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四話

 人里へ向かい、森の中を歩く俺とベルゼ。

 人気のない森の中、煙のにおいを頼りに歩みを進めた。

 すると、自然のにおいの中から獣とは違うが、まるで獣のようなにおいを漂わせる何かが森の中からこちらへと近づいているのがわかった。


「ベルゼ」

「ああ。こりゃ山賊かなんかだな」


 触角をひくひくと動かし、俺と同じ物を察知したであろうベルゼ。


「まだ、こちらの様子を窺っているようだな」


 なるほど。だから近くまで来ているのに出て来ないのか。


「気づかれてるのに笑えてくるな。人間はバカで面白い」


 くつくつと笑うベルゼを横目に、俺は山賊を警戒しつつ歩みを進めた。

 煙のほうへ進んでいく俺たちを山賊達は静かに追ってきている。

 しばらくして、開けた場所に出た。そこへ、ずっとついて来ていた山賊達が姿を現す。行く先からも現れたことから、どうやらここが彼らの狩場なのだろう。


「へへへ。兄ちゃんよぉ。こんな人気のない森の中を()()()うろついていると危ねぇぞ?」


 ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべる山賊達。

 ()()

 ふと、疑問に思いベルゼの方へ視線だけを向ける。そこにはくつくつと笑っているベルゼがいた。


「今オレはやつらには見えないように魔法をかけているからな」


 ベルゼはこの状況が面白いのか変わらずくつくつと笑い続けた。

 なるほど、魔法か。

 便利なものだな。

 暗に一人でやれと言うことなのだろう。


「はあ…」


 初の対人に少しの緊張と、手伝う気のないベルゼに思わずため息が出てしまった。

 一歩。

 それだけでいい。その一歩で前から現れたガタイのいいリーダーらしき男の前へと移動する。


「は…?」


 男たちは俺が移動したのを目で追えていなかったのか、今目の前にいる男に関しては間抜けな声を漏らした。

 そんな男に、アイスピックのように鋭く変形させた右腕を顎下から脳天へと貫通させる。

 男は白目を向いてしまう。

 腕を戻すと、丁度指先が顎の下に来るように戻った。

 それと同時に、支えがなくなった男は地面へと吸い込まれるように倒れる。


「ッ!?」


 周りを見回すと山賊達がニタニタ顔をやめ、冷や汗を流し警戒をしていた。

 次に近い男の所へ瞬時に移動し、手刀で首を落とす。

 初めての対人だが、人と言うのはこんなにも脆いものだったんだな。


「範囲攻撃でもしてみたらどうだ?」


 さっきいた場所から一歩も動いていないベルゼから声が届く。

 範囲攻撃か。

 魔法と言うものを使ってみるか。

 俺は領域内でベルゼから教えられた通りに魔力を引き出して右手に集める。


「おい! 今だ!! 魔法を使われる前にやっちまえッ!!!」


 一人の山賊の声に、ほかの山賊達が同時に襲い来る。

 だが、もう遅い。

 俺は集めた魔力を掴むように拳を握り、地面へと叩きつける。

 するとどうだろう。俺へと飛び掛かってきていた男たちの腹を地面を媒介に生えた棘が貫いた。

 この魔法は地面の形を変えて攻撃する魔法だ。

 範囲はそこまで広くはないものの、範囲内にいて俺が認識しているものを対象にすることが出来る。

 なので、指示だけを出した男も、周りにいる男たち同様に貫かれている。


「ハラショー! 魔法も使えた良い対人戦だった」


 ぱちぱちと拍手をしながら近づいてくるベルゼ。

 前にもこの光景を見たな。


「さ、マズそうだが食おうぜ」


 ベルゼは棘に貫かれた男の一人の胸の部分を手で貫くと、そこから心臓を抜き出した。


「人間は生物としては弱い部類だからな。能力だけを得るのならば心臓だけを食えばいい」


 そう言うと、ベルゼは人間でいう口の部分に心臓を持っていくと、その場所が割けるように開き、持って行った心臓を投げ入れ咀嚼を始めた。

 ハエ頭だからストローの部分で吸い取るのかと最初は思っていたのだが、ベルゼの食べ方は液状の魔物以外はこの方法しかとらなかった。


「なんだ? オレがこっちの口で食わないのが不思議か?」


 俺の視線に気が付いたのかベルゼはくつくつと笑いを溢した。


「こっちのストローで食ってもいいんだがな。せっかくの人型だから咀嚼して味わいたいのさ」


 そういうものか。

 相手は悪魔だ。こちらの常識は通用しない。そう思っておくことにした。


「くくく。やっぱ不味いなこいつら」


 不味いのにくつくつと笑うベルゼ。

 さて、俺も試してみよう。

 俺も近くにいる男の心臓を抉り出し、少しの躊躇いと共に俺は心臓を口にする。

 口の中に広がる鉄の味。まるで肉汁たっぷりのハンバーグを食べているように血が口の中で弾けた。

 美味いか不味いかで言えば不味い。だが、鉄のような味の中に不思議な甘えみがあった。


「なんだこれ?」

「お? 甘さでもあったか?」

「ああ」

「当たりじゃねぇか。それは魔力の味だ」

「魔力…」

「ああ。そいつは他のやつより魔力が多かったんだろうな。オレたちみたいな魔のモノは魔力がそのまま力になる。魔物同士で戦い食うのは相手の魔力を奪っているのと同義だな。それがわかりやすいように甘味になっている。だからそうだな。魔術師とか魔力の多い人間の心臓は凄い美味いぞ」


 口?端から血を垂らしながら教えてくれた。


「俺は人間だがな」

「くくく。あれだけ魔物を食い荒らしておいてよく言うぜ。それにオレと契約した時点でお前はもう人間じゃねぇ。人間だったとしたらそもそも魔物を生で食うなんてことは出来ねぇしな」


 契約した時点でか。

 確かに、領域内では調理なんてしたことはないからな。普通の人間ならば腹を壊すだろう。


「まあいい。とりあえず全部食うか」

「ああ。そうだ。そんなこと気にせず食え。お前の目標の為に強くなれ」

「お前の目標のためでもあるがな」

「くくく。それもそうだ」


 俺たちは笑い合い、そして山賊達をすべて食した。


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