無情
レイ…きゅん…
昨日、別れの挨拶を交わしたばかりなのに。
私なんかの事を好きだと言ってくれた、ローランのお兄さん。
もし、彼が魔王だったら…
葛藤していた。
恋愛感情は無くても、良い友人が出来た矢先なのだ。
隣に居るデューレも愕然と目を見開いている。
「さて、儂ら3人パーティーの初任務じゃ。魔王に覚醒する前に、あの男を始末する」
え……?
始末……?
意味は勿論、解る。
魔王になる前に始末してしまえば、世界の破滅は回避されるのだから。
彼を、レイきゅんを…殺す…
手が震えている。
唇も震えている。
「ち、ちょっと!リタ婆ッ!アイツが魔王と決まった訳じゃないでしょ?」
「ふむ…違っているやもしれぬ。しかし…確証が無い限りは不安は取り除くしかないのじゃ…」
デューレの反論は一蹴されてしまう。
「良いか?我々には世界を救う使命がある。己を押し殺してでも覚悟を決めなければ…世界を救う事など出来ないのじゃぞ」
それは勿論、解っている。
でも、だからと言って…
何の罪も無いレイきゅんを…殺さなきゃいけない…
身体が小刻みに震えていた。
辛い修練の果てに戦乙女になった。
ローランの代わりに世界を救う為に。
それが…どうして?
何故、レイきゅんを殺す事になってしまうのだろう?
何故、私なんかを好きになったの?
それは絶対に駄目なんだよ…
私達は…貴方を…
殺さなくちゃいけなくなってしまうのに!
「感傷に浸るのは…事が全て終わってからにするのじゃ。どうする事も出来ない運命なのじゃ」
リタは宥める様にそう言い放った。
そして、私達3人の足元に魔方陣が浮かび上がる。
これは…知っている。
転移魔法!
「これより第1王子の元に転移する。用意は良いな…」
リタは強行したのだ。
用意も覚悟もないまま、転移魔法が発動してゆく。
どうしてこんな事に…
こんなの、私は望まない…
私は…レイきゅんを…殺したくない…
デューレだって同じ想いをしている筈だ。
俯いたまま、固く拳を握っている。
そして、無情にも転移魔法は発動した。




