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32 メイドのお仕事楽しいです①

◇◇◇


 ルウは新人メイドのルウとして、あちこちで仕事をした。庭の落ち葉を綺麗に掃き清めたら、お次は家中の窓という窓を拭き上げる。あっという間にピカピカになったガラス窓に朝日が反射し、翌日のディーンは「まぶしい!」と文句を言いながらがばりと跳ね起きた。


 ルウはちょうどディーンの部屋で窓拭きをしていたので、「おはようございます、ご主人様」と爽やかにメイドらしく挨拶をしておいた。


「人の部屋で何を……?」

「もちろん、お掃除でございます。わたくし、清掃メイドでございますので」

「まだやっていたのか、それ……」


 なぜかディーンは困ったような顔をしていたが、ルウの知ったことではない。


 起き抜けにガウンを引っかけて、ルウのところに来る。


 ルウは三脚の上でてっぺんのあたりを拭いていた。数年分の堆積した埃と泥で真っ黒だ。


「最近、屋敷の窓がまぶしくなった気がするんだが、あなたの仕業だったのか」

「拭き上げとコーティングをしておきました。一年くらいは掃除しなくてもピッカピカですよ」

「コーティングってなんだ……?」

「ご存じないのですか? スライム素材の撥水性がある保護剤、『スライムコートスーパーデラックス』でございます。汚れも分解するのでこれ一本で家中ピカピカですわ」

「そ、そうか……よく分からないが、便利な掃除道具があるんだな」


 そしてまた次の日は床の掃除をした。ピッカピカに磨き上げたため、家の中はよりいっそうまぶしくなった。


「床に顔が映り込むんだが」

「磨き上げて、ワックスをかけておきました」

「フローリングだぞ? ワックスがけにも限度が」

「おやご存じない? スライム素材の『スケーティングフロアエクストラ』ですよ」

「な、なるほど……?」


 ディーンはうっかり足を滑らせて転び、腰を押さえながらルウを睨みあげた。


「今度から滑らないようにしてくれ」

「防滑剤入りのスライム素材にしておきますね」


 そしてまた次の日は、家中にある銀食器を磨き上げた。光を反射しすぎてもはや白い。


「……銀とは思えない輝きを発しているんだが」

「それもスライムシルバーポリッシュで」

「スライムが万能モンスターすぎる」


 ルウの手で骨董品の家具などにも磨きがかかり、木材にツヤが戻った。錆びた引き出しの金具なども新品同様の美しさを取り戻している。


 ほどなくして家中の掃除が完了した。

 

 仕事帰りのディーンは、ピッカピカの玄関ホールでルウに出迎えられて、目をまんまるにした。


「新築のようになってしまった」

「することがなくなってしまいました」


 ディーンは腫れ物に触るような、それでいて呆れたような目でルウを見た。


「……あなたは掃除の『才能』持ちなのか?」


 ディーンの疑問ももっともだった。


 この世界の人たちはみんな、『才能』を神様からもらって生まれてくる。ほとんどの人の『才能』は、料理がおいしく作れるとか、作物が元気になるといった日常的なものだが、貴族はほぼ全員が大規模な爆発を起こせるだとか、人の三倍速く動けるといった、大きな『才能』を与えられていた。


 どんな『才能』を持ってるかの鑑定は、『鑑定』の『才能』を持った人が見てくれる。


 この国では、全員が十三歳までに見てもらうことになっていた。


「私に『才能』はありませんよ」

「それは嘘だろう」

「本当ですよ。母が大きな『才能』を秘めていたので、娘の私にも期待がかかりまして、何度も鑑定人を変えてやり直してもらったんですが、結果はまったくの才能なしでした」


 小さなころの鑑定結果は変化することもあるが、おおよそ八歳くらいから、同じ結果が出るようになる。ルウが最後に鑑定を受けたのは十歳のときだった。

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