大群
死の渓谷。
ここ学問都市から遥か北西に位置する、いわゆる未開の地である。
魔獣が数多く生息する、超危険地帯。
足を踏み入れた誰もが、帰還すること無く消息を絶ってしまうらしい。
飛竜の群れ、そして大地を揺るがす巨大な大魔獣が蹂躙跋扈していると噂される禁断の地。
リタ云く…
おそらく魔王とは関係無いが、世界を救う英雄である四聖人としては一刻も早く対処すべき案件だそうで。
私としても水属性の力をもっと把握したいし、丁度良い訓練になるから大歓迎だ。
そして華麗な戦乙女の大活躍を見せつけて、レイきゅんをメロメロにしてやるもんね!
ちびっ子レイきゅんには、新しい質素な服も用意された。
これで多少は人目につく場所で連れ回したとしても、側から見れば従者にしか見えないだろう。
そして、大切な事を告げるデューレ。
「レイきゅんの事、悪い奴が狙ってるの。 だから、王子様なのは秘密にしなきゃ駄目。 お約束出来る?」
いつもの赤ちゃん口調ではない。
優しくて、そしてしっかりとした口調。
「うん、デューレお姉ちゃん! 約束する!」
そう言いながら、天使の笑顔をデューレに返すレイきゅん。
やっぱり旧知な分だけ、デューレお姉ちゃんの方が懐かれてるみたいだなぁ…
うーん、セーラお姉ちゃんは少しだけ悔しいかも。
リタの転移魔法で一瞬にして辿り着いた死の渓谷。
本来なら馬を走らせ続ける事、3週間は掛かるらしい。
未来のネコ型ロボットが使う便利な道具みたいだよね、転移魔法。
で…あっという間に転移した私達だが、いきなり衝撃を受ける。
それは、空一面を覆い尽くす飛竜の群れ、群れ、群れ…!
100とか200とか、そんなものではない。
数千…いや数万…もっと多い?
きっと王都に住む人の数より多いよ、コレ…
空が見えない規模の数。
それは全てが空飛ぶドラゴンの亜種。
テリトリーに突如として現れた私達を見るや、飛竜の一群が一直線にこちらに向かって急降下し始める。
獰猛な肉食である飛竜達は、我先に餌を確保しようと続々とこちらに向かって迫り来る。
レイきゅんは不安そうにデューレの腰に手を伸ばす。
「目測で…ざっと15万匹というところじゃな。一人当りノルマは5万じゃぞ!」
リタは慌てる様子もなく、淡々と言い放った。
普通なら絶望する状況なのかもしれないけど、そんな事は微塵も感じない。
むしろ数が多い分だけ、いろいろと試してみる事が出来そうでワクワクする自分がいた。
私は神剣ジュワユーズを構え、迫り来る飛竜の最初の群れを捉えた。




