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三話

 犬の死骸を食べた後、俺の身体に変化が現れた。

 欠損していた右足が生えたのだ。


「これは・・・」


 だが、人間の足ではない。

 今しがた食べた犬の足。俺の体格に合わせた大きさではあるが、確かに先ほどの犬の足だ。

 筋肉質でツルンとした体疲。

 人間ではないその足。


「ククク。滑稽な見た目になったな」


 愉快そうに笑うベルゼ。


「力を奪うってこう言う?」

「いや、実際は喰った相手の力を全て奪う物なんだが、今回は欠損部位があるからその補修も行ったんだろうな」

「だからってこれは・・・」


 犬だぞ?


「お前がどんな異形になろうと目的は変わらんだろ。それに人間よりもモンスターの方が身体能力やその他諸々が強ぇ。デメリットは見た目だけだ」

「だが、これだと人前に出れねぇ」

「ククク。この神の領域には偽装の能力を持ったモンスターもいる。そいつを食えばいい」

「偽装で見た目を人間に偽装するのか」

「そう言うこった。まぁ復讐するためにここを出なきゃならねぇ。そのついでにここを食い荒らしてけばいい」

「そうだな。一先ずは狩りやすいモンスターで力を手に入れる」

「賛成。お前に死んで貰うとこちらも困るしなぁ」


 ククク。と笑いながら言うベルぜ。

 腹ごしらえも終わり、早速領域内を探索することにした。


「リンドウに丁度良いと言ったら、お前を食い殺そうとしていたあの狼だな」

「ならまずはそいつらを食い殺して力を得ないとか」

「最初だけは手伝ってやろう。悪魔からのサービスだ」

「大サービスだな」

「ククク。そうだろう?」


 俺たちは小さく笑いあい、犬を探して部屋を移動した。

 目が覚めたあの部屋から出た後、ベルゼの案内であの犬が群れている場所を見つけた。


「量が多いな」

「まあ、ここがあいつらの住処だからなぁ。んじゃ、まずはオレが大半を殺してやる。残ったのをお前がやれ」

「わかった」


 俺が頷いたのを確認したベルゼは単身で犬の群れの中に向かった。

 ベルゼが来たことに犬たちは一斉の警戒の色を見せる。

 次の瞬間だった。警戒していた犬たちの大半が突如として倒れたのだ。

 ベルゼに動きはなかった。何をしたのかわからない。


「さぁ、次はリンドウの番だ」

「・・・ああ」


 ベルゼにそういわれて、俺も構える。

 その構えは傍から見ればど素人。ただの高校生だった俺に武道の心得も無ければ戦闘の経験もない。

 だが、殺す。絶対に殺す。殺して食い、あいつらも殺す。

 以前こいつらに殺されそうになった時手に入れた短剣を片手に、俺は一歩前へ踏み出した。


「ッ!?」


 狙った相手の前まで一瞬だった。

 驚くのは後にしよう。

 犬の前まで来た俺はその首に向けて短剣を突き刺す。

 一匹目が殺されたことにより他の奴らが一斉に動き出した。

 俺を囲うように広がった奴らは駆け出す。

 最初に襲い掛かってきた一匹を顎の下から短剣を突き刺し、振り払う要領で横から来た奴に投げつける。


「クッ!?」


 後ろから来た奴に肩を食いつかれてしまった。

 が、左肩と言う丁度いい位置を噛みついてくれた。

 俺は短剣を逆手に持ち替え、食いついている犬の脳天に短剣を突き刺した。

 最後に残った奴が前から来たので屈んで腹に短剣を刺す。


「はぁ・・・はぁ・・・」


 凄い。

 一匹食っただけでこんなに強くなるのか。


「ハラショー! 凄いなリンドウ。初戦闘でしっかりと力を使えているじゃねぇか」


 拍手をしながらこちらに近づいてくるベルゼ。

 俺は息を整えて向き直る。


「食うだけでこれ・・・なのか?」

「身体能力と反射神経はな。元より戦闘の才能があったんだろうよ」

「そう・・・なのか」

「ああ。さ、食事と行こうぜ」

「そうだな」


 ディナーと行こう。

 今が夜かどうかは置いておいてな。









 俺がこの神の領域に飛ばされてからどれくらい経っただろうか。


「久々の外はいいな」

「そうかぁ? オレからしたら神の力の満ち溢れていて気持ちが悪いがなぁ」


 俺たちは領域の出口にたどり着いた。

 相変わらずハエ頭であるベルゼと腕と足が人間の俺。

 ここにいる間、俺たちは領域内のモンスターを食い荒らした。

 満腹の日々を送り、ついに俺たちは領域から脱出した。


「ベルゼ。お前もしかしなくても出口の場所知ってただろ?」

「さぁて、どうだろうなぁ?」


 ククク。と笑いを溢すベルゼ。


「悪魔め」

「だが、強くなれたろう? 感謝してもらわんとなぁ」

「はいはい。ありがとよ」


 軽く流す俺を見て楽しそうに笑うベルゼを無視して森の中に歩いていく。


「次はどうするんだ?」

「まずは人里に向かう」

「ほう?」

「力の強いやつを見つける」

「ほうほう」

「食う」

「お前に人が食えんのか?」

「奴らを食い殺すときに躊躇いたくないからな。慣れとくべきだろ?」

「お、それもそうだ。よぉし、んじゃ人里に向かおうじゃないか。そうさなぁ。・・・こっちの方角から人間の臭いがする」

「犬かよ」

「お前も嗅いでみろよぉ。臭うぜぇ?」


 そうベルゼに言われて、試しに臭いを嗅いでみた。

 土の匂い、水の匂い、木の匂い、草花の匂い、獣の匂い。

 ん? 煙の臭いに混じって獣とは別の匂いがあった。それが人かどうかはわからないが・・・。

 方向もベルゼが言っていた方向とも一致する。


「確かにこっちから何か臭うな」

「だろぉ?」

「これも奪った力の一つなのか」

「あんだけ犬食ったらそりゃあなぁ。その辺の犬型モンスターより鼻はいいぜ?」

「お前、その顔で鼻あるのかよ」

「鼻はねぇ。だが、これがある」


 ちょいちょいと頭の上にある触角を指さすベルゼ。


「触角か」

「昆虫特有の能力だ。そんなんはどうでもいい。行こうぜ?」

「ああ」


 俺たちは人里に向けて歩きだした。


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