紅の山①
20202/01/09
一部変更しました
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ぐるんぐるん回りながら落ちていく。少しでも勢いを弱めようと、手足をばたつかせながら叫んでみるが、落下速度は下がるどころか上がっている。
やばいやばいやばいやばい!!このままじゃ晴香に会えない!!くそっ!とまれとまれとまれとまれとまれとまれ!!!
そんな思いとは裏腹に、紅に染まった木が目前まで迫っていた。そして
「ぐえっ」
腰から激突した。
が、勢いはそれだけでは消えず、そのまま十メートル近く吹き飛ばされ、転がりながら着地した。
「がはっ!……げほっげほ………んはぁ、はぁ………腰、いってーーーーー!!!」
いや、もう、電流が走るどころか、雷に打たれたかと思った。あ、やばい、痛すぎて涙出てきた。
ていうか、よく無事?だったな。絶対ヤバいと思ったんだけどな。あ、全身から痛みが……
立てるくらいまで痛みが治まった後、辺りを見回してみた。
上から見たときは紅葉しているから紅色に見えると思っていたが、土も木も虫も遠くに見える山々までもが熟れた林檎のようだった。山頂の方は俺がぶつかったであろう、折れた木があり、山頂まではかなり距離がある様だった。麓の方は木々が邪魔でうっすらとだが木と同じ紅く染まった建物がいくつも見えた。こちらもかなり距離があった。おそらく、山の中腹辺りにいるのだろう。
「とりあえず、麓に降りて神の泉について聞いてみるか。木刀はっと……あったあった」
落とした木刀を拾い、腰に下げようとしたが、ベルトが無いので出来なかった。
「しょうがない。ズボンの中に入れるか」
木刀を柄だけだし、残りはズボンの中に入れた。
「んじゃ行くか」
俺は麓に向かって歩き始めた。
「はぁ、はぁ、はぁ……疲れた」
あれから一時間近く歩き続けたが、全然たどり着かない。距離が縮まっているのは分かるんだが
「ちょっと……はぁ、はぁ…んぐ、はぁ………休憩しよう」
近くに座りやすそうな紅い岩があったので、ズボンから木刀を出し、肩にかけて座った。
「はぁ……山下りって、結構疲れるんだな」
木が邪魔でまっすぐ進めないし、腐葉土は滑りやすいし、全身痛いし。
それに見える景色が全部同じ色だから気分も悪くなってくるし。空の色だけが唯一の癒しだわ。
「う~ん……こんだけ紅いってことは、栄養がないのか?」
なんだっけな、あの土の名前。ラ……ラ……ラテセ……ラテセリだっけ。あれと同じことが起きてんのか。にしてはあんまり暑くないし、秋ってだけなのか。
バキッ
背後で枝?が折れる音がした。最初は気のせいかと思い気にしなかった。が、それが何度も続いたので、後ろを見てみると、とても筋肉質な茶色い猪が木を倒し、何かを吸っている。
え?ちょっとまて、なんだあの猪!?茶色だぞ!!
俺が驚嘆としていると、猪が突然こちらに突進してきた。
「やっば!」
肩にかけてた木刀を右に逆手で持ち直し、急いで斜面を走り始めた。
こけるとかすべるとか気にしてられない。木を何本も連続で折るような筋肉が激突したら、怪我じゃすまない!
幸い距離は開いていたのですぐ追いつかれることはないが、それでもすこしずつ詰められている。
「ちっくしょう……なんなんだあの猪!なんで急に突進してきたんだよ!!」
俺の問いかけに答えてくれる人は当然おらず、代わりに猪のブシィィィィという鼻息が聞こえてきた。
このままじゃいずれ追いつかれて終わりだ。どうする、真っ向から戦ってみるか?いや、そのまま轢かれて終わりだ。方向転換は……駄目だ。向きを変えるには一回止まんなきゃいけない。その隙に轢かれる。………あれ?これ詰んでね。
猪の足音が背後まで迫っていた。あとほんの少ししたら追いつかれるだろう。
「っ………!」
そうだ……こいつを木に突っ込ませよう。これだけ勢いついてるんだ。いくら頑丈とはいっても、少しは怯むだろう。いや、怯んでくれなきゃ困る。作戦としては、まずこの木刀をぎりぎりの所で地面に突き刺して急ブレーキ。そしてこの勢いを活かしてそのまま木刀を中心にぐるっと回るはず。そしたら猪はそのまま木に激突。猪が怯んでる隙にどこかに隠れてやり過ごす。その後少し休憩して山を下る。よし、完璧だ。
「うっおぉぉぉぉ!!」
俺は十メートルほど下にある大きな木に狙いを定め、全力で走った。
猪の生暖かい鼻息が足にかかる。すごい気持ち悪いが、気にしてられない。気にしたら負けだ。
あと約七メートル。
あと少しなのにものすごく遠くに思えてしまう。さっきまでは全然そんなことなかったのに。
あと約四メートル
あと少し、もう少し。もっとぎりぎりじゃなきゃ避けられるかもしれない!
