反応 (side : デューレ)
皇国の首都から程近く、現在は使われていない古い砦。
馬を使えば僅か数時間の距離でしかない。
こんな目と鼻の先に魔王軍の拠点があったとは…!
まさに灯台下暗しだ。
デュノーの皇帝が知ったら卒倒するかもしれない。
合流して共に戦う事になった斬撃の魔神、黄泉ことヨーミン。
彼女の案内で砦に侵入する事となった。
レイきゅんの居場所を示す石も、やはりこの砦に反応している。
つまり、この中にレイきゅんが囚われている…!
先の不死の王の軍勢との戦いに於いて、ヨーミンが街の防衛を担ってくれていた。
奇跡的に犠牲者が出る事が無かったのも、実は彼女の活躍が有ったからだ。
その事実を知ってから、彼女に対するアタシの疑惑は完全に払拭した。
「ねぇ…ヨーミン、もう一度おっぱい揉ませて?」
「僕、デューレさんって…もっとこう、クールな人だと思ってました」
「人は見た目だけで判断しちゃいけないのよ?」
アタシは猫を被るのも辞めた。
これからは素直にヨーミンと向き合う。
彼女が魔神だろうと関係ない。
「リタ婆には内緒にするからさ…揉ませて?」
「駄目です! そんな事より侵入を開始しますよ?」
この子にならアタシの背中を預けられる。
単身で魔神達と戦いに挑むよりも遥かに楽になる筈だ。
新たな仲間として。
そして、ヨーミンから聞いた敵の内情。
その首領格こそ、魔王軍三巨頭の内の二人。
一人は氷の魔神である白夜。
おそらくレイきゅんを攫ったのは白夜だと思われる。
もう一人が消滅の魔神である慟哭。
この慟哭がグロニア王都の襲撃に向かったらしい。
現時点でこの砦に戻っているならば、それ即ちセーラっちが敗北しているという事になる。
(セーラっち…アンタ、ちゃんと生きてるわよね?)
更にヨーミンと同レベルの魔神が他にもいるのは間違いなさそうだ。
魔神は単独での行動を命じられるため、ヨーミンも他の者については殆ど知らないらしい。
ヨーミンが知るところの魔王軍に関する情報は、残念ながらこれだけだった。
風神の矢の色は未だに戻っていない。
即ち、呼び出すのは不可能。
今回の戦いでの切り札とは成り得ない。
毎回、無理と無茶と無謀が三拍子揃っている。
そんな戦いばかりを強いられる運命を呪いたくなる。
と…文句を言っても解決はしない。
だったら、さっさと終わらせちゃうわよ!
砦の外壁にある物見台には人影は無い。
エルフの聴覚でも気配や物音は感じない。
筈だった…。
突如、アタシの影から現れた敵!
咄嗟に身を躱そうとするも間に合わない!
その手に握られた小太刀は、アタシの喉元を確実に捉えている…!
リタ婆をやったのは…コイツ!?
瞬時にアタシは理解した。
気配も殺気もないまま、影に忍び確実に仕留める暗殺術…!
万事休す。
ミイラ取りがミイラに。
「やらせないッ!!」
敗北を覚悟したアタシに突きつけられた小太刀を、ヨーミンの大剣が阻止していた。
「チッ! どうしてオマエは反応出来るんだよぉッ?」
飛び退いた敵がヨーミンを睨みつける。
「大丈夫ですか、デューレさん!」
「ありがと、助かったわ…」
愛用する2対のオリハルコンナイフ、デスペラードとイントルーダを抜きながらヨーミンに礼を告げる。
しかし、いったいどんな技なのか?
このアタシが全く反応出来なかった…?
あの魔神、べらぼうに強い…!
そして、それに反応出来たヨーミンも…!
「まぁいいや…。 オマエ達は此処で始末する! 影の魔神たる月影が殺してやるよッ!」
アタシ達の前に立ち塞がった影の魔神と名乗る敵。
ヨーミンと同じく女の魔神だ。
その手の小太刀が妖しい輝きを放っていた。




