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二十八話

「今から外周を一周するが、何か気になるもんがあったら教えてくれ」

「あいよ」


 このまま首都に入ってもいいが、入った後にまたベルゼがグロッキーになっても困る。

 そのため、外周を一周して結界を発生させている装置を探すことにした。

 これだけ規模の大きい結界を人の手だけで維持することは出来ないだろう。

 壁は触媒だとして、術式はまた別にあるはずだ。


「壁を壊しても結界は維持されたままなのか?」

「効果は薄まるだろうな。だが、結界としての機能は維持されたままだ。あくまで壁は触媒――魔法の効果を増幅させる物でしかない」

「なるほど」


 となると、効果を消すには結局元となる術式を破壊しないといけないわけだ。

 外周を走ること二十分。

 一周終わってしまった。


「なんか気になるもんは?」

「壁沿いにゃなかったな。だが、わかったことならある」

「ほう?」

「魔力の流れを見たが、壁に繋がっている魔力路はすべて中心から伸びてる。その中心にあるのを破壊すれば結界は消え去るだろうな」

「わかった。んじゃ、ベルゼは外で待機しててくれ。術式の元を破壊してくるわ」

「おう。飯は置いてけ」

「はいよ」


 背嚢からベルゼ用の飯を取り出して投げ渡す。

 色んなもんが入ってるから足り――はしないだろうが、これで文句はねぇだろ。

 門から外れて人気のない方へ向かう。

 体内の属性魔力を光寄りにして壁を乗り越えた。


「やっぱそうか」


 領内に入る時に感じた不快感を今回感じなかった。

 おそらく、さっきやった体内の属性魔力を光寄りにしたからだろう。

 邪な魔力に反応するのであれば、それを光属性で覆い隠してしまえばいい。穢れた光だろうと光は光である。

 いい抜け穴を見つけたものだ。


「さて、と」


 見た目と服装を変える。

 今回は町娘をイメージして変身した。


「あ、あー」


 声帯も問題なし。

 背嚢とレッグポーチは変身した時に体内へと隠した。

 これでどこにでもいる町娘Aになったわけだ。

 変身したところでベルゼの言っていた中心へと向かうことにする。


「へへ、お嬢ちゃん。おじさんたちと遊ばない?」


 向かおうとしたところで見た感じ酔っているであろう割と年の言ったおっさんに絡まれた。


「……もちろん!」


 にっこりと笑って頷く。


「へへ。いい子だねぇ~」


 笑って頷いた俺におっさんは気持ちの悪い笑みを浮かべて近寄ってくる。

 俺の肩へと伸ばされた手。

 その手を掴んで引き寄せる。


「積極的だ――」

「ちょうど腹が減ってたんだ」

「ひっ……!?」


 にこりと笑顔を浮かべた俺は頭をドラゴンへと変え、おっさんの頭から齧りつく。

 一仕事する前に腹を満たさないとな。

 血の一滴も残さず食べきり、また町娘姿へと変わる。


「……血が付いちまったか」


 服だけ変身しなおす。

 さて、腹も満たされたことだし、中央に向かうとしよう。



***



「これはまたわかりやすいな」


 中央まで来た俺の視界にあるのは壁と同じく汚れのない白一色の建物。

 大聖堂である。

 首都の守りに入っているためか、入り口周辺にいる騎士の数は少なく、敷地内の巡回も少数で行っているようだ。

 入り口を見ていると、一般人も出入りできるようだ。

 祈りにでも来ているのだろう。

 入る時にお布施を銀貨一枚渡しているだけで、他に何か特別なことをしているようには見えない。


「ふむ」


 一般人の列に並んで中に入ることにした。

 列は割と早く回り、俺の番となる。

 銀貨一枚を騎士の持つ箱に入れる。


「神のご加護を」


 受け取った騎士がそう言ったのを聞き、一礼して大聖堂の中へと入った。


「……ッ」


 気持ち悪い。

 神聖さを感じさせる大聖堂内部。

 神秘的でとてもきれいなのだが、悪魔の力を持つ俺にとって毒でしかない空気だ。

 騎士と一般人の目を避けて列から抜け出す。

 人の目がないとこに来たところで騎士へと変身。


「確か魔力路を追うんだったな」


 目に魔力を集中させてあたりを見渡す。


「あった」


