三十三話
ジャーニアス帝国首都メイルクラッド。
予定は首都メイルクラッドで乗り換えてミルへと向かうつもりだったが、ベルゼが飽きてしまった為魔導列車の旅はここで終わりとなる。
駅を出た俺たちはメイルクラッドの街並みを見て思わず口を開けてしまった。
鉄が使われた重厚感のある建物がずらりと並び、こちらの世界では見ることはないだろうと思っていた鉄筋コンクリートすら存在しているのだ。
ファンタジーっぽさの欠片もない街並み。
どちらかと言えばこの都市はSFのよう。機械都市と言う言葉がしっくりくる。
さすがに高層ビルのような建物はないようだが、団地のような物も遠目に見えた。
「なあ! なあ! 遊びに行ってもいいか?」
楽しそうに目をキラキラと輝かせているベルゼ。
俺は彼の問いに頷く。すると、ベルゼはニィっと笑って俺の横から消え去る。
俺自身も少しばかりこの都市に興味がわいたので承諾した。勇者を食らう前に観光をするのも悪くはない。
駅にあったメイルクラッドの地図を買い、人通りの多い方へと向かっていく。
商店街のような場所へと辿り着き、店の品を見ながら練り歩く。途中でトカゲ焼きとやらが売っていたので購入して食べた。
商店街を抜けた先は、どうやら団地らしく、近くの公園では子供たちがはしゃぎ回っていた。
地図を見るにスラム街のようなところはないようで、ここに住む皆が皆職を持ち、豊かに暮らしているのだろう。
次に向かうのは冒険者達が拠点を置く冒険者街にしよう。
そうと決めた俺は地図を頼りに冒険者街の方へと向かった。
冒険者街は、冒険者ギルドを中心に宿や武具屋、道具屋などが揃っているようだ。
中には素材屋なんて物もあるようで、そこで素材を買って武具にするなんてことも出来るらしい。
色々便利な街だな。
俺は冒険者ギルドの中に入る。
ギルドの作り自体は変わり無いようだが、そこにいる冒険者たちの装備がとても特徴的である。
いつしか見たゼクスの武器のような長物の銃を持っている者もいれば、メカメカしい防具や剣類を持った者もいた。
あのメカっぽい防具はパワードスーツにでもなっているんだろうか? ちょっと気になる。
彼らから視線を外し、依頼掲示板の方へと向かう。
依頼に目を通していく。依頼を受けるわけではないが、この街での依頼がどういうものがあるのか気になったからである。
魔物の討伐依頼や採集系依頼、ドブさらいなどの低ランク用の依頼はどの国でも同じようだ。この国特有、と言うかこの街特有の依頼となると、試作防具を試用して欲しいと言う依頼くらいだろうか。
おそらく、あのメカメカしい防具の試用依頼なのだろう。
ちょっと使ってみたい気もするが、すでにそんなものを使わずとも色々な物に変身できるうえ、パワードスーツなんか着ずとも身体能力は高いため必要なさそうだ。
俺の場合魔力も無駄に多いため、その魔力を用いて身体強化などを施せばそもそも防具いらずである。
暴食万歳。
ギルドで軽く食事をしたあと、今日泊まる宿を探すことにした。
宿を探しながらも、武具屋へと立ち寄る。
防具いらずとは言え気になるものは気になる。仕方がない。
武具屋の内装は武器エリアと防具エリアで左右にわけられており、どちらの商品もさっきギルドで見たような見た目の物ばかりだ。
もちろん、こういう武具に慣れていない冒険者の為に普通の武器や防具もおいてある。そちらの武具も見た所一級品ばかりだ。
「……安いな」
通常の武器の値段を見て思わずつぶやいてしまう。
他の国では金貨八十枚くらいはするだろう品が、ここでは金貨たったの十枚で売られている。
技術の差だろうか?
通常の武器をあらかた見た後、次に見るのはこの国特有の武器だ。
「……高ぇ」
予想はしていたが、メカメカしい方の武器は高価だった。
その値段はなんと金貨百五十枚だ。こんな高いのにここの冒険者たちはこれでそろえているしな。この周辺の依頼は割のいいものが多いのかもしれない。
値段の横には武器の説明が書かれているようだ。
今見ているのは大剣なのだが、見た目は普通の鉄製のバスターソードの持ち手部分に何やらスイッチが二つ付いており、そのスイッチの少し下くらいから鍔の部分へと管が伸びている。
その管を目で追っていくと、鍔の両端に何やら突起が付いており、見てみるとどうやら噴出口のようにも見える。
その大剣をじっくり観察した後に説明を見てみると、どうやら持ち手のスイッチを押すと噴出口から炎が噴出する仕組みになっているようだ。
要は魔道具なのだろう。
このジェット機構を使って武器の威力を上げることが出来るようだ。
使いようによっては振っている最中に軌道を変えることもできるかもしれない。
そのまま次の武器に目を移す。
今見ているのは見た目はロングソードなのだが、ブレードの部分には均等に切れ目が付いている。
説明を見てみると、名前はウィップソード。俗にいう蛇腹剣や連結刃と言う奴だな。この剣も先ほどの大剣と同様持ち手にスイッチがある。
どうやらこのスイッチで鞭状態と剣状態を切り替えることが出来るようだ。
近距離、中距離に適した武器だな。
満足いくまで特殊な武器や防具を見た後、店を後にした。
完全に冷やかしである。
店を出た俺はその足で近場にあった宿へと向かい、一泊部屋をとった。
まだ少し早いが目を瞑るとしよう。
睡眠は娯楽だ。
ベルゼもしばらく帰ってこなさそうだしな。
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