応用
「明日にも大賢者と合流して街を出るから。じゃあ、元気でね…?」
「ああ、またな。それから、絶対に死ぬんじゃねぇぞ?将来…セーラは、その…俺の嫁になるんだからな!」
「私は絶対に死なないよ…!あと、嫁にはならないと思うよ?」
「チッ…。いつかホントに抱いてやるからな?」
そう言われたけど、前と違って嫌な気はしないな。
何だろう?この感覚。
好意を寄せてくれるって解るのは、なんだか心がくすぐったい。
でも、ごめんね。
恋愛感情は全く無いから。
レイに別れを告げた翌朝、デューレと私は大賢者が居を構える高い塔へと赴いた。
街の何処にいても目に付く、例のスカイツリーと同じくらいに高くそびえ立つ塔。
通称はその名の通りに賢者の塔と呼ばれているらしい。
大賢者は最上階に居ると聞いた。
スカイツリーみたいにエレベーターなんて勿論無いから、歩いて階段を昇って行くしかない。かなり時間が掛かりそうな気がする。
気合いを入れて、塔の中に入ろうとしたのだが…
「チョイ待ち!せっかくだから、属性の力を応用して上に行ってみようか?」
デューレの提案で止められてしまう。
属性の力を応用…
いったいどういう意味なんだろう?
「例えば、私ならこんな感じで!」
デューレの身体を突風が包み込んだ。と同時に身体が浮かび始める。
「私の場合は風を身に纏って、鳥みたいに空を飛べるんだけどさ。セーラっちの場合はどうする?」
え?
私の場合…?
いやいやいや、風属性のデューレなら簡単かもしれないけどさ。
私、水の属性だよ?
どうやって空を飛ぶの??
うーむ…
で、すぐに思いついたのは…
クジラの潮吹きみたいなアレ!
水流を噴水みたいに下から出して身体をピューッと…
アレ?
私が出せるドラゴンを一撃で倒した水流って…
水流じゃなかったよね?凄い大奔流だった。
実行したら…人間ロケットじゃないですかー!?
もしも凄まじい勢いの中、バランスを崩したら…
あの高さから落っこちたら一巻の終わりだよ!
歴史上、最もマヌケな死に方をした戦乙女になっちゃうよ!
昨日レイきゅんに『私は死なない』って言った矢先、まさかの墜落死はアカンやつでしょ!
駄目!却下!
足りない脳味噌をフル回転!
考えよう…考えよう。
私の能力。
大気中の水分を凝縮して水を精製する。
それを自在に操って水流に出来る。
でも凍らせたりする事は出来ないので、氷を作って…みたいなのは無理。
うーむ、どうするべ?
「それじゃアタシ、先に最上階に行ってるね!早く来なさいよ?」
デューレはそのままヒューッと飛んで行ってしまった。
直ぐに点になって、もう辿り着いちゃったみたいだ。
ええぇーーッ?
置いて行かれたけど、どうしろと?
そもそも、水って…
エビ○ン…クリスタルガ○ザー…お風呂…洗濯…
私が持つ全ての知識をフル動員するも、繋がらない。
塔の入り口で腕を組んで悩む私に向け、通りがかる街の人々が物珍しく視線を寄せている。
む〜〜
トイレ…お掃除…プール…海…川…
あ、そっか!
解答に辿り着くまで1時間近く経過してしまった。
「なんだ、簡単じゃん!」
私は神剣を引き抜いて、遥か彼方の最上階を見据えた。