あと約三メートル
約二メートル
一メートル
ここだ!!
木刀を地面に突き立て急ブレーキをかけた。当然それだけでは勢いを消し切れず、木刀を中心に周り始めた。が、地面から木刀が抜け、空中に放り出された。
それとほぼ同時に
バゴンッ!!
「ブギャアアアアアアアアアアア!!」
猪は木を吹き飛ばし、頭から血が吹き出していた。
「いてて」
右肩が少し痛い。だが、そんなことを気にするより早く隠れないと。今度見つかったら確実に終わりだ。
少し離れた木の陰に隠れて、様子を伺った。猪の頭からはもう血は吹き出してはいなかったが、絶えず血が流れ続けていた。どうやら眉間から血が出ているようだった。うっすらとピンク色が見える。おそらく骨か脳がむき出しになっているのであろう。
猪は鼻を地面に近づけ、何かを嗅いでいるようだった。
まさか、俺を探してないよな?いや、そんなわけがない。前テレビで野生の動物は命の危機を感じたら逃げるって言ってたし。今まさに死にそうになってるんだから。
猪の鼻がこちらの方角に向いた。すると、猪は顔を上げて、また突進してきた。
「ブギィィィィィィィィィ!!!」
「っ………!」
どうする。もう一回やってみるか。……いや、それより、ここで殺すのが一番だ。
俺は向かってくる猪の正面に立ち、眉間を狙って木刀を構えた。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
猪が突進してくるのに合わせて、眉間に突き刺した。そのまま根元まで刺さり、猪はバランスを崩しながら俺に当たり、止まった。
「……死んだ、よな?」
体貫いたから死んだとは思うけど、一応軽く小突いてみた。反応はない。
「た、助かっっっった~~~」
俺は地面に引き寄せられるように、仰向けになった。
Qなんで空中に扉を出したの?地上でいいじゃん
A地上に出すと、目撃される可能性があるからです。それが一般人なら良いですが、神とつながりがある人の場合、そこからばれて自分が消されるかもだからです。扉が小さいのもそれが理由です。
Q何メートルぐらい上から落下したの
A四十メートルぐらいですね
Qそんな高いところから落ちてなんで死んでないの
A一回だけどんな攻撃でも怪我を負わない鎧をつけてたからです。謎の力で押し出した時につけました。
Qなんで辺り一帯紅色なの
A昔、バカな魔術師が一年中紅色だったら最高じゃねって?って言って紅色にしたからです。
Q主人公は今どういう格好なの
A江戸城のデザインがある白い長袖にジーパン。靴はスニーカーです。
Qラテセリ?
Aラトソルのことです
Qなんで猪は茶色なの
A魔術師がかけた魔術に対抗できるぐらいの魔力があるからです。ちなみに麓の人たちも普通の色です。
Q猪は何で木を折ってたの
A鼻が詰まりがひどいからです。この山にある木は折ると十本に一本ぐらいの割合で鼻薬になるエキスが出ます。
Q主人公の方に突進してきたのはなんで
A鼻詰まりが良くなる→なんか近くに餌の匂いがする→食べるか(この猪は肉食です)
Q山を走ってるとき、どのくらいの速さなの
A時貞君が時速五十キロ。猪が時速四十五~八で走ってます。
Qそれならなんで追いつかれるのさ
A時貞君は山を走るのに慣れておらず、所々で減速したりしたからです。
Q主人公速すぎね
A神器の肉体強化のおかげです。