも遥かに格上なのは解る。


「ここは力こそが全ての魔界だ。我が国イスペルダで、健やかに過ごしたいなら。ここにいる者たちに、おまえたちの力を認めさせる必要がある」


 エリザベートがニヤリと笑う。悪魔たちは一斉に、殺意を込めた視線を俺たちに向ける。弱者には魔界で生きる資格がないってことだな。


「まずはグレイとセレナから行くとするか。ロンダルキア、おまえがグレイの相手をしろ。セレナの相手はガガーランだな」


 エリザベートの言葉に、悪魔たちが騒めく。

 グレイの前に進み出たのは、身長20mを超える巨漢の悪魔。筋骨隆々の分厚い身体だけど。無駄な肉が一切ないって感じだ。


 セレナの前に進み出たのは、身長2mほどの痩せ型の悪魔。尖った鼻と耳が特徴的で、ズル賢そうな顔をしている。


 悪魔たちが騒めいた理由は解る。2人の悪魔はどちらも8,000レベル超えで。この場にいる悪魔たちの中でも十指に入るレベルの高さだからだ。


 いきなり王宮の広間で戦闘を始めるなんて、普通じゃ考えられないけど。悪魔たちは誰一人止めることなく。それが当然のように、戦いのための場所を空ける。


「エリザベート陛下。戦う以上は、この男を殺しても構いませんな?」


 巨漢の悪魔ロンダルキアは、柱のような巨大な金棒を頭上で高速回転させる。一見、力任せに振り回しているように見えるけど。ロンダルキアの動きには無駄がない。


「ロンダルキア、好きにしろ。グレイ、おまえも本気で殺しに行って構わないからな」


「殺す殺さないの話はどうでも良いが。ロンダルキア、相手になってやるよ」


 グレイは収納庫(ストレージ)から2本の大剣を取り出す。普通の奴が両手で使う大剣を、グレイは左右の腕で1本ずつ構える。

 グレイは俺と同じくらいの身長だけど。20m超のロンダルキアが相手だと、さすがに小さく見えるな。


 一方のセレナとガガーランは、先にグレイとロンダルキアの戦いが始まりそうだからか。まるで申し合わせたかのように、完全に観戦モードだ。


「エリザベート陛下が私を指名したくらいだ。貴様を舐めて掛かるつもりはない。初めから本気で行くぞ!」


 ロンダルキアが一気に加速する。巨体に似合わない加速で、一瞬で音速を超える。

 目の前の壁が音速で迫って来るようなモノだから、普通は避けようがないけど。グレイはロンダルキアを超える加速をして、ギリギリの距離で躱した。


「速度は俺以上のようだな。だがそれくらいやって貰わなねば困る!」


 ロンダルキアは高速回転させた金棒を叩き込む。パワーに遠心力を加えた攻撃。グレイはこれもギリギリの距離で躱す。


「私の動きを見極めたつもりか!」


 だけどそれは誘いで。ロンダルキアは金棒の軌道を変えて、グレイの動きを追尾する。さらに金棒の速度が上がって、唸りを上げて迫ると。グレイは身体を反らして躱した。


 息一つ乱していないグレイを、ロンダルキアが睨む。


「躱してばかりで、何故攻撃しない? 貴様は私を舐めているのか!」


 ロンダルキアの魔力が爆発するように増大する。視覚化された膨大な魔力が空気を震わせる。

 ギアを上げたように、ロンダルキアの攻撃が速度と威力を増す。慣性の法則を無視したような動きで、変幻自在に軌道を変えて攻撃を繰り返す。それでもグレイはロンダルキアの動きを予測しているように全て躱す。


「何故だ? 何故当たらん!」


 周りの悪魔たちは戦いに見入っている。グレイがロンダルキアを翻弄するなんて、予想外なんだろう。だけど攻撃が当たりさえすれば、脆弱な人間など肉片と化す。そんなことを考えていそうな余裕が、悪魔たちにはある。


 このとき。グレイが初めて躱ささずに、ロンダルキアの金棒を剣で受けた。ようやく捉えたかと、悪魔たちがほくそ笑むけど。

 グレイの大剣の剣先が触れた状態で、ロンダルキアの巨大な金棒がピタリと止まっていた。


「な、何故だ? 何故、動かん!」


「ロンダルキア。パワーは自分の方が上だと、思っているみたいだがな。デカイ奴に力負けしていたら、冒険者なんてできねえんだよ」


 グレイが大剣に魔力を込める。制止した状態だから勢いがある訳じゃない。だけどそれだけで、ロンダルキアの金棒が粉々に砕け散った。


「な、何だと……」


「エリザベート陛下が、俺の力を認めさせろって言ったからな。おまえの全力を引き出してから、倒した方が効果的だろう」

 

 グレイは一気に加速して、ロンダルキアに迫ると。再び大剣に魔力を込める。

 膨大な魔力が大剣を包むように伸びて、ロンダルキアが振り回していた金棒くらいの大きさになった。


 グレイが魔力の塊をロンダルキアの腹に叩き込むと。巨体は音速を余裕で超える速さで、弾き飛ばされる。

 広間の壁まで飛んで行くと、ロンダルキアは壁にめり込んで。そのまま動かなくなった。


「エリザベート陛下も良い性格しているぜ。こうなることが解っていながら、ロンダルキアを俺と戦わせたんだろう?」


 グレイも10番目の最難関(トップクラス)ダンジョン『神の狂乱』を攻略しているからな。ロンダルキアの動きは『神の狂乱』の魔物に比べたら遅過ぎるし。力も『神の狂乱』のラスボスの方が遥かに上だからな。


「ロンダルキアの奴は、最近調子に乗っていたからな。痛い目に合わせてやろうと思ったのは確かだが。グレイと戦うには全くの力不足だったようだな」


 エリザベートは悪びれることなく、面白がるように笑う。

 ロンダルキアが敗れたことはエリザベートの想定通りで。自分の配下が敗れたことなんて、どうでも良くて。グレイの力を見ることができたことに、満足しているようだな。

 

※ ※ ※ ※


グレイ・シュタット 41歳

レベル:10,462

HP:94,458

MP:73,834


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