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勇者レベル1、経験値より筋肉を求む  作者: 倉矢あきら
第5話「30日目」
31/49

キャラクターシート

 名前:トキナ

 性別:男

 身長:169センチメートル

 体重:56キロ

 レベル:29

 戦闘職:刀剣士

 所持スキル:

 抜刀術の心得、隻眼の見切、風太刀(ソードライン)二閃(ダブル)風動(ストリーム)、???

 備考:勇者の適正あり。高い戦闘能力。孤独を好み、協調性に欠ける。


 名前:コニカ

 性別:???

 身長:158センチメートル

 体重:???

 レベル:6

 戦闘職:魔法使い

 所持スキル:

 火の呪文、強欲な左手

 備考:浪費癖。華やかな容姿。


 名前:ミノル

 性別:男

 身長:171センチメートル

 体重:89キログラム

 レベル:17

 戦闘職:商人

 所持スキル:

 商人の心得、鑑定眼、魔法の地図、魔法の荷袋、???、???

 備考:商才あり。異常な食欲。野心家。商人ギルドへの多大な影響力をもつ。


 名前:タクマ

 性別:男

 身長:167センチメートル

 体重:67キログラム

 レベル:1

 戦闘職:剣士

 所持スキル:


 備考:勇者の適正なし。 』



 几帳面にわけられた灰色の髪。

 清潔な白の手袋をはめて、書類を一枚ずつめくる細いゆび。

 するどく光らせる切れ長の目。


 上級神官ノクトンが読んでいる書類は、召喚者調書(キャラクターシート)と呼ばれていた。

 エルマリートたち下級神官のまとめた30日目時点での勇者たち4人分のデータが記されている。


 しかしこの場に、どうして自分以外の下級神官がいないのか。

 エルマリートは特別に褒められるものと思っていた。

 なにせ勇者たちの身長、体重についてはタクマの観察眼を参考にさせてもらっていたからこそ、集まった詳細なデータなのである。


 調書への貢献度でいえばダントツだろう。

 だからこそ、いつものようにノクトンから叱責させるはずがないと余裕で構えていた。


「まずスキルの情報収集については君の1年後輩であるテッサーによる貢献が大きい。彼女を見習い精進するように」


「えっ……あ、はい」


 エルマリートの期待はいきなり裏切られた。

 この間の試験によって中級神官への精進が確定している、後半の名前がよりにもよって出てきたのだ。

 さすがに落胆を隠せないでいると、ノクトンが咳払いする。


「しかしながら君の独特な感性によるものの見方から、微量ながらなにか得るものがあるかもしれないと私も考えた。そこで勇者それぞれについて君の意見を聞かせてほしい」


「は、はい!」


「まず勇者トキナについて。聞くまでもないだろうがどう思ったか、率直に述べてくれたまえ」


 チャンスである。

 ひっかかるところが無くはないが、エルマリートは必要とされていた。

 ここで点数を稼いでおけば、後輩のテッサーに追いつくことも可能だろう。

 まずトキナについての正直な印象を、彼女はノクトンへ伝える。


「あの方は、魔物を倒しレベルを上げることへの執着心があるようですね」


「正義感や救世主願望ではないと?」


「あの、……その行為自体を楽しんでおられるというか……トキナ様は他者との関わりを積極的に持とうとする方ではありませんでした。この世界自体には感心がないようです」


「しかし、テッサーの報告書によると最近では同行者がいるようだが」


 エルマリートもそれ以上はなにも言うことがない。

 トキナのことは何度か見かけたが、いつもひとりきりでいた印象だった。

 そして初対面のときに見せた、あの鋭利な目つきと他者への拒絶反応。

 もし仲間ができていたのなら喜ばしいことだが、そんな姿は想像できなかった。


「つぎは勇者コニカについて……君は彼女と親しいようだが」


「はい! コニカ様は明るくて可愛くて素敵な人です! わたしとも同性の友達のように接してくれています」


「近しい間柄だからこそわかることは、なにかないかね?」


「そうですね……特にタクマ様ともあの方は仲がいいようですが。仲がいいというより、友達以上、恋人未満みたいな……いえ、わたしったらなにを言っているのでしょうか」


 コニカについては勇者4人の中でもいちばん長い時間を共有していた。

 だがその大半は市場での買い物に終始し、そういえば深く知っているといえるほど捉えられていない。

 いっしょに過ごしていても、本心は深いところに隠されていたのだろう。


 そんなコニカだが、勇者タクマのことになると感情の機微を表に出すことがあった。


「勇者ミノルについてだが、どうだ」


「はい。あの方はすごいです。市場で『うまいん棒』という軽食を売る屋台を出されておりましたが、それが若い女性に大ウケしています。戦っている姿は見かけなかったですが……思ったよりレベルが高いんですね」


「報告書によるとここ最近は活動拠点を南へ移していたようだ。移動のため、魔物との戦闘が避けられなかったと考えられる」


 さらには商人たちの組合、商人ギルドへも積極的に顔を出していたようだ。

 たしかに屋台も気づけば売り子を雇っていて、本人がいたことは滅多になかった。

 かなり忙しく活動していたらしい。


「私の見立てでは勇者トキナ、勇者ミノルの2名はこの30日目を問題なく乗りきるだろう。勇者コニカに関しては、模擬試合の相手になる勇者ミノル次第だが……残らなくても不思議ではない」


「はあ、でしたらタクマ様のお相手はトキナ様なのですか」


 エルマリートもそんな気がしていた。

 もし自分が女神ならば、比較対象としての組合せはそれ以外にあり得ないだろう。

 剣士と剣士。

 勇者レベル1とレベル29。

 最低と最高。

 もしふるいにかける必要があるのならば、他のどの組合せよりも単純明解だった。


「君への要件は以上だ。ご苦労だった」


「ちょ、待ってください……タクマ様のことをまだなにも」


 するとノクトンは書類をまとめ終えて、有無を言わさぬ剣幕でこちらを睨む。


「どうせいなくなる勇者のことなど聞いてどうなる? さあ、試合の準備があるから君は退室したまえ」


「で、ですが……」


「二度は言わない。君にも己の役割があるだろう、自覚したまえ」


 なかば閉め出されるような形で、エルマリートは部屋を出た。

 けっきょくなにも言えなかった。

 本当はタクマについてなにを思っていたのか。


 ただ、今が言うべき時ではないのだろう。

 試合がはじまれば、おのずとそれは証明されることなのだから。

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