修練
騎士団長サーテイン。
20代後半にして、世界最強と誉高いグロニア騎士団の頂点である団長に就く冷静沈着な美男子。
その剣の腕は大陸随一であり、数多くの魔獣征伐を果たしている。
その地位と将来への期待から、王国の貴族や地方領主達は皆こぞって自分の娘を嫁がせようと画策しているという。
ここ王都に於いても城内の兵士達は勿論、城下の民衆からも圧倒的な支持を得ている。
実はローランも彼に剣術を教わっており、言わば師範に当たる。
私がサーテインに教えを請うのは運命的にも思える。
だが、しかし…。
「セーラ殿…大変に申し上げ難いが、貴女は剣術を教える以前の問題を抱えている…」
(そんな事、解っている…!)
「正直言って、貴女が戦乙女となる可能性は限りなく低い」
(可能性とか関係ない…私は強くならなくちゃいけないんだ…!)
「改めて伺おう。 本気で…亡き殿下のご遺志を継ぎたいのだな?」
私は無言で頷く。
「それでは…今日から3ヵ月の間、王都の外壁周りを毎日30周走って貰う」
私は言い付け通り、毎日走り続けた。
時には倒れ、這いずりながらも走り続けた。
兵士や城下町の住人から、奇異の目を浴びながら。
最初は1日で3周しか出来ず、自分の体力の無さを悔やんだ。
少し前の私ならば、きっと半日で根を上げていただろう。
2ヵ月半を過ぎた頃、なんとか完走出来る様になっていた。
そして、3ヵ月が過ぎた。
それなりには持久力が付いたのだろうか?
「次は…王城の堀りの中に入り、毎日20周泳いで貰う」
水泳はスポーツの中でも特に苦手だったが、言い付け通りに泳いだ。
これも最初は力尽き溺れ、兵士に救われる始末だった。
それでも泳いだ。
お世辞にも綺麗とは言えない濁った水の中を。
兵士や住人達から『亡くなった第2王子の婚約者はおかしくなってしまった』と囁かれていた様だが、そんな事はどうでも良かった。
こちらも3ヵ月が過ぎた頃、なんとか完泳出来る様になっていた。
その次は馬術を3ヵ月。
更にその次は徒手格闘技を3ヵ月。
1年が過ぎた。
貧弱だった私の身体には、引き締まった筋肉が付いていた。
2年目に入り、遂に剣術の修練となった。
剣術というより、いわゆるフェンシングである。
神剣ジュワユーズの現在の形状である細身剣に合わせた刺突の技術を会得させる為、サーテイン自らが私を鍛えた。
剣術は1年にも及んだ。
普通の剣や槍、果ては魔法使いや怪物と対峙した場合の技術を徹底して叩き込まれた。
そして、あっと言う間に2年の月日が流れた。
私は18歳になっていた。
修練を始めてからというもの、動きやすい様に髪は短くショートにしている。
「いよいよ最終課題をして貰う。 単身で遠征しての魔獣退治だ」
サーテインは私に最後の鍛錬を告げたのだった。
世界観うんちく
セーラが走らされたのは王城ではなく王都、つまり都市部も含めた外周です。
その距離は1周が約5km、×30周ですので毎日のノルマが150kmとなります。
日本の地理に換算すると東京〜茨城の日立市までを毎日走り続けた事に…そんな馬鹿な!
愛の力って偉大ですねー(棒)




