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三十五話

 ギルドを出た俺は露店などで話を聞き、この街で一番と言われている鍛冶屋へとやって来た。

 儲けているからなのか外装はしっかりしている。

 自動ドアならぬ魔動ドアを潜り中へ。内装もかなりしっかりとしている。商品棚やショーケースにあるのは他の武具屋にあったあの不思議な武器や防具ではなく、真っ当な武器や防具だ。

 商品を見ながら奥に進み、会計所にいる店員にはなしかけた。


「すみません。アダマンタイトの武器が欲しいのですが」


 そう言うと店員は顔を顰めて俺を値踏みするように足から頭の先へと視線を流す。


「申し訳ありませんが、アダマンタイト性の武器は冒険者ランクAランク以上の方にしか制作していません」


 俺を見てAランクに届いていないと判断したのだろう。


「なるほど。ではこれを」


 俺はギルドカードをカウンターの上に置く。

 店員はどこかイライラしながらもカードを受け取って確認する。すると、あわあわと焦りだしてカードをこちらに返しながら頭を下げてきた。


「も、申し訳ありません! す、すぐに親方を呼んで来ますね!」


 と言って、店員はこばしりで裏へと入っていった。

 鉄を打つ音が店の方まで聞こえているため、店のすぐ裏が工房になっているのだろう。

 少しして、身長は小さいが鍛え抜かれた肉体に立派な髭を生やした男と共に店員が戻ってくる。


「見た目だけで判断するなといつも言ってるだろうが! 馬鹿弟子ッ!!」


 そう怒鳴りながらオトコは俺の前へとやって来た。

 やはり身長は小さい。

 身長だけなら子供と間違えそうだ。ドワーフと言う種族なのだろう。

 男は俺を店員と同じように値踏みする。


「ふむ、体の線は細いがかなり鍛えられているな。良いだろう。お前にアダマンタイト性の武器を作ってやる」

「ありがとうございます」

「だが、ここには肝心のアダマンタイトは無い。少し前に来た勇者とやらにも言ったが、アダマンタイトは希少鉱物でな。滅多に市には出回らんのだ。そこでお前にはアダマンタイトを取ってきてもらう。これが武器を作る条件だ。いいか?」


 元よりアダマンタイトが採れる鉱山に用があったため、俺は頷く。


「うむ。鉱山の場所はこの地図に記してある」

「ありがとうございます」

「あと、鉱山もそうだが、道中はランクの高い魔物も多く生息している気をつけるといい」

「わかりました」


 地図を受け取り、最後にもう一度お礼を言って店を出た。

 気のいいドワーフだな。何かあっても食わないでおこう。

 俺は地図を確認して、鉱山がある方の門から街を出た。人目のつかないところで浮かび上がって地図に記してある方へと飛んでいく。

 下を見るに鉱山までの道はあるのだが、あまり人が通らないのかかなり荒れている。山の周りと言うこともあり木々が生い茂っているところを見るに確かに魔物もそれなりの数が生息していそうではある。

