先制 (side : デューレ)
怪物の大群が街に迫っている。
戦う前から考えたくもないけれど……。
あと1時間程で大軍が街に到達する。
そして、おそらく街の崩壊は免れない。
防衛する兵士や冒険者だけでなく、一般市民にも犠牲は及ぶだろう。
セーラっちが此処に居ないのは…ある意味で良かったのかもしれない。
未だ、割り切れていない。
非情さを併せ持てない。
あの子は戦士としては優し過ぎるのだ。
きっと一人で抱え込み、そして…壊れる。
だから、アタシはあの子の傍に居ようと思っている。
そうならない様に……。
空から敵軍を見渡す。
包囲しての進軍、固まらずに波状の戦陣を敷いている。
弓術士が使う風属性の奥義や、大賢者の魔法によって戦力を削減されない様、しっかり対策がされての行軍。
つまり、ただの怪物の集団ではない。
かなり切れる優秀な指揮官がいるという事だ。
それは、おそらく….
魔王軍三巨頭の一人であろう、魔神。
単身でも恐るべき力を秘めた最強ランクの魔族。
間違いなく、この怪物達を統べているのだろう。
怪物相手に大技を乱発すれば、消耗したまま魔神との戦いに突入。
魔神戦に備えて力を温存すれば、街の防衛が疎かになってしまう。
「アタシもツイてないわ〜。 レイきゅんを独り占めしようとした罰かしら…」
思わず呟いてしまった。
仮にセーラっちとリタ婆、3人体制でも結構厳しいであろう緊急事態。
「ま、無敵のデューレお姉ちゃんが……何とかしてあげるけどね!」
自らを鼓舞する様に、軽口を叩く。
空に舞い上がり、一番近い先頭の集団を目指す。
そして、先制。
「破滅の竜巻ッ!!」
嵐弓フェイルノートから放った矢が空中を廻る。
それは徐々に速度を増し、やがて突風を巻き起こしながら巨大な竜巻が発生する。
突風は更に大きくなり、そして巨大な竜巻に変わる。
「全部ッ…吹っ飛べぇぇッ!!」
先陣の怪物の群れに直撃する、巨大な竜巻。
ゴブリンやオーク達が渦に飲み込まれ、上空に吸い込まれて行く。
強大な風の力の前には、魔獣達も成す術なく巻き込まれる。
「次は、向こう側ッ…終焉の神嵐ッ!!」
別方向から進軍する群れに向け、間髪入れずに巨大な暴風をぶつける。
凄まじい嵐の直撃、吹き飛んでゆく魔獣達。
大災害とも言える風属性最強クラスの奥義。
人智を超えた大自然の持つ巨大な力。
それを同時に2つ、使用してコントロールする。
少しでも気を抜けば、気を失ってしまうほどに精神力を消耗する。
「アタシが絶対、守ってみせるから…リディマー」
無意識に、あの人の名前を口にしていた。
何故なのだろう…?
自分でも解らない。
リディマー・スカイディア。
先代の弓術士であり、アタシの叔父。
戦いの事、人間との交流、全部あの人が教えてくれた。
大好きだった初恋の人の名前である。




