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次期ヴェスヴィオ男爵


ダンジョンが多く存在する世界。メイズフォース。


この世界では天災と試練の神が主神であり、その加護を受けるダンジョンは次々と発生しダンジョンを攻略して資源とする社会が形成されていた。


世界一多くダンジョンが国内に存在する合金(レーガ)帝国の王都近郊には11のダンジョンがあり帝国の重要な資源として国家によって保護されていた。


さて話は乾杯の音が響く王都から遠く離れた辺境の荒野へ飛ぶ。

そこは帝国の端に位置して荒野以外には100人程度の領民が住む村と領主である男爵家の屋敷がある以外には何もなかった。



男爵家の名前はヴェスヴィオ男爵。

元々ダンジョン探索者だったエミリオ・ヴェスヴィオとセレーネ・ヴェネツィアが【湿潤と蜥蜴の火山】というダンジョンを攻略した功績により貴族となった。


これはその2人の息子であるグラート・ヴェスヴィオの物語である。



「何、燃やそっかな〜?」


茶髪に茶色の瞳の少年、グラートはご機嫌に荒野で呟いた。12歳の遊びたがりのグラートの遊び場は専ら荒野だった。


ダンジョン攻略者の息子であるグラートは魔法の才能があり特に火魔法が得意だった。両親の教育方針と周囲の環境状態もありグラートは遊びがてら荒野の害獣を魔法で討伐することが日課になっていた。


「お、モンスターだ」


グラートが見つけたのはネズミ型のモンスター、デザートラット。最近の遊び相手だ。

グラートを視界に入れた途端に飛びつくデザートラット。グラートは慌てずに手をデザートラットに向けて呪文を唱える。


「フレアバレッド!」


グラートの手から放たれる火の玉。火の玉は空中で回避できないデザートラットへ真っ直ぐ飛び、当たった。

「ギィイ!」


呻き声を上げながら地面に落ち、燃えていくデザートラット。炎が消えると丸焦げのデザートラットが出てきた。グラートは慣れた手つきで腰からナイフを取り出すとデザートラットに突き立てて腹を開く。

心臓、肝臓、胃、肺、腸に骨などがありその奥に赤い石がある。これはモンスターの体内で生成される魔石と言い、この世界において魔石は魔法の発動媒体や魔法を利用した道具、魔道具の燃料になる。


グラートも親指に小さな魔石が嵌められた指輪を着けており、先程の火魔法を発動した時もこれを媒体に火の玉を放った、


魔石を取り出し、水で洗うと肩にかけた鞄へ入れる。

デザートラットの死骸は放置だ。荒野に生きるレッドジャッカルが美味しくいただく。レッドジャッカルはヴェスヴィオ男爵領を中心に生息する肉食動物だ。生来魔石を持つモンスターではなく動物なので魔法は使えないが頭が良く魔法使いには近づかない本能がある。魔法使いが残していった死骸を食べるために魔法使いを見つけると遠巻きに歩き、魔法使いがいなくなると死骸に集るのだ。


グラートが荒野からいなくなるとすぐに親のレッドジャッカルが現れ、周囲を警戒し危険がないと分かると子供のレッドジャッカルがデザートラットの死骸に齧り付いた。


モンスターは栄養価が高く、野生動物にとっては最高の栄養食でもあるのだ。


家に帰ったグラートはまず井戸に行き水を汲んで喉を潤した。

屋敷に入るとリビングには母親のセレーネがお茶を飲んでいた。側にはメイドのイルヴァがいる。


「ただいま、母さん、イルヴァ」


「おかえり、グラート」


「おかえりなさいませ。グラート様」


金髪に碧眼の白人美女、セレーネは1人息子の帰宅に目を向けて迎えた。イルヴァは荒野の村、ウミディータ村出身の女性で赤みがかった茶髪に黒眼を持つ褐色肌をした美女だ。


「今日はどこまで行ってたの?」


「大岩の方だよ。デザートラットを1匹狩って来た」


「最近、ネズミが多いわね?」


「そうだね」


グラートは毎日のようにモンスターを狩って来るが最近はデザートラットが毎日のように狩れた。


「奥様。もしかするとデザートラットの大量発生が起きているのやもしれません」


「あらあら、それは大変ね。村の香辛料が食い荒らされちゃうわ」


ヴェスヴィオ男爵領は荒野がほとんどで決して豊かな土地とは言えないが、グラートの両親、エミリオとセレーネが持ち込んだ香辛料を栽培するにはとても適した土地だった。


熱帯というよりは乾燥地帯な土地だが、地中には水分が含まれていたらしい。


以上のことにより、ヴェスヴィオ男爵領は香辛料のお陰で潤っていた。


「それなら、僕が見てこよう」


「父さん、ただいま」


会話に入ってきたのはヴェスヴィオ男爵家当主のエミリオだった。


「おかえり、グラート」


茶髪に茶色の瞳の黄色人。東方国家とのハーフなエミリオは剣の達人であり、炎鬼流剣術という武術を奥義まで修めている。


この才能はグラートにも受け継がれており、グラートも魔法の方が得意だが、剣もまた、得意だった。


「最近、ライモンドから同じような報告が挙がってたからね」


「あら、そうなの?」


ライモンドはヴェスヴィオ男爵家の執事を務める男だ。


「ああ、グラートが今日、狩ったのも合わせると今月で12匹目だ。

香辛料の木が全滅する前に間引いておこう」


「俺も行っていい?」


「グラートにはまだ早いわ」


好奇心満々でエミリオに尋ねるグラートだが、セレーネに牽制される。


だがグラートは熱い視線をエミリオに送る。


「ダメよ」


再度、力強くセレーネに釘を刺されるグラート。


さりげなく背後に回っていたイルヴァにも両方を抑えられる。


「まあ、そういうわけだからもう少し大きくなるまで諦めてくれ。グラート」


「…はい」


肩を落としてイルヴァに屋敷へ押されていくグラート。





デザートラットは大量発生していたが、エミリオの剣術によって容易に一掃されたのだった。



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