無力
王都の城下街。
私が王城から出た時点で、凄惨な状況となっていた。
「向こうで怪物に襲われてる人がいます!」
「お母さんが!お母さんがいないのッ!」
「息子がまだ家に残ってるんです!お願い!何とかしてッ!」
戦乙女である私を見た街の人々が、次から次へと救いを求める。
しかし、私一人だけで捌ける筈も無い…
「直ぐに向かいますから、皆さんは城の中へ避難して下さい!」
それでも、そう答えるしかなかった。
街を駆け抜ける。
一人でも多くの命を救う為に。
炎に包まれる家の陰、喰人鬼の巨体が見えた。
即、水の鞭で胴体を真っ二つに両断する。
倒した喰人鬼の足元には、引き裂かれて散乱する子供の遺体があった。
「助けられなくて…ごめんなさい…」
呟きながら、再び走り出す。
何が…伝説の戦乙女だ…
何が…伝説の四聖人だ…
何が…ローランの遺志を継ぐ、だ…
私は無力だ。
目の前にある命すら…救えない。
神剣ジュワユーズを振るい、水流を作り出す。
噴き出す水流。
それは燃え盛る家屋を鎮火してゆく。
そんな私に、怪物が引き寄せられる様に集まり始める。
そうだ、狙うのは私だけでいい。
街の人達じゃなく、私だけに群がって来いッ!
そして、長い夜が明けた。
いったい、どれだけの怪物を倒したのか数え切れなかった。
煙の匂いが充満する、廃墟と化した街。
精一杯、やるだけはやった。
多くの命を救えたかもしれない。
それでも、多くの命を救えなかった。
怪物の気配も消えて、緊張の糸が途切れたからかもしれない。
私は、泣いた。
その場に跪いて、ただ泣く事しか出来なかった。
「助けられなくて…ごめんなさい…ごめんなさいッ!」
私の涙に同調するかの様に、雨が降り始めた。
「セーラ、聞こえるか?」
リタの声…?
何故か声だけが頭に響く。幻聴だろうか…?
「聞こえておるな? 今は儂の意識だけを飛ばしておる。」
「リタ…!私……私はッ……」
1日しか経っていないのに、懐かしさすら感じるリタの声。
それを聞いた瞬間、再び涙が溢れ出す。
「千里眼でそちらの様子は見えておる。お主はよくやったぞ…」
「でも…私はッ…!」
「自分を責めてはならん…。お主が居なければ、更に多くの人が死んでいた筈じゃ。」
リタの優しい声。
それでも、私には頷く事は出来なかった。
「それより、こちらでも深刻な事態が発生しておってな…」
「深刻な…事態…?」
リタの声が曇り出す。
「こちらにも魔神が襲来したのじゃ…」
私は絶句した。
2つの都市を同時に襲撃…!?
「幸い、街に被害が出る前に対処出来たのじゃが…、残念な知らせがある」
残念な…知らせ…?
「魔神によって、レイワイゼン王子が攫われた。デューレが行方を追っておるが……」
レイきゅんが…魔神に、攫われた…!?




