結界
国王の代理として、数少なくなった騎士や宰相に的確な指示を与えているサーテイン。
忙しなく動き回るサーテインを呼び止め、リタの身に起きた事の顛末を打ち明けた。
急ぎ、旅立つ準備も始めなければならない。
廃墟と化した市街には未だ行方不明者も多く、私だけが離れるのは心苦しい。
瓦礫の除去など、私の力が役に立つ状況も沢山有るだけに。
だが、再起不能となったリタの治癒はそれ以上に急務だ。
大賢者である彼女の力が無ければ、次の魔王軍との戦いは益々不利となってしまう。
これ以上、こんな悲劇を繰り返さない為にも。
誰を生かし、誰を見捨てるのか。
非情な取捨選択が必要だった。
綺麗事だけで、世界を救う事は出来ない。
どんなに強くても、全ての命を救う事は不可能なのだから…
エルフの森までの足として、馬を譲り受けた。
サーテインの計らいである。
消滅の魔神によって犠牲となった騎士の愛馬だ…
「セーラさん、どうかお気をつけ下さいまし」
「はい…皇女様も」
メアリ皇女とも別れの挨拶を交わす。
「ディノー皇国の皇女として、必ずこの街を復興させる事をお約束しますわ…サーテイン様と共に!」
魔神の蹂躙を目の当たりにしているにも関わらず、彼女は気概を見せてくれている。
これが正真正銘のお姫様なんだ…
私よりもずっと強いよ、メアリ皇女は。
そして、騎士団長のサーテイン。
「此度はセーラ殿が居なければ、誰一人として生き残っていなかった。 亡き陛下に代わって礼を言わせて貰う」
その労いの言葉が重たく感じる。
救えたかもしれない命の重さ。
英雄や救世主と呼ばれた人達は、いつもこんな重圧を背負っていたのだろうか?
サーテインは状況が落ち着き次第、メアリ皇女と一緒に皇国へと向かうとの事だ。
この先、この国を皇国が支配する可能性もある。
今はただ、この地に生きる人々の平穏が守られる事を祈るしかない…
こうして、私は王都を後にした。
馬を走らせる事、約10日。
ようやくエルフの森まで辿り着く。
森を彷徨い歩き、久しぶりにやって来たエルフの集落。
早速、族長と面会する。
事の次第を話し、聖獣ユニコーンの居場所について尋ねた。
「ユニコーンの居場所なのだが、この森の中なのだよ…」
驚きと安堵が入り混じる。
この森に居るなら、手っ取り早く済みそうだ。
此処に来るまでの10日ですら、時間の浪費が気になっていた。
攫われたレイきゅん、そして後を追うデューレの安否を考えれば尚の事である。
「しかし…ユニコーンは結界を張って、我々が立ち入れなくしている。 その結界へと入る方法なのだが……」
族長が教えてくれた、結界への入り方。
おかしいよ。
絶対に有り得ない…
リタは人間より知能が高いとか言っていたが、甚だ疑問に感じる。
聖獣じゃなく、淫獣って呼んでやりたい。
そして、翌日。
結界が張られているという森の最深部、泉が湧く場所へとやって来た。
溜め息混じりに、私は身に着けていた装備と衣服を脱ぎ始めた。
聖獣ユニコーンの結界に入る方法。
穢れなき処女が、一糸纏わぬ全裸となる。
そして、この泉に入る事であった…




