肉欲
「うりゃーーーッ!」
私の気合だけが空回りして、ローランから借りたミスリル製のショートソードが虚しく宙を斬る。
渾身の斬撃…の筈だった。
私の攻撃を軽く避けた巨大猪。
こちらに向き直して突進して来た。
私の顔面は蒼白になる。
動けない!
ああああッ!死ぬッ!死んじゃうッ!
その巨体が私を跳ね飛ばすと思われた刹那、背後で見ていてくれたローランが一瞬で巨大猪に蹴りを入れる。
ローランの蹴りだけで巨体は吹っ飛び、そのまま林の中へと逃げて行く。
「た、助かったよ…ありがと、ローラン!」
「怪我はないですか、セーラ?」
弱目のモンスター相手に特訓を申し出た私だったんだけど…もう、圧倒的にセンスがない。
元の世界でも体育は苦手だったし、部活は帰宅部。
身体を動かす能力なら、そこら辺の農民のお婆ちゃんの方が上だろう。
ローランが守ってくれてなかったら、私は今朝だけで7〜8回は死んじゃっていると思う。
「今日の所は街に帰りましょうか?」
「うん、残念だけどもう動けないかも…」
そう答えるより先に、ローランは私をお姫様抱っこ。
ああああーーッ!
今は汗臭いよ! どうして汚い時ばかり!
「顔も赤いですね…風邪を引いたかもしれないし、宿に直行しましょうか?」
ちょーーーッ!
私を抱き抱えたままローランは林を抜け、街へと向かうのだった。
うん、そりゃ嬉しいよ?
超絶完璧イケメンが、常に傍に居てくれるんだもん。
しかも、大陸最強の若き英雄で、伝説の聖戦士。
街の娘さん達に逆恨みされて当然、女の子なら誰もが羨む状況。
でもね……?
ローランは私を…何と言うか、恋愛対象としては見てくれてない。
ハイ、完全敗北〜!
まぁ、それはいい。それは仕方ナス。
ローランは私と同じ16歳、青春ド真ん中の健常男子。
つまりは…
こんな事をうら若き乙女が言うのも何だけどさ。
いや、敢えて言うよ…言ってやるよ!
心の中でだけど。
(ヤリたくって、溜まってるんじゃないのーーーッ?)
女の私ですら毎晩、隣の部屋に居るローランの事を思いながらそれはもう!
あ、それはどうでもいいですね。
ん?
んんん?
んんんんん?
お姫様抱っこされながら、私の瞳はきっと妖しく光っていたに違いない。
ローランだって澄ました顔してるけど、実はコッソリ…してるよね?
いわゆる自己発電…ってやつ。
間違いないよ、うん。
私には兄がいるのでその辺りは敏感なのだよ。
ベッドの下から妹モノのエッチなDVDを見つけてしまった衝撃は忘れてないからね、お兄ちゃん。
私はきっと帰れないけど、元気でいてね!
そう、私は今夜……自ら決行することにする!
ローランに夜這いを仕掛けるぜ!
セーラ…何故こうなった!/(^o^)\




