防衛 (side : 黄泉)
リタお姉様に命じられて、僕は不死の王の軍勢から街を防衛する事となった。
正直に言ってしまうと…
人間が幾ら殺されようが、僕にとってはどうでも良い。
『儂の目的は人を死なさない事じゃ…』
そう言ったお姉様の声が頭の中を駆け巡る。
全く意味が解らない。
知らない者を守る、そんな事に何の意味があるのだろうか?
いや、深く考えるのは止そう。
魔族である僕には、人の考えを理解するのは難しいだろうから。
避難する人々によって、現在パニック状態の街の中。
大剣を担ぐ僕は、彼らとは反対に街の外に向かう。
そして、街の入り口に辿り着いた。
それなりの人数が防衛の任に当たっているが、それでも全然足りないと思う。
兵士や冒険者が殆どだが、防具すら着けていない素人っぽい者も多い。
と、彼らを観察している間にも…
「き、来たぞッ!」
「弓術士が仕留め損なった敵を皆で倒すのだ!」
「魔法を使える奴は援護をッ!」
怒声が飛び交う中、最初の軍勢が押し寄せて来ていた。
実戦の経験は少ないのか、兵士ですらガチガチに緊張している様だ。
「ちょっと退いて!」
彼らを押し退け、第一波の怪物の群れの前に出る。
大半はゴブリンやオークの亜人種。
大軍を作るには最適な繁殖力を持つコイツらは、魔王軍でも真っ先に先鋒にされる。
褒賞についても、人間を好きに凌辱させるだけで良いのである。
僕の露出が多い恰好に反応したのか、迷わずこちらに矛先が向かう。
僕を目掛け、殺到して走り出す亜人種達。
見た目が人と変わらない僕の姿に、凌辱するべく本能だけが迸っているのだろう。
って…
僕がこうしている動機からすれば、コイツらの事を悪く言えた口じゃないんだけどね。
それじゃあ、始めますか!
瞬時に駆け出して大剣を一閃、そのまま群れの中に飛び込む!
振り回した大剣が放つ衝撃波によって、下劣な亜人種達を一網打尽にする。
この間、僅か数秒。
100体近い亜人種の群れが、その僅かな時間で無残な肉片と化した。
ちょっとした準備運動にはなったかな?
お姉様に完膚無きまでに完敗したけど、僕が弱い訳じゃない。
お姉様の強さが尋常ではないだけだ。
つかつかと、後方で身構えていた兵士や冒険者の元に戻る。
「じゃ、僕は西の防衛エリアに行きますね。また敵が多く来たら戻って来ますから」
そう告げて、次の防衛エリアに向かい駆け出して行く。
魔王軍の編成次第では、僕が彼らを殺す側になっていたかもしれない。
彼らもまた、お姉様と僕が愛し合ったお陰で運命が変わったようなものだ。
弓術士の竜巻や嵐による攻撃も終わって、数刻が経過している。
これからが本番である。
敵の数は勿論、大型種の厄介な魔獣も増えてくるだろう。
「な、何だ?今の女の子はいったい…」
「何が起きたんだ?一瞬で終わったぞ…」
「クッソ強い褐色ポニテの美少女、俺…マジ惚れたわ…」
謎の少女の凄まじき活躍に、防衛する筈だった者達は呆然とするしかなかった。




