退避
リタが前へと進み出て行く。
上空で飛竜を続々と撃墜するデューレも、それを見ると此方へ降りて来てくれた。
「お主らは出来うる限り、遠くに退避するのじゃ」
死亡フラグみたいな事を告げるリタ。
まさかとは思うけど…もしかして私達、かなりピンチなやつ?
勿論こんなやり取りしてる間にも、此処まで到達した飛竜を倒し続けているが…
このまま疲労困憊し、力尽きたら終わりになってしまう。
そう考えると確かにピンチかもしれない。
無尽蔵な数の飛竜をいつまで捌き切れるだろうか?
今ばかりは、修練でやらされたマラソンや遠泳に感謝するしかない。
まだまだ私のスタミナには余裕がある。
とは言え、レイきゅんを守りながら襲い来る飛竜を相手にするのは厳しい。
刺突メインの細身剣はこの様な乱戦には向いていないからだ。
とにかく、今はリタを信じて後退するしかない。
「レイきゅんはアタシが連れて行くわ!」
「お願い!」
陸を走る私より、宙を飛ぶデューレの方が圧倒的に早く退避出来るだろう。
彼女に任せた方が安心出来る。
レイきゅんを抱き抱えたまま、地上スレスレを滑空する様に飛ぶデューレ。
私はそれを追いながら、懸命に走る!
追撃してくる飛竜もかなり多い。
既にリタからは遥か遠くまで離れてしまった。
どんな魔法を使うのか…それとも属性の力なのかは知らないが、今はリタに任せるしかない。
ひたすら走る!
ひたすら逃げる!
飛竜の追撃が少なくなり、その殺気を殆ど感じなくなった。
軽く数キロは退避したと思う。
そろそろ大丈夫かなと、足を止める。
振り返った私が見た光景…それは!
空を埋め尽くしていた飛竜が次々と落下している…!
重力に逆らわず、地上にボトボトと落ち続けている。
まるで殺虫剤を浴びた虫が落下する様に…!
徐々に明るい青空が見え始め、そして数分後には飛竜の影がほぼ消えてしまった。
墜落した15万近い数の飛竜によって、渓谷にはこんもりと新たな山が出来ていた。
アレの全てが飛竜の死骸だと思うとゾッとする…
リタが私達を退避させた理由はこれだったのだ。
一斉に飛竜の巨体があれだけ降って来れば、逃げる術はない。
留まっていれば間違いなく全員が潰されて下敷きになっていただろう…
足を止めていた私の元へ、レイきゅんを抱いたままデューレが引き返して来た。
「リタお姉ちゃんは…?」
レイきゅんが不安そうに私に尋ねてくるも、答えられなかった。
あの場所に留まっていたリタ。彼女は、おそらく…
「儂が死ぬわけ無かろうが!」
そう言いながら、突然に背後に現れたリタ。
転移魔法だろうか?
いや、何よりも…無事だ!
怪我もしていない様だ。
「…結局、儂一人で全滅させてしもうたのう」
全員が無事だった!
良かった。ホントに良かった!
泣きながらリタに抱きつくレイきゅん。
リタも満更でもない様な、少し照れた顔を見せていたのだった。




