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不幸な男

作者: 戸井田晃典

 ある喫茶店にAとBという男二人が居た。


 二人は同時に煙草に火をつけて話し始める。


 A「いやぁBよ久々だね。最後に会ったのはいつだったかな」


 B「A君久しぶり。最後に会ったのは2年前、僕がちょうど鳩にクソをかけられた日だ。」


 Bはへらへらしながら答える。


 A「確かにそんな事もあったかもな、地元の同窓会で二次会に行く途中突然君の頭の上に鳩のフンが落ちてきたんだっけな。あれは災難だったね」


 B「まぁ確かにあの頃はそのせいで昔から気になっていたC子ちゃんにアプローチをかけれなかったなぁ」


 A「世間では犬の糞を踏んだ時とかに《運がついた》なんて言うじゃないか。あんまり気にせずまた日を改めてアプローチしたらいいじゃないか」


 B「あぁ、それなんだが後日C子をドライブデートに誘ったんだ。二人で海を見に行ったんだよ」


 A「おっ結果はどうだったんだ?」


 B「どうもこうもないよ、海すら見にいけなかった。 国道を走ってる時に赤信号を無視した車が横から衝突してきてね。二人とも重体で病院に緊急搬送された。僕は車椅子でC子の病室まで見舞いに行ったが「事故を起こしたのは貴方の不注意のせいよ、もう顔も見たくありません、出て行ってください」ときっぱり嫌われてしまった」

 

 なんとも不幸な恋の結末にAはかける言葉を探していた時その雰囲気にBが気付いてか続けて話す


 B「そういえばA君仕事は順調なのかい?」


 A「うん、まずまずといったところかな来月昇進が決まっているんだ。昨日娘と妻にいえでささやかなパーティーを開いてもらったよ。そういえば風の噂で君も会社では役職がある立場だと聞いたよ」


 B「確かに昇進して人をまとめる立場を任されたがそれは本当に肩書きだけだ、平社員の時と比べて給料も全く変わらないし以前僕の立場にいた人のミスを謝り続ける日々だったよ。」


 A「それは大変だな、でもこれで出世のルートに上手くのれたんじゃないか?これからその会社が大きく成長していく事を僕は願っているよ」


 B「それが...」


 Aに嫌な予感が走った(まーた不幸な話かなぁ)


 B「僕が昇進して2ヶ月になった頃かな。会社で保管している顧客のリストが誰かのミスで公に漏れてしまったんだ、そのせいで信用はガタ落ち、会社は潰れてしまったよ。」


 A「うわぁ....」


 B「その責任を僕がなすりつけられて今は生きているうちに返せるかも分からない額の借金を背負わされてしまった」


 A「今の新しい職場は順調なのかい?もし僕に手伝えることがあったらいつでも手を貸すよ」


 B「有難うそう言ってくれるだけでも嬉しいけど家族と幸せに暮らしている君に迷惑をかける事はできない。 今はコンビニでバイトしながら毎日高校生の先輩に使えないだとかのろまだとか罵られながら何とかやってるよ」


 A「そこまで苦労していたんだね。誰か周りに助けてくれる人は居なかったのか?」


 B「僕は2歳までで両親が二人とも他界していて殆ど顔も覚えていない。18歳まで児童相談所に居たがそこを出てからは育ててくれていた先生も知らん顔だ、助けを求めても新しく入ってくる子供達の世話で忙しいらしい」  


 Aは気まずすぎる話が息苦しくなって一つの提案をした。 


 A「そうだ、今日は仕事は休みなんだろ?なら一緒にドライブに行こう!せっかく天気も良いことだしお勧めのドライブコースを案内するよ」


 B「それは良い!ちょうど気が落ち込んでいた所だドライブをしながら昔の思い出話に華を咲かせようじゃないか!」


 A(華が咲くような思い出話があるなら今すぐにでもして欲しい...)


 Aは思う事を心の中にしまいBをドライブに連れて行った。 

 

 A「どうだい?眺めも良いし風が気持ちいいだろう?」


 B「そうだね、僕はオープンカーってやつに初めて乗ったけど案外寒くないんだね、心地よい程度の風が全身に当たってなんだか空を飛んでいるようだ」


 1時間くらい走った頃だろうか、後ろからサイレンの音と共に声が聞こえる


「そこのオープンカー止まりなさい!スピード違反だ!!」


 道の端に車を止めて楽しい雰囲気に水をさした警察に苛立ちを感じながらAは車から降りる


「ダメだよこんなにスピード出しちゃ10キロもオーバーしてたよ」


A「おまわりさん、10キロの違反くらいで止めてるなら僕の前を走っていた車は30キロはオーバーしてたぞ!なぜそいつじゃなくてこの車を止めたんだ!」


 警察はAの免許に目を通しながら言う


「うん、みんなそれ言うけどね違反は違反だから、前の車とか誰が早かったとか関係ないからね。良かったよ事故起こす前に止められて」


 Aは怒鳴る


「俺だけ違反の切符を切られるのは不平等だ!!!あぁ!俺はなんて不幸な男なのだ!!!!!」


 


 その二人のやりとりを助手席で座りながらBは顔いっぱいの笑顔で見ていた。



 


 

人が感じる不幸というのは差が大きいと思いこのお話を思いつきました。 

不幸な人に対して優しくてポジティブな声をかけてくれる人が実際に自分が不幸になった時にもポジティブシンキングでいれるのか。普段から慰められている人は自分以外の不幸な人を見たときに手を差し伸べれるのか。その反応はひとそれぞれだと感じます。

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