追跡 (side : デューレ)
アタシは、勝った…。
風神の大いなる力を借り、怪物の大軍に勝利したのだ。
その代償として、死をも覚悟した。
しかし、理由は解らないが…生き延びる事も出来た。
風神は保留にする…みたいな事を言っていたが、今は気にしても仕方がない。
こんな事なら…最初から風神を呼んでいれば、何も苦労はしなかったのだが。
まぁ、運も含めてアタシの実力かな?
街への帰路だが、風神によって倒された夥しい数の死骸が全て無くなっている。
確かに、無に帰せ…って命じたけれど、本当に言った通りにしてくれるとは、流石は神様である。
咄嗟ながら『無に帰せ』と命じた自分を褒めてあげたい。
あの数の死骸が残っていたら、街の者が総出でも数年規模の後片付けをする、とんでもない羽目になっていただろう。
やっと帰って来た、街の入り口。
残っていた兵士や冒険者達が、アタシを出迎えてくれる。
驚いた事に、今回の戦いに於ける死者はいなかった。
突然現れた大剣使いの活躍もあったらしい。
それでも負傷した者は多かったものの、何れも命に別状は無いとの事だ。
嬉しい!
いや、本当に嬉しい!
ようやく、心から安堵する事が出来た。
全てが結果オーライに終わったのだ。
日が沈む頃、やっとリタの塔に帰って来れた。
先ずは、さっと入浴したいかな。
次に、助けに来なかったロリババアに説教をしてやろう。
最後は、疲れた身体にレイきゅん成分の補給!
で、一日を締めよう。
でゅふふふ。
勿論、上と下を同時に粘膜交換しちゃうわよ。
うーん、楽しみ〜!
「デ、デューレ様〜!た、大変なのです〜!」
ガクッ!
またアンタかい…。
リタの使い魔が飛んで来た。
「リタ様が、リタ様が〜!?」
「リタ婆がどうしたのよ? あの身体での初潮でも迎えたの?」
ブーツを脱ぎながら使い魔に訊ねる。
「冗談言ってる場合ではないのです〜! リタ様が魔神にやられたのです〜!」
「やられた…? リタ婆が…?」
「更に、レイワイゼン王子も…誘拐されちゃいました〜!」
今日は厄日だろうか…。
使い魔の告げた衝撃的な話に、アタシは軽い目眩を覚えたのだった。
そして、寝室に横たわるリタ婆の元へ。
「な、何なのよ…?これはいったい…!?」
リタ婆の身体は、見るも無残な姿となっていた…。
その身体の大部分は溶けてしまっている。
腰下はグジュグジュに溶解しており、原形を留めていない。
「リタ様は魔神の毒にやられたんです〜! それで、身体が完全に溶けてしまう前に、自らの身体の時間を停止されたのです〜!」
「生きてるのね。 ……で、助ける方法は?」
「ご自身の事は、セーラ様にお願いするらしいです〜!」
って…時間を止めてるのに、どうやって頼むの?
ま、リタ婆だから何かしら方法はあるんだろうけど。
「あと、リタ様からコレを渡す様にと〜!」
使い魔がアタシに渡したのは、小さな小石。
1部分だけが赤く光っている。
「レイワイゼン王子の探知石らしいのです〜!」
リタ婆らしいな…。
おそらく最初の魔王疑惑の頃から、予め用意していたに違いない。
この石が光っている方角に、レイきゅんがいるって事か…。
「追跡して、魔神をブチのめして、レイきゅんを救出しろって訳ね……了解!」
一難去って、また一難。
お楽しみの粘膜交換は、またもや先送りになってしまった。
魔神がレイきゅんを誘拐…。
その理由については、アタシは考えない事にした。
一刻も早く救出する。それだけである。
踵を返し、アタシは星が煌めく夜空へと舞い上がったのだった。
次回からがリタ視点のお話です。




