欠落
恐る恐る階段を降りてゆく。
そこは整然とした、ごく普通の書斎。
頭の中で思ってた様な、怪しい実験が日夜行われている大魔法使いの家…みたいなものではなかった。
本棚なんてごく僅かで、テーブルの上も綺麗に整えてられている。
「……やっと来おったか」
私達に声を掛けるのは、部屋の中央にいる少女。
…うん?
少女…つか、小学生?
どう見ても…10歳くらいにしか見えないけど。
サラサラのロングストレートな銀髪。
この年代特有のあどけなさが残りながらも、整った美しい顔立ち。
お人形さんみたいで抱きしめたくなる。
ホントに綺麗な子だなぁ…と思わず見惚れてしまう自分がいた。
って、まさか?こんな小さな子が…?
「まったく、待ちくたびれたぞ?」
「お待たせ!リタ婆」
「婆はやめんか!儂は永遠に少女のままじゃ!」
デューレと会話し始める彼女。
どうやら2人は旧知の仲の様だ。
やっぱり…この子が大賢者!?
「初めましてじゃの、セーラ。いや、異世界からの巫女であり戦乙女でもある者よ」
唖然としていた私に語り掛ける少女。
しかも自己紹介は必要ないくらい、私の事も既に全部知ってるし…
「儂が大賢者のリタ・メルバじゃ」
「あ…はい!セーラです…。よ、宜しくです!リタさん…」
やはり…!この子が大賢者!
実際は果たして何歳なのか、ちょっと気になる…
「リタと呼び捨てで構わんぞ。お主よりも身体は歳下じゃからの」
「は、はい、それじゃ…リタ!」
「うむ…。ま、そんな事より…」
リタが眉間にしわ寄せながら、私にカツカツと近付いてくる。
「お主らは何故に、あの男を放っておいたのじゃ?」
いきなり何を言っているのだろう?
あの男…って、誰の事?
「リタ婆、何言ってんのよ?あの男っていったい…」
私より先にデューレが口を開く。
「昨晩、セーラに求愛した男がおるじゃろ!」
それって…レイきゅん?
昨日の事なのに、どうしてそんな事まで知ってるんだろう?
「お主ら、それでも四聖人か!馬鹿モノ共がッ!」
なんだか勝手に怒ってらっしゃるけど、何が何やら理解出来ない。
「巫女であるセーラよ、お主に求愛する者は…魔王であるやもしれんのだぞ!」
あ…!?
昔、ローランに教えて貰った魔王と巫女の関係。
忘れかけてたけど、私は巫女なんだ…
魔王と巫女は惹かれ合う…
私に好意を抱いて近寄る者は…!?
すっかり欠落していた。
自分の気持ちとか、そんな事ばかりで忘れていた。
でも、そんな…!?まさか…!?
私とデューレはハッとして互いに顔を合わせた。
まさか、レイきゅんが…!?
グロニアの第1王子、ローランの兄である彼。
彼こそが、魔王へと覚醒して世界を破滅させる者であるかもしれないのだから!!




