最善 (side : デューレ)
この不死の怪物の大軍の何処かに、奴は必ず居る。
全ての元凶である、不死の王が!
後方で街を守ってくれている兵士や冒険者、そして非戦闘員の有志達…
アタシはこれから此処を離れ、不死の王の元に向かおうとしている。
それは、つまり…
必死で防衛している彼らを…見殺しにするという事である。
駐屯する兵士達には残してきた家族が居るだろう。
冒険者達の中にはまだ駆け出しの少年少女も多い。
そして…訓練もなく、勇敢に街を守る有志達。
何を生かし、何を見捨てるのか。
かつてリディマーが教えてくれた事が頭に浮かぶ。
勇者や四聖人は世界を守る強大な力を持っている。
それでも、我々は神ではない。
目の前にある命を救う事が出来ない局面に陥り、非情な判断を下す時が必ずやって来る。
その時は、自らの意志で最善を尽くせ。
「最善を…尽くすんだ…」
答えはもう、決まっている。
「みんな、ごめん…」
戦闘を中断して一気に上空へと飛び上がる。
生き残ったら、憎んでくれていい。
力尽きたなら、怨んでくれていい。
アタシにはそれを背負う義務がある。
それが救世主たる四聖人の一人、弓術士なのだから。
もう後ろを振り返りはしない。
アタシは…自分に出来る最善を尽くすだけだ。
「何処だ…!何処に居るッ…?」
上空から敵軍を見下ろしながら思わず叫んでいた。
狙うは敵軍の大将、不死の王のみ。
奴を倒せば、少なくとも不死の怪物の進軍は止まる。
目を懲らせ!
耳を澄ませ!
精神を研ぎ澄ませ!
こうしている間にも、尊い命が失われてゆく。
そして、ようやく!
「あそこの群れ…見つけたッ!」
遥か上空に居るにも関わらず、禍々しい気配を感じる。
そして、何よりも…
その集団を構成するのは、最早…不死の怪物ではなかった。
大半を占めるのは山羊の頭をした下級悪魔。
奥に点在するのは巨躯の上級悪魔。
更に奥には人型の首位悪魔らしき者達が数名。
奴らが取り囲んでいるのが…!
「必ずやってやる…命を賭けてでもッ!」
矢筒に1本だけ入れていた特別な矢を取り出して、嵐弓フェイルノートを構える。
標的である本人と僕である首位悪魔達は既にこちらに感づいている。
指示が出たのだろう。
続々と悪魔達が翼を羽ばたかせ、舞い上がり始める。
牙を剥き、鋭利な爪を立てながら、上空のアタシを目指して悪魔達が殺到する…!




