幼化
「儂らと共に旅に出るからには、レイワイゼン王子に対してやっておくべき事があるのじゃ」
リタが相変わらず無表情なまま、私とデューレ、そしてレイの3人に話し始めた内容。
意識しないと忘れがちだけど、レイはグロニア王国の王子様。王位継承権を持つ次期国王である。
彼を勝手に連れ回すのは、私達にとっては良策ではない。
一国の王子を何の断りもなく、危険な旅に同行させるのは勿論なのだが…
一番の理由が『魔王の疑惑があるから』となれば大変な事になる。
彼の父である国王は引き渡しを要求するだろうと思われる。
おそらくは幽閉されるか、最悪の場合は処刑される事も有り得るかもしれないらしい。
実の息子である王子だろうと、国王は規律を重んじる。
何よりも騎士団長のサーテインを次期国王に推す声も大きいのが、更に拍車をかける要因だと。
で、リタが当の本人であるレイに告げたのは…
「お主がグロニアの王子じゃとは、誰も気付かない様にさせて貰うぞ。」
うーん、意味が解りません。
「あ、マスクとか仮面とか被せたりさせちゃう?」
「余計に目立つだけじゃろ!却下じゃ!」
デューレの提案は一発で却下された。
まぁ、当たり前だ。
仲間に謎のマスクマンがいたら、ちょっと嫌だ…
「じゃあ、どうしたいのよ?リタ婆は?」
「ふむ…。こうするのじゃ!」
何やら呪文を詠唱し始めたリタ。
ものの10秒程でそれは完了し、持っていた杖でレイを小突いた。
「痛てッ!何ですか…リタさ…ん!?」
直ぐに効果は現れた。
レイが縮んでゆく?
いや、違う!
顔立ちがだんだんと幼く…青年が少年に…
手や足も、華奢な子供のそれに変化してゆく。
ダボダボになった服の中から小さな顔を出すレイ。
彼は…子供になってしまっていた!
見た感じだと5〜6歳くらい…?
「これで良いじゃろう…。若年化の呪文で子供にすれば、誰も気付かない筈じゃろうて?」
まさか…こんな…!?
大賢者って、こんな事も出来ちゃうのか!
と、私がこの魔法に驚愕している横から…
「う、嘘!可愛いかった頃のレ…レイきゅん!」
デューレは子供になったレイを見るや、飛びついて抱擁してしまっている。
「レイきゅん!レイきゅん!あの頃のレイきゅん!」
ギュッとハグしながら、ひたすらに名前を呼んでいる。
次にレイの頬をプニプニと触ったり、髪をワシャワシャとやり出した。
更には、額や頬にチュッチュッとキスし始める始末である。
まさか、デューレって…ショタ?
にしても、やり過ぎじゃないの?
わ!股間を撫で始めちゃったよコイツ!
うわー。
引くわー。
流石は残念エルフ…やっぱ引くわー。
「やめてよ、デューレお姉ちゃん!」
「ん〜ごめんなちゃいね!レイきゅんがきゃわいいのがいけないんでちゅよ〜!」
この言葉遣いは昔にも使っていたんだろうか…?
レイが王族でありながら、斜に構えた不良みたいになった原因…多分、デューレだと思うぞ。
「ねぇ、デューレお姉ちゃん…?」
「どうちたのかな?レ〜イきゅん?」
「えっと…あのお姉ちゃん達、誰なの〜?」
え?…誰って…?
私とリタを見て、そう言ったけど…
「身体だけじゃなくての、記憶も子供の頃に戻っておるのじゃ…」
リタは唖然としている私にそう告げた。




