遺志
「…ローランは、ローランは…ううッ…」
泣きながら言葉に詰まっている私を、騎士団長サーテインは黙って見続けている。
嫌だ…
ローランが死んじゃったなんて、声にしたくない…
涙をボロボロと流しながら、真っ白なシーツを見つめる事しか出来ない。
「これは貴女が持っておくと良いだろう。 神剣ジュワユーズは既に光を失ったなまくらな剣に過ぎない」
突然、サーテインはベットの上に神剣をそっと置いた。
神剣ジュワユーズ。
ローランが持っていた頃は眩いばかりの光を放っていた。
主人を失った今、その輝きは失われている。
私は恐る恐るジュワユーズを持ち、そして抱きしめていた。
大切な、大切だった、ローランの形見。
ローランはどんな経緯でこの神剣を手に入れたんだろう。
私が知らない頃のローランをジュワユーズは知っているんだね…
その瞬間だった。
ジュワユーズが眩いばかりの光に包まれてゆく。
そう、まるでローランが持っていた頃と同じ様に…
サーテインは何も気付いていない。
おそらく、私にしか見えていない光。
「ジュワユーズ……」
私は思わず神剣の名を呟いていた。
優しくて、温かな光。
貴方の主人と同じ温かさを感じる。
聞こえてくるのは神剣の意志。
そして、私は理解した。
神剣ジュワユーズはローランの遺志を継いでいるんだ。
魔王を倒したいと思っているんだ。
そっか…
君も悲しかったんだね?
君も悔しかったんだね?
ローランが魔王を倒す事が叶わなくて。
ジュワユーズ、君も私と同じだったんだね?
ごめんね、君の気持ちも解ってあげられなくて。
こんなんじゃ、ローランに怒られちゃうよね。
そして、ローランの代わりに私に言ってくれているんだね?
いつまでも泣いていては駄目だと…!
「サーテインさん。 ローランと一緒に旅をしていた私が見た全てをお話します」
神剣を見つめながら、私はそう口にしていた。
「私は…セーラ。 セーラ・ミズキ。 異世界から来た…巫女なんです」
私が名前と巫女である事を伝えると、サーテインは愕然としていた。
「な、何と…!?……今直ぐに国王と面会して頂きたいが、宜しいな?」
「はい…」
(ローラン…私、ジュワユーズと一緒に…貴方の遺志を継ぎたい…)
新たな決意が私の中に生まれていた。
世界観うんちく
神剣ジュワユーズ
世界を救う意志を持つ者にのみ扱う事が出来る伝説の剣。
神殺しの魔槍の一部を使って鍛えられたと伝えられている。
魔神すら容易に切り裂き、主人によってはその形状をも変えていたとの伝承もある。
(元ネタは有名な英雄譚からで、ルーブル美術館に実在する伝説の剣です)