 何本もの線が中心の大きな塊へと向かっているのが見える。

 これは便利だな。

 魔力路を見ながら入り組んだ廊下を歩いていく。

 道中何人かの騎士とすれ違ったが、挨拶をされただけで疑いをかけられることはなかった。

 ちょろいな。

 と言うか、どんだけ広いんだこの聖堂。


「……この部屋か?」


 魔力路の中心地の上であろう部屋。

 扉を少し開けて中を確認。

 誰もいないようだ。

 中に入り、内側を見渡す。


「どっかに地下への入り口があるのか?」


 指に火を灯して壁沿いに歩く。

 どこかに入り口があるなら隙間からの風で火が揺れるはずだ。


「お」


 三つ目の本棚に差し掛かったところで火が風に吹かれたように揺れた。

 どうやらこの本棚の後ろに入り口があるようだ。

 次に仕掛けを探す。


「めんどくせー」


 めんどくさいため本棚を丸ごとスライムで包んで消化。

 あら不思議。秘密の入り口が出現しましたとさ。

 地下への階段のようだ。

 階段を下りていくと、ちょっとした儀式上のような広間にたどり着く。

 広間は一つの魔法陣で埋まっており、明かりはないものの、魔法陣の光で明るくなっている。


「これを破壊すればいいんだよな」


 その場で屈み、手を地に付ける。

 手のひらからスライムを放出して広間の床全体へと浸透させていく。


「よし」


 隅々まで浸透したところで一気に取り込む。


「いぎッ!?」


 力の放流。

 国全体を覆うほどの力が一気に流れ込んでくる。

 そのせいだろう。

 激しい頭痛に眩暈、そして吐き気に襲われる。

 耐えつつも溢れ出る魔力を吸い取っていく。


「くッ……!」


 全てを吸収し終えた。

 魔法陣の光は消え失せたのだが、すぐに仄かな光を放ち始める。


「ちっ」


 龍脈とか言うものだろうか?

 大地に流れる魔力を流用して結界を張っているのだろう。

 吸い取って破壊しようと思ったが、そう上手くは行かないものだな。

 浸透させたスライムで魔法陣が描かれた床を食う。

 ベコッと音を立てて床が割れるとすぐに消化されてしまった。


「さて、と」


 壁を支えにして立ち上がる。


「うぇっ……」


 まだ少し眩暈がする。

 深呼吸をして落ち着かせたあと階段を上がっていく。


「おっと」


 秘密の入り口のあった部屋に戻ると、そこには騎士たちが槍をこちらに向けていた。


「……騎士?」

「同胞がなぜ……」


 俺の姿を見た騎士たちはざわめく。


「騙されてはいけません。彼は魔に魅入られた者。我らが怨敵です」


 そんな騎士たちの中央にいる金髪の法衣を纏った女性が言う。


「やめていただきたい。私は騎士です」


 ダメもとで言うが、彼女の言ったあとでは一切の効果は見られない。


「……ま、いいか。でもいいのかい? この場にこんなに騎士を集めてしまって」


 ニコニコと愛想のいい笑みを浮かべながら問いかける。


「何を言って……」

「魔法陣は破壊させてもらった」

「ふふふ。聖域結界の魔法陣は龍脈から魔力を得て再生するのですよ? 少し破壊した程度――」

「猊下っ! 国内に魔物が!!」

「そんなッ!?」


 あとから来た騎士の言葉で余裕そうな顔をしていた女性の顔が驚愕に変わる。


「あんな大量な魔力は初めてだったぜ? それにこの国にしちゃ美味な床だった」


 ニコリと笑いかけると、女性はすとんとその場に座り込んでしまう。


「そんな……そんな……聖域結界が……」

「それと、俺だけを相手にしていていいのかい?」


 俺が言葉を紡いだ直後、外から爆発音が鳴り響いて窓ガラスを揺らす。


「半数は外へ確認しに行け! 猊下はこちらへ!」


 爆発音を聞いた騎士たちの半数は慌てて外へと出ていく。

 猊下と呼ばれた女性は一人の女性騎士が抱きかかえて部屋から運び出されていった。


「さて、一仕事した後は飯だよなぁ?」


 未だこちらへ槍を向けている騎士達を見て舌なめずりをして右腕を狼へと変貌させ、騎士達へと飛びかかる。




途中文章がおかしくなっていたため修正しました。


お読みいただきありがとうございます。

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