後悔
無言のまま、2人が到着したエルフの集落。
そこに住むエルフ達からの視線を感じる。
誰もが驚いた表情を見せていた。
余程に人間が珍しいのだろうか?
その日は族長との挨拶だけで、魔獣討伐についての詳細は明日に改めて…という事になった。
騎士団長サーテインが来てくれなかったのは残念だったが、戦乙女が代理なら問題ないだろうと言われてしまった…。
先程のデューレと揉めた件もあり、私は塞ぎ込んだままだった。
客人用の部屋に通されると、そのままベッドに沈み込んだ。
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「デューレ、戦乙女の少女と何かあったのだな…?」
族長は娘であるデューレを書斎に呼び出していた。
「……うん。あの子…聖戦士の事で急に怒り出したんだ」
「……そうか」
族長はまるで全てを知っているかの様に、目を細めて娘を見た。
「実は…騎士団長殿から先に書簡を受けておってな。黙っているつもりだったが、お前には全てを知らせよう」
族長は語り始めた。
異世界からの巫女であるセーラ・ミズキ。
聖戦士に救われ、行動を共にする2人は互いに惹かれてゆく。
いつしか将来をも誓い合う仲となった。
そして、旅の果てで遭遇した炎の魔神。
恐るべき魔王軍3巨頭の一人。
長命であるエルフ達には、過去の魔神がもたらした忌むべき厄災の記憶が残っている。
その人智を超えた力は、四聖人全員が束になって挑んだとしても勝利するのは難しいだろう。
英雄と誉れ高い聖戦士だが、単身で魔神と戦う事は自殺行為に等しい。
しかし…聖戦士は絶望的な状況にありながらも、巫女セーラを無事に逃がした上で魔神をも打ち倒した。
自らの命を犠牲にして。
王都へと無事に逃がされた巫女だったが、その地で保護される事を拒む。
志半ばで散った愛する者に代わり、自ら戦う事を望む巫女。
主人を失った聖戦士の神剣もが巫女の想いを認め、共に戦う為に形状を変化させたという…。
国王は巫女セーラに神託が降りたとし、戦乙女へと育て上げる事を騎士団長に命じた。
地獄の様な訓練が行われた。
戦闘経験は全くない上、身体能力すら極めて低い巫女だが、一度も弱音を吐く事なく己を鍛え続けた。
正直、騎士団長は無理だと思っていた。
だが、巫女が挫ける事はなかった。
幾度も血反吐を吐きながらも、地獄の様な修練をこなし続けた。
神剣の加護もあってか、身体能力が上がってからの成長には目を見張るものがあった。
そして遂には、細身剣の扱いに於いてならば、サーテインですら息を巻く程の技術を身につけていた。
恐ろしいまでの才能の片鱗を見せ始めていた。
ここまで2年。
四聖人の一員となる為、必ず果たさなければならないのが魔獣討伐である。
そして、巫女セーラはエルフの森へと向かったのだった。
デューレは泣いていた。
セーラが怒った理由を知り、話を聞きながらずっと泣いていた。
「セーラ…あ…アタシ、なんて酷いことを…?」
特に悪気もなく、軽い与太話のつもりであった。
その一言が、セーラの心を深く傷つけた事を自覚した。
「ごめんなしゃい…ごめんなしゃ…セーラぁ〜!!」
エルフの美少女が顔をくしゃくしゃにして泣き喚く。
「デューレ、本人が居ない所で謝っても…その気持ちは伝わらないだろう?」
父である族長は、諭す様に娘に語り掛ける。
頷くデューレ。
彼女は涙を拭きながら書斎を後にした。
今迄の総集編的な話になってしまいました…




