訪問 (side : デューレ)
風の属性、最強クラスの奥義。
破滅の竜巻と終焉の神嵐。
それを同時に発動させて、そして操る。
初めてやってみたが、想像を遥かに超える精神力の摩耗。
歯を食いしばりながら、耐える。
ここで意識を失えば、大空からの墜落死が待っている。
それでも、街に迫る怪物の大群を一匹でも多く仕留めておきたい。
犠牲者が一人でも少なくなる様に…
1分経過…2分経過…、そして3分。
そこが限界だった。
これ以上は流石に持たない。
疲労困憊のアタシは一旦地上に降り立った。
肩で息をしながら魔王軍を見渡す。
敵のその数、1万程度は減らしただろうか?
残り6〜7万、今から乱戦となる。
今からアタシがやるべき役割、それは敵陣ど真ん中に侵入しての撹乱。
街の防衛は駐屯兵と冒険者、街の有志に任せる。
とは言えど、防衛隊の数はおそらく1000人にも及ばないだろう。
尋常ではない犠牲者が出るのは間違いない。
これはもう戦争なのだから。
「リタ婆…早く戻って来てくんないかしら…」
弱気になった訳じゃないが、思わず愚痴が口に出る。
大賢者が帰還すれば、その強大な魔法で劣勢を覆せる筈だ。
時間を稼ぐ。
リタ婆が帰って来るまで、ひたすらに時間を稼ぐしかない。
アタシの先制攻撃でグチャグチャになった先陣。
その後ろから第2波の怪物が視界に入って来た。
「早いわよ…ったく。 音速刃ッ!」
嵐弓フェイルノートから放った矢が加速し、突風を作りながら鎌鼬となる。
全てを切り裂く真空の刃。
先頭を歩くオークの群れの頭を尽く跳ね飛ばして一網打尽にする。
続いて繰り出す。
喰人鬼の巨躯を真っ二つに両断。
次はゴブリンの群れ…その次は…
しかし、この音速刃での攻勢も長くは続かない。
敵の数は凄まじく、既に目前まで迫り来ている。
悠長に弓を構えている余裕はもう無いのだ。
ここからは接近しての乱闘になる。
疲労感が一気に押し寄せるが、休む暇も与えてくれない。
フェイルノートを背中に戻し、アタシは両腰に携えたナイフを手に取ったのだった。
「デューレお姉ちゃん…頑張って…」
賢者の塔の屋上。
眼下の街に迫り来る大軍勢。
レイは不安そうに眺めていた。
デューレが放ったと思われる竜巻と暴風も消え、敵軍がみるみる近くなって来ている。
「ボクに…お姉ちゃんを助ける力が有れば…」
その小さな拳を握り締める。
子供だからといって、ただ守られるだけの自分が悔しい。
だが、レイにはデューレの無事を祈る事しか出来ない。
「あら、こんにちは?」
背後から突然の声。
振り向くと、そこには白いマントを纏う女が居た。
セーラよりは年上、20代くらいに見える。
青く長い髪、妖艶な雰囲気の美しい女性であった。
「だ、誰…?」
リタの住処である塔の屋上には、普通なら入る事は出来ない。
瞬時に現れたこの女性は間違いなく敵である…!
レイは悟った。
「ウフフ、怖がらないで? 私は敵ではないわ…?」
彼女はレイにそう告げると、優しい微笑みを浮かべたのだった。




