否定
「すまぬ、儂の落ち度じゃ…」
消沈するリタの声。
「ど、どうして…? リタもデューレも、いったい何をしていたのよッ!」
リタを責めたところで、どうしようもない事は解っている。
やり場の無い怒りが込み上げる。
「セーラ、お主も感づいておろう。 魔神自らが王子を攫った理由。 考えられるのは……」
勿論、解っている…
でも、それは想像したくない!考えたくない!
それだけは…!
「い…嫌だ。 私は…そんなの、嫌だよ…」
否定したい。
否定したかった。
「おそらく、王子が…魔王であるからじゃ…」
リタが絞り出した過酷な事実に、私は膝から崩れ落ちた。
嘘だ…
そんな事は無いよ、絶対に…無い。
唇がブルブルと震えている。
喉がカラカラになっている。
身体が、それを認めたくないと言っている。
「動揺しておるだろうが、もう一つ。肝心な事を知らせるぞ…。 儂は魔神に不覚を取り、現在は仮死状態になっておる」
「仮死…状態…?」
こうして会話をしているのに、意味が解らない。
「魔神の毒にやられたのじゃ。 あと数分で身体は溶けて無くなる。 そこで、儂は自分の身体の時間を止めた。」
魔神の毒…?
身体が溶ける…?
自分の身体の…時間を…止める?
リタの身体が危険な状態なのは理解出来た。
しかし、今こうして話をしているリタは何なのだろう?
「魔法も一切使う事は出来ぬ故、お主をこちらへ転移させる事も叶わぬ。 こうして会話をするのも、闇属性の微々たる力に過ぎないのじゃ」
転移が出来ない…?
それは、つまり…
デューレの後を追って、レイきゅんの救出に向かえない…?
「今はデューレを信じて任せるしかないのう…」
そうリタの言う通り、遠く離れた私もデューレを信じるしかない。
初となる魔王軍との戦いには勝利した。
しかし、戦略的に考えると完敗であった。
戦乙女は別の大陸に分断。
弓術士は単独で魔神を追跡中。
大賢者は再起不能。
そして、グロニア王国の崩壊。
一刻も早くデューレに合流しなければならない。
しかし、この混乱の中…デュノー皇国まで航海は可能だろうか?
私だけでなく、サーテインやメアリ皇女にしてもそうだろう。
グロニア王国が崩壊した今、ディノー皇国に援助を要請するのは急務であろうから。
「そこでじゃ、セーラ。 お主に頼みたい事がある」
「私に…?」
「そちらの大陸に生息する、聖獣と接触して貰いたいのじゃ。 儂の身体を解毒出来る方法は、それしかない」
聖獣…?
接触という事は、怪物や魔獣とは違うのだろうか?
「して、セーラ…お主、処女じゃの?」
「え?」
予想外の質問に固まってしまった。
聞き間違えただろうか?
「未だ生娘か、純潔を守っとるのかと聞いておる!」
リタの怒声に、私は再び固まってしまうのだった。




