離脱
私の所為だ…
私が貴女達を結界の外に出したからだ…
泣き崩れながら、泉の脇の草叢を掘り起こす。
そして全部で7つ、少女達の亡骸を埋めて墓を作った。
誰一人として、名前すら知らない。
何百年、何千年前も昔に存在した美しい少女達。
彼女達の人生はいったい何だったのだろう。
「みんな…、私のせいで…ごめんなさい、ごめん…なさ……」
泣いた。ひたすら泣いた。
名前も判らない少女達の為に。
それだけが、私に出来た唯一の弔いだった。
王都に続き、この場所でも…私は救えた命を犠牲にしてしまった。
王都での出来事は魔神や魔王軍による暴虐が原因だった。
多くの命を救えなかったのも、奴等がやったからだと責任を転嫁する事で心を保てた。
だが、今回は違う。
私が正義の味方ごっこをしなければ、この子達が無残な姿になって朽ち果てる事は無かった。
全て…私の責任だ。
怒りに任せ、ユニコーンが言っていた事を無視した結果である。
私の心はもう、完全に折れてしまった。
ローラン…
私、もう…駄目みたい。
リタを助けたら…全部終わりにするよ。
もう、戦えない…
私の心が受け止められる容量は、とうに限界を超えてしまった。
ジュワユーズ…
私には…君を使う資格は無かったみたい。
せっかく力を貸してくれたのに…ごめんね。
次はもっと強い人を選んでね…
そして、2ヵ月近くが経過した。
短くしていた髪も肩に掛かるまで伸びていた。
デュノー皇国へ向かう船に乗り、ようやく学問都市へと帰還。
その足で真っ直ぐにリタが待つ賢者の塔に向かう。
「セーラ様〜!ご無事で良かったです〜!」
ぬいぐるみの様なリタの使い魔が出迎えてくれる。
リタが動けなくても平気なんだな…
丁度良かった。
直接リタに告げれば、いろいろと揉めるのは目に見えている。
この子に全部お願いしてしまおう。
「これをリタに…。 それから、この剣も一緒に…」
「え…えぇ〜? セーラ様〜!?」
ユニコーンの角、そして…神剣ジュワユーズ。
「えぇ〜〜!これはセーラ様の大切な神剣では〜!」
「ごめん…。 私さ、もう戦乙女として戦うのは…無理みたい…」
慌てふためく使い魔にそれらを託す。
「リタの身体はその角で癒せる筈だから。 デューレとレイきゅんにも宜しくね?…それじゃ!」
「セ、セーラ様〜〜〜!?」
これで良いんだ。
世界を救うとか魔王軍と戦うなんて…私みたいな弱い子には到底無理だったんだ。
想いだけでは命の重さを支えきれない。
私には、そんな大きな器は無かった。
水の戦乙女セーラの物語は、これで終わり!
うん、我ながら頑張ったんじゃないかな。
これでも精一杯…頑張ったんだよ。
許してくれるよね、ローラン…
デューレとレイきゅんの事は心配だけど、リタが元に戻ればきっと大丈夫。
弓術士のデューレ、大賢者のリタ。
あの2人が居れば私なんて要らない。
さて、私はこれから…
この世界の何処かで、ひっそりと生きて行こうかな。
最初から…それくらいが丁度良かったんだ。
あれ…?
涙が出ている。何故だろう?
この2ヵ月、ずっと考えて決心した事なのに…
使い魔の叫び声を背に、私は逃げる様に塔を駆け下りた。
「さよなら…デューレ、リタ、そして…レイきゅん」
次回から、デューレ視点でのお話になります。




