決別 (side : デューレ)
「な…! こ、これって……」
同じくヨーミンも、目の前の光景に言葉を失った。
広間の中央に鎮座するのは、巨大な氷の塊。
そして、その中に…。
レイきゅんが居る…!
氷漬けにされて、目を見開いたままの姿で動かない…小さな王子。
「……早かったわね?」
氷塊の背後から姿を現した女。
白いドレスローブを纏った青いロングヘア。
妖艶な雰囲気を漂わせる美女だが、圧倒的な悪のオーラ的なものを感じる。
「氷の魔神…白夜…!」
ヨーミンの呟き。
奴が現在の魔王軍を指揮する首魁、氷の魔神…!
そして、ゆっくりとヨーミンに近づいて来る白夜。
「月影を倒したのね? 足留めも出来ない役立たず…まぁ、死んで当然ね…」
実の妹の死に、まるで他人の様な態度を見せる白夜。
「さて、黄泉ちゃんと…それから、姿を隠しているエルフさんも出て来て頂けるかしら?」
アタシの存在に気付いている…?
精霊の力は確実に働いている筈なのに?
得体の知れない白夜に対し、アタシは動揺を隠せなかった。
レイきゅんが氷漬けにされている現状、そのまま奪還する事は出来ない。
今は言われた通りに従う他、手立ては無い。
アタシは精霊の加護を解き、ヨーミンの横に姿を見せたのだった。
「あの子を解放しなさい…!」
「それは無理な相談ね。お気付きだと思うけれど、レイワイゼン王子は魔王閣下の因子を持っているわ。 覚醒なさる迄の間、動けない様にさせて貰っているの…」
やはり、レイきゅんが魔王……!
三巨頭の魔神が自ら攫った事から、薄々と感づいてはいた。
しかし、こうして魔神の口から真実を述べられた以上、否が応でも受け入れるしかない…。
「さて、黄泉ちゃん…? 貴女は予想以上に働いてくれた。 四聖人に上手く取り入り信頼させ、そのエルフさんを此処に連れて来てくれるなんて、実に素晴らしいわ…。 念願の三巨頭に昇進させてあげても良いわよ?」
「そ、そんな…!? 違います、デューレさん!」
ヨーミンが寝返ったのも、策略だった…?
訳がない。
昨日今日だけの付き合いに過ぎないが、はっきりと断言出来る。
「解ってる。 ヨーミンはそんな子じゃないって知ってるわよ…?」
リタ婆が信じた彼女を、アタシも信じる。
アタシの返事に涙を浮かべるヨーミン。
「有難う…ございます。 デューレさん!」
「感謝ついでに、後でおっぱい揉ませて?」
「それは駄目です」
いつもの調子が戻った。
下らない心理戦など、アタシ達の絆の前には効果は無い。
「残念だわ…黄泉ちゃん。 本当に私達を敵に回すつもりなの?」
「当たり前だッ! 僕はもう…魔神じゃない!」
力強く、過去の自分に決別したヨーミン。
名実共に今、ヨーミンは魔神である事を捨てた。
アタシ達の仲間になる事を選んだのだ。
「行くよ、ヨーミン…?」
「はい、デューレさん…!」
ヨーミンは大剣を、アタシは2対のオリハルコンナイフを構える。
作戦は変更、この氷の魔神を倒してレイきゅんを救出する。
奴を倒せば、巨大な氷塊も消える筈だ。
氷属性とは相性が悪いのは承知の上である。
アタシとヨーミンは疾風の様に挑み掛かるのだった。




