崩壊
「止めろッ! 止めてくれぇッ! た、頼むッッ!」
命乞いを始める慟哭。
見ているだけで、虫唾が走る。
「同じ事を言っていた人達を…アンタは…容赦無く消したよね…?」
次は両脚を膝下で切断。
やはり、一瞬にして切り離した脚も消滅する。
「グギャァッッッ! 痛え、痛えよぉッッッ!!」
泣き叫ぶその姿には、恐ろしき魔神の面影は無い。
「その程度で…済むと思わないで」
神剣ジュワユーズを振るい、一粒の水球を創り出した。
ほんの飴玉くらいの大きさ。
フワフワと浮遊する水球を、泣き叫ぶ慟哭の口の中へと運ぶ。
「フゴッ…な、何をしたぁッ!?」
水球は食道を通って、胃の中に入った。
そして、水球の内側から圧を高め…破裂させる!
慟哭の体内で小さな爆発が起こった。
それでも内臓はグチャグチャになっているだろう。
即死はさせない。
しかし、それは致命傷。
口からは大量の血を吐きながら、身悶えている。
最早、喋る事すら出来ないだろう。
その憐れな魔神の顔を覗きながら、私は言い放った。
「命を弄ばれる気分、存分に味わってから地獄に行きなさい…」
悶え続ける慟哭。
そして数分の後、事切れた。
その目は大きく見開かれ、顔は苦悶に歪んでいた。
(みんな、仇は討ったよ。どうか…安らかに)
こうして、消滅の魔神との戦いが終わった。
多大な犠牲と引き換えに…
しかし…
魔神の襲来すら、崩壊の序曲でしかなかった。
「外を見ろッ!…ま、街が…そんなッ!?」
生き延びた騎士の叫ぶ声。
身体を震わせながら、彼はバルコニーの外を指差している。
何があった?
急ぎ、私はバルコニーへ出る。
そこで見た街の光景、それは…
大量の怪物が破壊の限りを尽くし、街は炎に包まれていた。
虎獣人が暴れ回っている!
合成魔獣が人間を喰らっている!
巨大な多頭蛇が家を踏み潰している!
まさに、そこは地獄絵図だった。
逃げ惑う人々も、次々と怪物の餌食になってゆく…!
あまりにも衝撃的な光景に、広間では気を失って倒れ込む婦人もいた。
「生き残った騎士達は街の人々を城内に退避させよッ!」
サーテインの指示に、僅かな数になった騎士達が広間を出て行く。
「私も…街へ出ますッ!」
そう叫ぶと共に、私もバルコニーから飛び降りた。
水のクッションを瞬時に作り着地。
直ぐに炎に包まれる街に向けて走り出した。
魔神に気を取られ過ぎていた。
敵は魔神一人だけじゃなかったなんて!
まさか、魔王軍が動き出している…!?
早速と飛来して襲い掛かって来るガーゴイルの群れ。水の鞭でガーゴイルを破壊しながら、私は最悪の事態になっている事を確信した。
城下の街は怪物に蹂躙されている。
最強と名高き騎士団も、今や生存者は僅か数名。
そして、王と王妃は…もういない。
この王国は…崩壊した。
レイとローランの国は…滅亡してしまった…!




