元凶 (side : デューレ)
両手に握る2対のナイフ。
赤い刃のデスペラード。
黒い刃のイントルーダ。
嵐弓フェイルノートと同じく、亡きリディマーの形見である。
詳しい出自はアタシも知らないが、リタ婆云く『オリハルコン』製のモノに間違いないらしい。
乱闘になってから、どれくらいの時間が過ぎただろうか?
倒しても倒しても、続々と湧く様に現れる怪物。
次はマンティコアとケルベロスがアタシを目掛けて迫り来る。
獅子の身体に蝙蝠の翼、人間の顔をした合成魔獣マンティコア。
漆黒の巨躯に三つの頭部を持つ地獄の番犬。炎を吐く魔獣ケルベロス。
この魔獣達は此処を抜けさせたくない。
街を防衛する者達が相手をするには、俊敏で獰猛なこれらの魔獣達は危険過ぎる。
宙を舞い、空中のマンティコアに肉迫。
瞬時にデスペラードで喉元を切り裂く。
続いてケルベロスの吐き出す灼熱の炎を避けながら、イントルーダを一閃。
鎌鼬が直撃した3つの頭が跳ね飛び、鮮血が吹き上がる。
アタシの身体は、返り血で真っ赤に染まった。
こうして手当たり次第、怪物を屠り続けている。
それでも、正直言えば焼け石に水の状態であった。
アタシが怪物を倒す間にも、怒涛の如く新たな敵が押し寄せる。
弓術士であるアタシの能力は、暗殺術や1対1の戦闘に特化している。
タイマンでの戦いでなら、どんな敵が相手でも遅れを取る事は無いつもりだ。
だが、敵軍はアタシを狙っているのではない。
街へと到達し、この学問都市を蹂躙するのが目的だ。
今の時点でも既に、数百の怪物に抜けられてしまった。
しかし、それを追いかけて倒す余裕は微塵も無い。
防衛する兵士や冒険者達の奮闘を願うだけだ。
そんな中。
遂に、敵軍は真の姿を現したのだった。
先鋒を務めていた亜人種や魔獣は、言わばカモフラージュ。
続いて押し寄せた軍勢、それこそ…
身体を腐乱させながらも、歩き続けるゾンビの群れ。
骨だけになって尚、進軍してくるスケルトン達。
怨念が実体化したワイトやレイスが飛び回る。
悪霊そのものとも言えるスペクターが蠢く。
不死の怪物。
敵の編成は、生命を持たない者に変わっていた。
そして、理解した。
ゾンビやスケルトンの身なり。
ワイトやレイス、スペクターの悲しい呻き。
この街に到達するまでの間、幾つもの町や村を滅ぼしながら通過したのだろう。
目の前にいる不死の怪物こそ、そこに住んでいた者達の成れの果て。
これだけの軍勢の過半数は、少し前までは生ある人間であった者達だったのだ…
「許せない……!」
思わず口から怒りが溢れた。
こうして不死の怪物を生み出した元凶こそが、この軍勢を指揮している。
以前、リタ婆に聞いた事がある。
不死の怪物を生み出す力を持つ、恐るべき闇の支配者。
そして、それは…魔神では無い。
不死の王。
人である事を捨て、神の領域に踏み込みし者。
その魔力は計り知れない。
その強大過ぎる力は、地獄の悪魔達ですら簡単に使役すると言われている。
ある意味、魔王以上に人類にとって危険な存在。
「絶対、許さない… アタシが…不死の王をブッ倒すッ!」