 飛んでいるからあまり関係ないが。


 アダマンタイトの採れる山に近づいたところで遠目に数匹くらいの大きな影がこちらに飛んでくるのが見えた。

 山に生息している魔物だろう。縄張りに入ってきた俺を迎撃するつもりか。


「邪魔」


 腕を変形させてドラゴンの首から先を作り上げて肥大化。横なぎに振るって魔物を咀嚼する。

 味的に鳥類ではなくドラゴンの味に近いのでワイバーンか何かだろう。竜種の肉は魔力保有量も多く、とても美味だ。

 そんなこんな魔物を喰らいながら進み、ようやくアダマンタイトの採れる鉱山、その坑道の入り口に到着した。

 深呼吸をしつつ、辺りのニオイを嗅いでみる。

 坑道周辺には数種類の魔物のニオイがするものの、人間らしきニオイはしない。かと言って坑道の中から微かに吹いている風からもニオイは感じなかった。


「他にもあるのか?」


 被らないように鍛冶屋が気を利かせてくれたのか。ただ俺の方が先についてしまったのか。


「おぉ、いたいた。行くなら声かけろや」


 考え事をしていると、俺の横へベルゼが降り立った。


「すまん。移動すれば追ってくるだろうと思ってな。探すのめんどくさかったし」

「まあ、いいさ。それより、ここに来る途中で獲物がいたぞ?」

「勇者どもか?」

「それしかねぇだろ。んだァ? 気づかなかったのか」

「割と急いで飛んできたからな」

「クハハ! オレが来なかったら食い損ねてたかもなぁ! 感謝しろよぉ?」

「ああ」


 どうやら先についてしまったらしい。

 街からここまで結構遠いからな。飛行できる俺とは違って徒歩の彼らだとそんなもんか。

 まあ、先回り出来たのはありがたい。少しばかり細工でもしておこう。


「ククク。悪魔みてぇな顔してんな」

「悪魔に言われたかねぇ」



 ***



 坑道の中に入ってアダマンタイトを探す。

 地図の裏にはアダマンタイトの特徴が記されているのに気が付き、そう言えば特徴を聞いていなかったことを思い出した。

 勇者たちよりも先に坑道へと入った俺たちはたまに突き出ている鉱石を確認しながら奥に進んでいく。

 坑道内にも魔物のニオイが漂っているのだがそこまで強いわけではないようで、俺の持つ歪な力とベルゼの気配によって近寄ってこない。

 少しばかり腹を満たしておきたかったのだが、来ないなら仕方がない。

 この後控えている豪勢な食事まで我慢するとしよう。


「クハッ! この土魔力が籠っててうめぇ!」


 我慢の出来ないバカは土を片手に咀嚼しているが気にするのはよそう。

 奥へ奥へと進んでいくと、少し広めの空洞に出た。


「これはすげぇな」


 天井にはヒカリゴケが群生しているようでその空間は明るく、夜目がきくからと明かりもつけずに進んできたため少しまぶしく感じだ。

 その光を反射するように色々な鉱石が壁や地面、天井のヒカリゴケ周辺から顔を覗かせていた。

 その殆どは鉄や銅、宝石や何かの鉱物だったりすのだが、その中にはミスリルも存在している。魔力が豊富な土地ゆえに鉱物も多く存在しているのだろうか。

 そんなことを思いながらミスリルをおやつ代わりに食いながら鉱物を確認していく。


「これか」


 白く、硬いがミスリルや鉄などと違って金属感のない見た目をしており、ミスリルのように魔力の通りがいいようだ。

 だが、ミスリルと違って柔らかく加工しやすい素材と違ってひたすらに硬い。

 確かにこの硬度なら加工できる職人が少ないのも頷ける。

 ファンタジーゲームなどでは、このアダマンタイトを使って強力な武器が作れると言う設定をよく見るが、確かにこの鉱石ならば可能だろうな。


「そして美味い」


 有り余るSTRでもぎ取ってアダマンタイトを咀嚼しているのだが、内包する魔力も多くうま味があり、歯ごたえもある。

 つまり美味。

 ベルゼもポリポリと横で齧っていた。

 我慢すると言ったが、美味そうな物が目の前にあると食べてしまうのは暴食の性だろうか。

 気が付いたら突き出た部分の半分程度食べてしまった。おかげでアダマンタイトの性質が手に入り、皮膚の硬質化の際にアダマンタイトに変化できるようになった。


 しばらく空洞内を探索した。

 この坑道はここが最後のようで、一回りしたが先に進める道は存在していなかった。

 この空洞の全体に濃い魔力が満ちているので魔力だまりか何かの影響でこのような空間が出来上がったのかもな。

 一応武器用のアダマンタイトを回収して、勇者たちが来るのを待つとしようか。

 この場所も少しばかり手を加えておこう。

お読みいただきありがとうございます。


次回は食事タイム!


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