後悔
ユニコーンの身体に巻き付けた水の鎖。
強く締め上げれば、いつでも四肢はバラバラに切断出来る。
そして、その角も。
「フン、この得体の知れない水の力…凄まじいものだね。 解った…君の言う通りにしよう」
もっと抵抗するものかと思ったが、意外にもあっさりと折れてくれた。
「先ずはこれを渡そう…」
ユニコーンが頭を振ると、その一本角から眩い光が放たれた。
その光の中から、まるでコピーしたかの様にもう一本の角が現れる。
「穢れを清める僕の力を一度だけ使える『ユニコーンの角』の複製品だ。 持って行くとよいさ」
ジュワユーズの剣先から水の鞭を放ち、その角をキャッチ。瞬時に手元に引き寄せた。
当初の目的は果たす事が出来たが…
「次は、この子達の洗脳を解きなさい!」
「そんな事をすれば、君はきっと後悔するよ」
此処で永遠に過ごす方が、よっぽど後悔する生き方に決まっている。
少女達は外の世界で、生きてゆくべきだ。
「もう一度言うよ。 解放すれば、君は後悔する」
「アンタのくだらないハーレムのせいで、この子達の人生が狂っているのよ!」
私はユニコーンを鋭く睨み返した。
何処まで独占欲が強いんだと、新たに怒りが湧き上がる。
私が後悔する理由なんて何も無い。
「いいだろう。 その愚かさを身を以って感じると良いさ…」
ユニコーンの呟きと共に、少女達の様子が変わった。
「え…?此処は…」
「私、いったい…?」
魅了による洗脳が解かれて意識が戻った様に見える。
何故この場所に居るのか、何をしていたのか、その戸惑いは隠せない様だ。
泣き出してしまう子もいる。
「みんな、もう大丈夫よ。 貴女達はユニコーンのせいで幽閉されていたの」
私がそう言うと、背後に居るユニコーンに怯え始める少女達。
それぞれが逃げる様に、私の背後まで駆け寄って来た。
「私がみんなを元の場所に帰してあげる。 だから安心して」
皆が顔を見合わせながら、そしてコクリと頷く。
状況が飲み込めたのだろう。
「全員が結界を出たら、水の拘束は解いてあげる。 じゃあね…バカ馬」
侮蔑の念を込めて、最後にユニコーンを一瞥した。
結界の出口である泉の外に歩んでいく少女達。
そう言えば、この子達の着る物が無い…
全裸でエルフの集落まで連れて行く訳にもいかないし…
そんな事を考えていた私は、自分の愚かさを知る。
ユニコーンが言っていた、後悔。
少女達が泉を上がった瞬間…
ある者はその瞬間、白骨化して崩れ落ちた。
ある者は一瞬にして、身体が萎みミイラと化して倒れた。
何が起こったのか…?
つい先程まで美しかった少女達は、全員が無残な亡骸となってしまった。
「え…?な、なんで…?」
私は膝を着き、ただ鳴咽する事しか出来なかった。
「だから言っただろう。 後悔すると…」
頭の中に響く、冷酷なユニコーンの声。
「結界を出た事で…数百年、数千年の時間が彼女達の身体に流れたのさ」
あ、あぁぁぁぁッ!?
私が…、私のせいで…!?
私の判断が、彼女達を殺してしまった。




