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94 エンディング②


 ルウが諦めたのを察してか、ディーンはほっとしたように笑みを漏らす。


「私にできることと言えば、このくらいなんだ。私は何をすればあなたが喜んでくれるのか、よく分からない。というより、あなたのお喋りの内容もほとんど理解できないし、いい加減なことを言ってるだけですべて考えるだけ無駄なんじゃないかとも疑っているんだが」


 ――正解!


 ルウが心の中で混ぜっ返しているとも知らず、ディーンが真面目くさった調子で続ける。


「赤い薔薇以上のものであればいいと思う」


 ルウは何のことか分からず、ぽかんとした。


 昨夜自分がそのようなことを言って煙にまいたことなど、その瞬間まで忘れていた。


 ルウは、あれ、と少し焦った。この堅物は、ルウから渡された赤い薔薇をどのように解釈したのだろう。告白されたとでも思ったのだろうか?


「いえ、あの、あれは、その場しのぎといいますか……」

「私は誠意を尽くしている。分かるだろうか、ソーニー嬢」


 ルウは再び口をつぐむことになった。


 ルウがディーンに対して強く出られないところがあるとすれば、その一点だった。お人好しだと思ってさんざんに利用してからかってきたという負い目が、お喋り好きなルウをして黙らしめるのだった。


「その場しのぎのウソを積み重ねて人の気持ちを弄べば、それなりの償いをしなければならなくなる。そうだろう?」

「いえ、でも、あのときは仕方が」

「私はあなたの話を聞き入れて、意志は尊重すると言った。あなたにも誠意というものを見せていただきたい」


 ルウは何も言えなくなっている自分をおかしく思った。どうもいつもの調子が出ない。身から出た錆とはいえ、抵抗する気がなくなっているのは、もしかしてそんなに嫌じゃないからなのだろうか。


 ――ディーン様、悪い人じゃないですもんねぇ。


 一緒に冒険に出るのも、楽しそうだと思ってしまっているのだ。


 ――無理に連れ戻さないと言ってますし、ディーン様は約束を守る人ですから、問題ないでしょう。


 ルウは方針を決めたら、あとは悩まない方だ。


「それじゃあ手始めに、先輩冒険者の私が、ディーン様に薬草摘みの極意を伝授してあげましょうか」

「薬は間に合っているが」

「こういう地味なクエストをこなさないと上に上がれないんですって。歴戦の勇者なディーン様も、ここでは私の後輩ですからね」

「分かった。よろしく頼む、先輩」


 一切笑わずに真面目に言ってきたディーンに毒気を抜かれて、ルウはその日何度目かの笑い声を発したのだった。




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